魔女対魔女

 ご飯を食べ終わり、きっちり片付けをする。

 食後いきなり動きたくないと言うメイさんの要求で、休憩して雑談してくつろいぐ。

 その後メイさんが結界を張る。


「さて、準備はいいかの? 残り3人も戦っても良いのじゃぞ」


 メイさんが準備運動しながら舞達に訪ねる。


「遠慮する」

「見学させていただきますわ」

「むっ メサイアは 葵を見たい」


 3人とも即断る。


 それにしても小さい体で、大きな尻尾をふりふりしながら準備運動するメイさんは可愛いなぁ。


「なんじゃ、じろじろみて」

「いえ、可愛いなぁって」

「世辞を言うても、手加減せんのじゃ」


 そう言いながらも尻尾の振りが大きくなる。今のは本当に可愛いと思ったんだけどね。


「わらわのアニママス『鳴神なるかみ』じゃ。お主は名前つけておるかの?」

「イグニスです」

「そうか、いい名前じゃ。よし始めるかの!」


 炎が揺らめく赤い玉と電気が走る黄色の玉がお互いをお披露目するように自分の主人の周りを回る。



「鳴神」

 雷の発現、髪の毛に電流が走りジジジと鳴く、手足は電撃が暴れ体を時々電流が走る。黒い瞳は金色になり光が揺らめく。


「イグニス」

 火の粉を舞上げながら私はイグニスを発現させる。


「ほう、火の発現、ミーテとは違う感じじゃの。本当に灰みたいな燃え方じゃ。綺麗なものじゃの」


 メイさんが関心したように見る。


「じゃあ、わらわから行くのじゃ!」


 鳴神の玉をそのまま弧を描くようにして振りおろしてくる。

 地面に当たった鳴神が弾け電撃が走る、避けようとすると、すでにメイの拳が迫ってきている。

 それを左手で受け止めて右手の拳を振ろうとしたらメイは、私の左腕を鉄棒のようにしてくるりと回り逆立ちの状態になり私の首を蹴る。


「ぐっ!」


 吹き飛ばされるがなんとか倒れずに立つ。前を見ると鳴神の刀が振られ眼下に迫ってきていた。

 イグニスを盾にして左手でそれ受ける。イグニスを銃にして右手に持ち撃つ。

 空間に電気が弾け銃弾が打ち消される。

 

 左手で受けている盾を弾けさせて爆発を起こす。

 その爆風を空中で回転し避けながら電気の弓をメイが引いて矢を放つ。その矢を下からショットガンで撃ち弾く。


 剣と刀で斬り合う、弾ける電撃と火花その光が消えた瞬間には、2人は槍と薙刀で突きあい、次は火と雷の矢が飛び交う。


 そんな戦いを遠巻きに見ながら3人の視線は戦闘に向けたまま、独り言のように会話をする。


「参加しなくて正解だったな」

「ですわね。意味が分かりませんわ」

「むっ 凄い きれい」

「でも、葵が劣性だな」

「メイ様、手を抜いてますわね」


 イグニスの火を地面に打ち込む、今まで散っていた火の粉を集め火の渦を作り出す、凄まじい火の渦が辺りを焦がし始め空気を熱く焼く。

 その火を雷鳴と共にいかずちが吹き飛ばす。


「いいのう、いいのう、なかなか強いではないか。これは楽しみじゃ」


 メイが楽しそうに笑う。


「やっぱり強い、なら」


 イグニスの火の玉をサッカーボールぐらいにすると、拳で殴りメイの方へ飛ばす。

 メイに届く前に雷が弾け阻まれる。

 私は球が通った軌跡に手をかざし空間に散っている火の粉同士に火を繋げてもらいメイのいる場所まで火の柱を作り出す。

 その火に力を注ぎ込み続け雷の壁を押し続ける。反動で後ろに下がらないよう背中に火の輪を作りジェットのように噴射させ踏ん張る。


「ほう、面白い技じゃな。が、ちと甘い」


 次の瞬間、稲妻が縦と横十字に走り、火の柱は切られ飛散する。

 4メートルは有ろうかという雷の刀を振り抜いていた、雷鳴が響く。


「のう、葵お主の刀の長さはどれぐらいじゃ? なぜ銃の球が丸いんじゃ? なぜ決める! 

 刀の長さをどれだけ伸ばしても重さは変わらんのじゃぞ。

 銃弾を尖らせても弾速は変わらんし、空中で止める事も出来るのじゃ! 可能性を制限するでないぞ!」


 メイが切った軌跡から稲妻が走り私は吹き飛ばされる。


「わらわの勝ちじゃの」

「まだ!」

「これ以上は意味ないのう、今ので何かつかんでくれると良いんじゃがの」


 メイさんは着物をただし、パタパタと埃を払うと座り込んでいる私に真剣な眼差しを向けてくる。


「よいか、葵は今のままだとケルンには間違いなく負けると言うか勝負にもならんじゃろう。

 さっき言った可能性の制限はわらわ達にも当てはまるのじゃ。アニママスの変化、意外性にばかり目を向けすぎになるかも知れん。

 そこでじゃ反対に物凄くシンプルな攻撃に切り換える事で勝機が見えるかもしれんのう」

「シンプル……」


 自分の手を見つめる。


「手で殴るとか?」

「そうかもしれんのう。まあこれも囚われ過ぎてはいかんのじゃ。答えにはなっておらんが逆の方をつくことで見えてくる物もあると言う話じゃ」

「あくまでも臨機応変にしつつ意外性をか……難しいね」


 考え込む私に舞が近づいて肩に手を載せる。


「なあ、あれなんて言うんだ」

炎極蹂躙殺えんごくじゅうりんさつ

「そっか、ちゃんと名前あったんだな」

「うん、余裕無さすぎて言えなかった」

「必殺技名叫ぶのやめたかと思って心配したぜ」

「ごめん心配かけて」


 必殺技名を最近言えてないことを反省する。余裕がないのもあるが、リエンさんから静かに戦うよう注意を受けたのがかなり大きかったりする。

 もっと実力をつけて必殺技名を叫ぼう!

 そう胸に誓う。


「あーー絶対に下らない事を話してますわねあの2人」


 ちょっと離れたところでニサちゃんがあきれた顔で呟いているのを私は知らない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る