作戦会議

 天使と魔物と魔女で情報の交換をして話し合いが始まる。

 因みにこの話し合いは誰でも参加可なので、内容に興味ある者達もいる。


 ここまでをまとめると──


 天使アリエル達はこの1、2週間以内に灰の魔女討伐に乗り出す。

 そしてその討伐には、光の魔女が作った魔物を投入し天使も含め無差別に襲わせる。

 これにより魔物の攻撃とみなし、魔物討を伐開始し森へ進軍。


 この混乱で灰の魔女を捕らえ魔女食いをすると思われる。現段階の魔女の中で見習い以上の力を持ち、他の魔女以下の私が一番狙い易い。


 後、今回は人間界への進出までは計画されていないらしい。


 これを阻止するため今日から3日後にこちらから奇襲を仕掛ける。その協力を天使側から私たちに依頼された。


 ソフィーさんいわく兵対兵なら多少は抵抗出来るが、対アリエル達となると対抗出来るのは、カノンちゃん以外いないらしい。

 今回、アリエルの魔界の森進軍作戦にあたって何も出来ないかと諦めていたらしいが、私を始め、ミカ、ニサ、舞、メサイアを取り込めるなら対抗出来る可能性があるとわらを掴むつもりでお願いにきたらしい。


 そして天使でミカ達のように戦える者は人口の0.01%にも満たないらしい事も知った。人口の半数以上が今の天使の世界を衰退させている事、それに気づいてもいない者がほとんどだと言うことも。



 なぜ3日後に奇襲を仕掛けるか、これについては標的が「アリエル」「トリス」「光の魔女」の3人であることが関係する。

 この内アリエルとトリスがソフィーさんなどと話し合う月一の会議が3日後にあり一ヶ所に集まるからここを狙う為だ。

 

 2人を討伐出来れば光の魔女は天使の軍を動かす事は出来ないから、後に魔女達で討伐も可能。

 万が一光の魔女が来た場合は3人の魔女のうち誰かが対応する手筈になっている。


 そして私が前線に出る理由、隠れてしまうとアリエル、トリス、天使の軍がバラバラに分散して動き出す可能性があるので、あえて前線に出て敵を引き付ける。

 

 作戦当日の流れとしてまず大事なのが侵入方法になる。

 町の北は小さな崖になっており塀の高さがあるのと森が険しい。

 西は海岸と海が広がる。海に浮かぶ島々に天使の貴族が住んでおりそれぞれの島を治めているらしいがこっちから入るのも飛べない私には厳しい。

 必然的に東側から攻めることになる。

 ここにある兵士用の出入り口を利用して私とミカ、舞が侵入制圧。そのまま待機。

 内側からカノンが南側にある正門を破壊、混乱に乗じて正門からニサ、メサイアが侵入し内部を撹乱する。

 これで内部の戦力がアリエル達から離れたところで私達が突入する。

 私、灰の魔女が現れた事で更に内部が混乱するはずとのこと。


 この作戦魔物達は突撃に参加しない、あくまでも防衛だ。

 参加してしまうと天使の町へ侵略したとみなされ、魔界の森へ進撃する口実になることを避けるためだ。

 舞については戦力が欲しく使いたいので灰の魔女の配下ってことで押し通せるはずとのこと。ここはちょっと強引かも。


 それとソフィーさんからの提案で皆の戦いを空に映しだし民衆に見せるらしい。


 戦いにおいて民衆からの私達の心象を良くすること、私達自身が他の離れた仲間の様子が分かり何処へ手助けに行けば良いかの判断になるとのこと。


 因みに映像はこちらに有利な戦いや会話のみで、移動や作戦に関わるところは映さないし、こちらに部が悪い事も映さない。

 戦いが終わった後、復旧をやり易くする為、民衆の気持ちを誘導するのが目的みたいだ。

 ちょっと卑怯な気もするけど大事な事らしい。


 ***

 

 魔女達は魔界の森全域を守る。魔女見習いは召集しない、魔女食いを発生させない為だ。


「よいか、天使の町は大陸の西側に位置する。わらわが森の東部を持つ、機動力のあるアイレが南西から南まで、その後ろ全般をノーム、動きがとれぬリエンは弱いものや怪我したものの収容を頼むのじゃ。

