ミカ再会<土の魔女
ミカはコルを背負ったまま、ミミ族のラバッシュからもらった地図を頼りに進み続ける。
途中ルプス族のルヴァンが案内に来てくれた。
お陰で目的地へ迷うことなく進めている。
「竜人族の村だって? あの人たちそんな社交的だったけ?」
「灰の魔女様のお力です。あの方の前では逆らう者などおりません」
ルヴァンが走りながらそう答える。
「本当に葵に会っても大丈夫なのかな。なんか不安になってきたなぁ」
「今晩、灰の魔女様から重大な発表があるそうです。
その為に各魔女様方、各魔物の代表、天使方まで集まっております。灰の魔女様のお力故です」
「……やっぱり会うの不安だな」
ミカはコルを背負ったまま結構なスピードで走っている。コルは背中に幸せそうにしがみついてはいるが結構揺れるわけで、足の怪我への影響を気にするミカは、時折声をかけている。
「ねえ、コル揺れる? 足は痛くない?」
「はい、コルは幸せです」
「ん? もう少しスピード出すからしっかり掴まってて」
「はい、コルはどこまでも付いて行きます」
会話が噛み合わないまま走っていく。
***
「どこで何がこうなったんだろう……」
竜人族の村に着いてしばらくすると魔物の村の代表を名乗る者が現れ「灰の魔女の重大な発表を聞きに来た」と言われた。
その後も続々やって来て、竜人族の村だけで受け入れが困難になってきたので、鉱山のふもとにある大きな広場を解放してもらい受け入れを続けている。
ヤエちゃんの話による中央より更に東方面のエルフやドワーフ達も向かって来ているらしい。
なんでもユニコーンをはじめとした馬系の魔物が今回の発表にあたり移動を協力してくれたらしい。
そんなのいるなら始めから手伝ってよ。この数日間の移動はなんだったんだ、本気でぼやく。
そして来る魔物達が私への献上品を持ってくる。
食べ物が多いので腐っても勿体無いし、この場で料理出来る人達を使って食事を作るが、量が多いのでお祭りみたいになっていく。
お酒も勿論有るわけで、出来上がっていく人もいる。
舞と風の魔女アイレさんは、波長が合うのか楽しそうにお酒を飲みながら話してる。
そう言えば人間界では高校生だったけど実際1500歳位だから普通にお酒飲めるんだよね。
話を戻すが、今回の重大な発表は私『灰の魔女』が魔界の森の東側を支配宣言する事(メイさんに誘導された気がしないでもないが)そして支配する森の名前を決めて、そこの管理者を決める事だ。
この管理者とは私への窓口、魔女に直接言うには気が引ける魔物もその森の代表者が私にまとめて伝えることで気兼ねなく意見を言えるかな? って考えたんだけど、まあこれもメイさん誘導かな。
ここまで考えると森の人々にとっては重大か……うーーんやっていけるかな。不安でいっぱいだ。
「葵様! ミカ様到着します」
色々考えている私は、ヤエちゃんの声で現実に戻される。
「うん、すぐ行く!」
そう言って門の方へ私達は走って行く。
門に着くと銀髪になったミカ1人の天使の少女をお姫様だっこして立っていた。
「葵、マイ、ニサ久しぶり! メサイア? カノン!? なんでここに! お義母様??? あれ? 私、結構急いだのに」
「うん、ミカ久しぶり。ところでその子は?」
「あぁ、この子はコル。途中の村で出会ったんだ。怪我してるから治療頼める?」
ミカがお姫様だっこしたまま近づきコルを渡そうとするので私はメサイアちゃんに治療を頼む。
頼まれるとメサイアちゃんが自信満々な顔で前に出て来る。既に両手に魔方陣が浮かび張り切っているのが分かる。
「むっ メサイアに 任せる」
だがメサイアちゃんが近づこうとするとコルはミカにしがみつく。
結構強くしがみついているのだろう。ミカが苦しそうだ。
「いえ、結構です! コルはミカ様の治療が受けたいです!」
そんなコルにミカが苦しそうにしながらも必死で訴える。
「コ、コル……メサイアの方が私より治癒能力高いから……」
「能力の高さではありません! 愛情が違います」
コルの激しい包容でミカが死にかけている。一方メサイアちゃんは膝から崩れ落ちて両手をついている。
「むっ メサイア 愛が足りない…… 葵の 欲しい」
とりあえず元気そうなので一番気になっている事、『コル』とはいったいどこの誰でなぜここにいるのかと言うことを聞く。
その答えは……
「コルはミカ様に一生着いて行く者です!」
「そうそう、コル怪我してるのに頑張って私に着いてきてくれたんだよ」
私の質問にちぐはぐな会話が展開される。そして確信する。
「あぁミカ、前から薄々感じてたけどちょっと頭弱い……」
「言ってやるな、あたしは知ってる」
「わたくしも気付いてはいたのですわ」
「むっ 天然」
「結構有名です。昔から変なポーズで印鑑押したりしてましたから」
皆好き勝手言う
そんな事をしているとソフィーさんが前に出てくる。
「わたくし、ミカの母、ソフィー テレーゼです。あなたのお名前は?」
「は! ソフィー様!! ミカ様のお母様! 私、コル カンタータと申します。以後宜しくお願いします」
「そう、ではコル。怪我をしているのですよね。ちゃんと治した方が良いわ。治療をしてらっしゃい」
「はい! お母様!」
さっきまでの抵抗がうその様に素直になったコルは足を引きずりながら治療に連れていかれる。
「むっ 愛のないメサイア いらないか……」
その姿を悲しそうに見るメサイアちゃん。哀愁が漂う背中も可愛い。
「これでやっと話が出来る……」
「まて! 来るぞ!」
「みな、土が舞うのじゃ! 汚れるのじゃ!」
私が言いかけたときアイレさんとメイさんが叫ぶ。
私達から少し離れた誰もいない空間に3メートル位の土柱が噴水の様に2本立ち上る。
その土柱が地面に吸い込まれる様に消えたと思ったらウエーブの様に左右に広がる。
そしてウエーブの中央に大きな土の噴水が昇り、その前の地面が綺麗に割れ人が下から現れる。
ドーーーーン!
