ニサ VS ナグアル
「くっ、まったく面倒ですわ」
ニサは住宅地の密集する狭い道にいた。ここに誘導されたと言った方が正しいだろう。
姉から聞いていた。相手は弓と罠を使うと。油断はしていないがここまで厄介だとは思っていなかった。
「何処にいますの、相手がいないと攻撃も出来ませんわ……」
キラッと光る!
その光りを槍で弾き半歩後ろに下がった瞬間 ボン! 地面が爆発する。
「ったーー」
左足に血がにじむ。よく見ると右足も血が出ている事から今の爆発が初めてではないことが分かる。
「リエン様にアニママスを譲ってもらってなければ、今頃足はありませんわね」
額の汗を拭う。羽を展開して移動しようとしたが羽をしつこく狙われる。今、移動手段を奪われるのはこの後の事を考えると痛いし、何より空中から落とされた場合対処が困難になる。
故に歩くと言う選択肢しか残っていなかった。
「きゃはははは、ダサいね今の顔! いいよ、いいよ、そのままじっくり楽しませてよ」
住宅地に声が反射して響く。
「ったく、頭にきますわ」
カノン達と別れ1人になったニサを矢が襲ってきた。姉から聞いていた情報からナグアルと呼ばれる天使だと予測がついた。
だが1度も姿を見せない。それどころか、あちらこちらに罠が仕掛けてあり威力は低いものの地味にダメージを受けていく。
「いたっ」
足の痛みにちょと立ち止まり壁に手をつく。
カチッ!
「まさか、ここにも!」
ドーーン!!
手元に氷を張り爆破の衝撃を抑える。
「ねぇーーねぇーーあんたバカでしょ! お姉さんは頭良いのにねえ。出来の悪い妹持ってお姉さんも大変ね、きゃはははは」
「また、それですの」
ニサは苛立ちながらも、周囲に霧を発生させナグアルを探るが建物に阻まれ上手くいかない。
「相手がわたくしの事を分かるのは、何らかの力、おそらくリングかしら。どうやって見つければ良いですの……」
飛んで来る矢をその場で回転して弾く、誘導されなければ罠を踏まない……
ガシャン!!
「ぐぁぁかっ」
ニサの左足にチェーンのついたトラバサミの刃が食い込む。
追い討ちをかけるように左肩に矢が刺さる。
「あぐっっぅ」
「いい声出すねえ、鎖に繋がれたワンちゃんみたいで可愛いよ~さてさて、次どうしよっかな~」
──はぁ、はぁ、不味いこの状況を切り抜けるには、お姉さまならどうする。考えるの、ニサはお姉さまみたいになりたい。
なりたい? お姉さまと区別されたいんじゃなかったっけ?
その為に髪型も喋り方も変えたのになりたい?
お姉さまは賢く強い。憧れる。でも比べられるのは嫌だ。だって負けるから。
何年たっても越えられない壁、憧れでもあり障害でもある──
折れている槍、ウンディを召喚し2本の穂先と柄をトラバサミに突っ込みこじ開ける。
怪我した左足を引きずり進む。相手はニサが苦しむのを楽しんでるのか攻撃を仕掛けてこない。
この時間を利用して考える。
──お姉さまか……いつもカノンの妹として扱われた。よくてアイネ隊のニサだ。
常に何かのニサ。
人間界で葵とミカと舞に会って初めてニサとして認識された気がした。短い時間だったけど楽しかった。ニサとして過ごした時間。
お姉さまの存在を知らなかっただからかもしれないけど、いえ知ってても葵は変わらないはず。
わたしをニサとして、わたしが興味もった事を一緒に笑いながら遊んで必死に教えてくれた葵。
初めは敵として出会った。足とか突き刺したのに逆に助けてくれて、その後謝るわたしを「もういいよ。それよりニサちゃん怪我大丈夫?」とか言って心配してくる。
普通言わないでしょう。反対に心配するとかどうかしてる。
葵の足をわたしが刺して、その傷を焼いて止血したとき「覚悟出来たわね」とか言ってたけど、あれをわたしは出来るの?
たかだか16、7年しか生きてない人間が見せた覚悟。無駄に長く生きてきた者にはない命の輝きを見た気がする。
わたしはどうしたい? 生きたくないの? 何百年生きたからもう良いの?
葵達とこの後も過ごせたらきっと楽しい。
その為にも生きよう! 命の輝きはわたしにもある!
さあ、どうする。お姉ちゃんがどうするか分かったとして、それがわたしに出来るか?
それは分からないけど、それよりわたしが何が今、出来るか考えるべきでは?
そんなんだからわたしは、何かのニサなんだって──
右目に青い光が灯り始める。羽は出していないが背中に冷気が漂い始める。
肩の矢を抜を抜くと、息を大きく吐く。
魔女の力のお陰か傷口の血が止まり始めている。
「わたしは、ニサ ニーベルング! 全力で行かせてもらうわ!」
力強く叫ぶと走り始める。
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