ディレットーレ

 メサイアが地面を蹴る度ヒビが入り砂塵の線を引きながら飛ぶ。空中の移動速度も速くなり、攻撃の威力こそそんなに変わらないものの、スピードがのっている分攻撃を弾くのにマズルカは苦労する。


「はん! なかなか動けるじゃんかよ! ちょこまかとうざいな!」


 マズルカは胸に手を当てる。


「起きろリング!」


 胸元に金色の光が輝く。


「さあ、こいよ! このチビが!」


 地面を蹴って、マズルカの後ろに回り込み凄まじい突進から繰り出される斧の斬撃。

 マズルカはハンマーで受けるが、あたった瞬間、メサイアは持っていた斧から手を離し、大振りの斧を召喚、マズルカの肩に振り下ろす。

 肩から血が流れるが、斧は皮一枚程度しか切っていなかった。


「メサイアの斧、通らない!?」


 不適に笑いながらマズルカはハンマーをメサイアに叩きつける。


 地面を削りながら大きく飛ばされ壁に打ち付けられる。


「あぐっぅぅ、ごふっ」


 もろに攻撃を受け血を吐く。


「魔女の力、なかったら、死んでた……コンチュアトー」


 斧を追撃してくるマズルカに投げつける。

 ハンマーで弾かれるが、その隙に飛んで逃げる。


 ハンマーを壁に叩きつけそのままピストンによって衝撃波を打ち込む。瓦礫の破片が飛び散る。


 マズルカは自分の防御力に自信があるのか防御を捨て攻撃のみを行う。

 メサイアがスピードを生かし斧で攻撃をするが固い体に阻まれ、体が傷つくのも関係なく攻撃をしてくるマズルカに何度も攻撃を受け壁や地面に打ち付けられてしまう。


「むぅぅこのままだと、左腕が折れるの、時間の問題」


「デュオ トルメンタ」2本の斧を召喚し音の衝撃波を起こし高速からの攻撃を仕掛ける。

 2人の攻撃が当たる位置とは別の場所で空気と音波の衝撃波がぶつかり合い弾ける。


 ガチィン!!


 甲高い音共にメサイアの左手の斧が弾き飛ばされる。


「左手、限界……」


 右手の斧を投げつけ、斧を召喚する。


「スウォーレ、最後の1個」


 投げられた斧を弾き飛ばし、メサイアにピストン付きのハンマーを横から叩きつける。斧でガードするが「ツェアファレン」そう叫ぶマズルカのハンマーが煙をあげてピストンを打ち込む。

 ガードしたメサイアごと振り抜き衝撃波と共に壁に叩きつける。


 壁に叩きつけられズレ落ちるように崩れるメサイアにニヤニヤしながらマズルカが近づく。


「お前、叩きつけられるの何度目だ、だせぇな。さて、どっから潰して欲しい。ここまで耐えたんだ、ごほうびに選ばしてやるよ。

 いやでも動かれるとめんどくさいから、足にしような、2番目を選ばしてやるよ」


 ガラッ メサイアが動いて瓦礫も動く。


「けふっ、ごほ、ごほ、リング……」


 メサイアはよろよろ立ち上がって咳き込みながらリングを召喚し右手に持つ


「へぇ、まだ立つか、チビなのに根性あるじゃん」


「お前、なんで戦う、理由あるのか?」


 メサイアの問いにマズルカはちょっと驚いた顔をする。


「なんだぁ、そんなの楽しいからに決まってるじゃねえか。おれの強さを実感するっての。

 お前さなに? 時間稼ぎか? そんなの聞いてなんになる」


「メサイアはこれが終わったら、葵とお買い物に行く、その為にも早く終わらせたい」


 マズルカはメサイアの言葉に笑い出す。


「ハハハハ、お前バカか! なんだ買い物? 意味わかんねぇ。おれよりよっぽっど頭イカれてるぜ!」


「そう、メサイアは、わがまま。お前の理由も意味分からんけど、受け入れる」


 そう言うとリングを食べ出す。


「チビのリングって能力ブーストだったか、やっぱ時間稼ぎかよ。めんどくせぇ!」


 マズルカのハンマーを避け食べかけのリングを咥えたまま「癒しの光」を唱える。

 身体中に光が行き渡り小さい傷は治る。


「回復師でもあったな、なにもかもめんどくさい野郎だな」


 食べかけのリングを投げ捨て。


「ディレットーレ」


 トランペットを召喚し口に咥え演奏をする。


 ファファファフアーーン!


 各地に弾き飛ばされた斧があるであろう場所の建物が弾ける。

 大きな瓦礫の破片が宙に舞う。


「なんだ! 生き埋めにでもしようってか!」


 マズルカはハンマーを構え、メサイアを見る。


「いない……」


 宙に舞う瓦礫の間を淡い茶色の光が走る。目と羽の光が線となり縦横無尽に3本の線が引かれマズルカに襲いかかる。


 ザシュ!!


 マズルカの肩に斧が食い込む。


「ぐぅぅっ! こいつおれの防御を、だが致命傷にはならないぜ!」


「スウォーレ」「エゼグィーレ」「デュオ」


 斧を呼び戻し光の線となってはマズルカの脇腹、太もも、両肩、背中に斧を突き立てる。


「てめぇ! いい加減に」


 右肩に刺さっている斧の柄にメサイアが立つ。


「これだけやっても俺を倒すことはできないぜ! この防御にこれだけ刃を突き立てたのは誉めてやるよ」


 そんなマズルカを肩の斧から見下ろすメサイアはニヤリと笑ってトランペットを咥える。


「チビ、お前! まさか!」


 焦るマズルカの目にトランペットを咥える悪魔が見えた。

 ゴシックパンクな衣装のせいもあったかもしれないが天使とは程遠い存在……


 最後に聞こえるトランペットの音色、力強くも澄みきった音。

 マズルカはトランペットの演奏と共に内側から弾ける。


 メサイアが地面にそっと着地して血を払う。


「ベトベトになった、メサイアは急がないと、他の奴はニサ達に任せる」


 そう言って城の方へ飛び立つ。

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