地面が盛大に爆発して、その中央に立つ黄色いギンガムチェックの服をきた少女。
茶色の髪の少女は目元に横ピースしながらポーズをとる。
「ノームちゃんの登場ですぅ!」
なっ……なんだ! アイドルなのか!?
ポーズを終えるとすぐ私の元へやってくる。
「あなたが『灰』ですねぇ。この業界じゃノームの方が先輩! お前は後輩ですぅ! そこを間違えないことですねぇ」
なぜ喧嘩腰? 業界? よく分からないが挨拶はしよう。
「灰の魔女 日向 葵です。 ノーム先輩宜しくお願いします」
「お! 素直な子ですねぇ。ノーム先輩の言うことをよくきくんですよぉ、ってあいた!」
メイさんがノーム先輩を蹴る。
「やめんか、この目立ちたがり屋め」
「ノーム後でこの穴直せよ。村の人に迷惑だ」
「ふふ、相変わらずねノームちゃんは」
「もう、こう言うのは最初が肝心なんですぅ! なめられたら負けですよぉ」
あれ? いつの間にかリエンさんが混ざってる。
「リエンさん! いつの間に来たんですか。久しぶりです」
近寄る私を抱き締めてくれて頭をよしよししてくれる。ちょっと恥ずかしい。
「今来たわ。と言ってもその辺りの水を使った分身体よ。
私はあそこから離れられないのよ」
水でできているはずなのに温もりを感じる。凄く不思議だ。
「まだかかりそうなのかの?」
メイさんがリエンさんに尋ねるとリエンさんは無言で頷く。
ピリッとした空気が張り詰める。
殺気とまではいかないが、あきらかにそれは天使の方に向けられている。
それを感じ取ってソフィーさんが頭を下げて謝り始める。
「500年前に天使が森の魔物を
あれのせいで森の一部が生き物の住めない死の地帯になり、それが広がるのを水の魔女様が押さえてくれているのは知っています。
そして魔女様任せにしているのも知っています。
ここで謝っても仕方ないのですが謝らせて下さい」
深々と頭を下げるソフィーさんにメイさんは怪訝な顔をする。
おそらく長年言いたくてたまらないこともあったのだろうし、仲間であるリエンさんに対して労を労って欲しい気持ちもあり強い口調になったのだと思う。
「ふん! そこまで知っておいてこっち任せとは、天使とはよっぽど偉いのじゃな!
魔女を
それは虫が良すぎはせんか?」
気まずい空気が流れる。天使の方は何も言えず黙る。
メイさんも言った手前、引くに引けないのか無駄に沈黙が続く。
「はい、はーーい! ノームも森の修復手伝ってますよぉ! 土の魔女としてバリバリ働いてますぅ! メイ先輩、ノームも頑張ってるって天使の人達に伝えて下さいよぉ! そこ大事ですぅ!」
ノームさんが気まずい空気を壊す勢いで、元気良く発言する。
場の空気が和らぐのを感じる。
「そうね、ノームちゃんは良く手伝ってくれているわ。メイ、ノームちゃんを忘れないであげて」
リエンさんに言われメイさんがちょっぴりばつの悪そうな顔で咳払いをする。そしてソフィーさんの方を向くと目をそらしながらも口を開く。
「と言う訳じゃ、ノームも頑張っておる。忘れるでないぞ」
それを受けソフィさんもノームさんに深々と頭を下げる。
「ノーム様ありがとうございます」
そう言われノームさんは胸を張って自慢げだ。
「ここにいるものを責めても仕方ないさ。それよりも今からの事を話そう。
だから場所を変えて天使と魔物と魔女でちゃんと話しをしよう」
アイリさんの発言で話し合いをする為に移動する。
…………
黙っていたがミカは思う。
(私が想像してた再会の仕方と違うなぁ。
もっとこう「わーーミカーー!!」って感じだったんだけどな……)
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