 それとノーム、前線に壁を張るのじゃ、陸の進軍の流れを制御して、隙間に強い魔物を配置するのじゃ」

「ノームの持ち場広くないですかぁ」


 ノームさんが文句を言うがメイさんはニヤニヤ笑う。


「なんじゃ、お主が一番動けよう。自信ないかの?」

「やりますよぉ、ノーム出来る子ですからぁ!」


 頬をふくらませるノームさんにアイレさんがフォローを入れる。


「天使は基本空から来るだろうから、わたしとメイで持つ、ノームの方は魔物と協力して地上をもってくれれば良い。地上戦はそこまで激しくならないだろう」


「3人が頑張ってるのに悪いけど、わたしは奥で皆を守るわね」


 リエンさんが申し訳なさそうに言う。


 さらっと言ってるけど4人で魔界を全域カバーするって言ってる訳だから、どれだけ強いのかって話しだ。


 ***


 話が一段落したとこでカノンちゃんが魔女達に近づき深々とお辞儀をする。


「魔女様達にお願いがあります。こちらの戦力増強の為にアニママスを分けて頂けないでしょうか?」


 そのお願いを予想していたのかメイさん達は驚く様子もなく、寧ろ迷惑そうな顔をする。


「ふん、そうくると思っとたのじゃ、誰でも扱えるものじゃないぞ」

「えぇ、ですから。ミカ様、ニサ、メサイアの3人に分けて頂けませんか」

「ミカは無理じゃ、そやつ堕天使じゃろ。堕天使になるために同胞の魂を大量に混ぜておろう、アニママスの入る余地はないのじゃ」


 その発言にミカが驚く。自分の体をペタペタさわったり、なぜか背中をみたりしている。

 本人は知らなかったようだ。


「お主はミーテに命を繋いでもらったんじゃろ。そのとき同胞の魂を大量に注ぎ込んだはずじゃ。天使が落ちるのは同胞の魂を食らう時と言われておるからのう」


 メイさんに言われ更に驚いて今度は自分の腕の臭いを嗅いでいる。あの子は何をやっているんだろう……。



「メイ、分けても良いんじゃないか? わたしは既にカノンに分けているぞ」


 アイレさんがさらっと発言したことにメイさんが驚く。


「なに! 勝手な事しおってから。お主、カノンとやら発現は出来るのか」

「はい、アイレ様より頂いて、天使の魔女発現も出来ます」


 大きなため息をついて諦めたのかニサちゃんとメサイアちゃんを手招きしてよぶ。


「この2人だけじゃぞ。どれ、ニサ、メサイア、こっちへ来てみよ」


 メイさんに呼ばれてニサちゃんとメサイアちゃんが並んで目を覗かれている。


「ふーーむ、リエンはニサを、ノームはメサイアを見てくれんかの」


 次に2人はそれぞれの魔女に目を覗かれる。


「ニサちゃんはわたしと相性良いわね」

「うわわわ」


 リエンさんに抱き締められ顔を真っ赤にするニサちゃん


「おーーこのゴスロリっ子はノームと相性良いですぅ。可愛い格好してますねぇ」

「むっ ノーム センス 抜群!」


 メサイアちゃんはノームさんと両手をつかんでブンブンして楽しそうだ。


「ちょっと待っててね」


 リエンさんはそう言う水溜まりを残して突然消えるが直ぐに現れる。そう言えば分身体だったっけ。

 どうやら分身体にはアニママスがないらしい。


「おまたせ、アニママス取ってきたわ、早速ニサちゃんどうぞ」


「それじゃあ、メサイア受けとるですぅ」


 それぞれ青い玉と茶色い玉を受けとるとスッと体に吸い込まれる。


「? なにも起きませんわ」

「そんなもんじゃ、お主らは強いから拒否反応は出んじゃろう。今のままでも基礎能力は上がったはずじゃ、後、発現のやり方については教える時間がない。内側から力を出す感じとだけ教えとくのじゃ」

「むっ 実戦で出す」


 メサイアちゃんが斧を振り上げ気合いを入れる。いつの間に召喚したんだろう? 危ないから収納させる。


「ときにマイ、お主はどうする? わらわのを分けるか?」

「あたしがもらうとどうなるんだ?」

「わらわと同じじゃ、魔女になるじゃろう」

「んーーじゃあいらない、魔物のままで良いよ」


 短いやり取りをしてメイさんがぼそっと「お主ならそう言うじゃろうな」と言ったのが聞こえる。


 ん? なんか気になる言い方、わたしが訪ねようとしたらミカが話しかけてきて聞きそびれる。


「葵、今日発表があるんでしょ? そのためにこんなに人が集まってきた訳じゃん。なに発表するの?」

「あーーとね、今後私が東の森を支配? するのと、灰の魔女の庇護ってことで、魔物の人たちが集まったわけで『魔界の森の中にいる灰の魔女の庇護を受けた人たち』じゃ言い難いから呼び方決めようってのと、その管理者を決めようなと」


 私がそこまで言うと周りにいた魔物の方々が騒がしくなる。

 慌てて外へ出ていく人達までいた。


 なにか凄いこと言わないといけないプレッシャーが凄い。

 夜になるのが憂鬱になってくる。


 そんな事を思っていると肩を叩かれる。振り返るとメイさんがついて来るのじゃとジェスチャーをしている。


 嫌な予感しかしない……

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