再会
ペルナの案内で森の奥にある小さな集落にたどり着く。
2人がお礼を言うとペコリと頭を下げてペルナは去って行くのと入れ替わるように猫耳の獣人が元気よく走ってやって来る。
「あたし、うぐいですにゃ! こちらへどうぞですにゃ」
「案内お願いしますわ」
(語尾に『にゃ』って必要かしら?)
ニサはそんなことを疑問に思いながらついていく。
***
私は今、ミケ族のリーダーシシャモさんと重要な会議中だ。
「でぇ~どうしましょうか?」
「ん~なにも思い浮かばないにゃ~」
「む~ にゃ~」
「ですよねぇ~」
3人でテーブルでテーブルで伏せだらける。この人と話しているとなんか全てがどうでもよくなってくる。
テーブルに伏せ溶けているとドアがノックされる。
「魔女様、魔女様お連れしてきましたにゃ」
うぐいがドアを開けながら元気よく入ってくる。
「ご苦労様、うぐい。あーー久しぶり! 舞、ニサちゃん!」
久しぶりに会えた舞とニサちゃんに抱きつく。
「わ~ニサちゃんなんかたくましくなった? 舞は変わんないねぇ~」
「いえ、けっしてたくましくなんか、え、なってますの?」
自分の腕を確認しながら焦るニサちゃん。
「むっ!! ビリビリ!」
「あ? ってなんでチビッ子がここにいる!」
「そうよ! なんでメサイアが葵といるのかしら!」
メサイアちゃんは私に抱きつくと2人を見ながらどや顔をする。
「むっ 葵は メサイアの お友達!」
「あーーなんか腹が立ちますの!」
なぜかニサちゃんも抱きついてくる。
「むっ ニサ やるか!」
「やるですの!」
2人が私の胸で争い始める。
「やれやれ、子供だな2人とも」
舞がなぜか上から目線で言う。
「あなたに言われたくありませんわ!」
「むっ ビリビリ 資格なし!」
「なにーー! やるか!!」
「むーー!!」
「ですわ!!」
いや楽しそうだけどなにやってんの3人とも……。
***
「それで葵は今何してるのかしら?」
「えっとね、今ミケ族のシシャモさんと話してたんだけど、私の庇護に入るのに何が出来るか話してたんだけど思い付かないんだよね」
困っている私を助けてくれようとするニサちゃんに期待の眼差しを送る。そんな私の隣でメサイアちゃんも真似して何か送っているようだが気にしないでおこう。
「ミケ族は何が出来るのかしら?」
「んーー1日中ゴロゴロしたり、蝶々追いかけたりしてるにゃ」
「それでよく存続出来るなこの種族!」
シシャモさんに鋭く突っ込む舞が頼もしく見える。舞にも期待の視線を送る。
「あ、木に上るの得意にゃ! でも高いとこ上ってよく降りられなくなるにゃ」
「ダメじゃん!」
2人に期待してみたが結果はダメだった。これは時間をかけて考えてみるしかないか。
「そう言えばさ、なんで葵は魔女の庇護なんてしてるんだ?」
舞いに聞かれたけど、どこから話せば良いんだろ? 悩んでるとメサイアちゃんが胸を張り自慢気に話し始める。
「むっ 葵 アイネを倒して ドワーフの村を守る為 庇護下宣言した!」
「メサイアちゃんナイス! 分かりやすい説明ありがとう」
「む~~」
照れているメサイアちゃんを感謝を込めて抱きしめる。そんな私にニサちゃんが興奮気味に話しかける。
「葵、アイネを倒したんですの! 凄いですの!」
「むっ 葵 めちゃくちゃ 強い アイネの腕飛ばした!! それで アリエルに 敵対宣言させた」
私の代わりに答えてくれたメサイアちゃんの内容にニサちゃんと舞が渋い顔になる。さっきまで興奮気味だったニサちゃんなんて完全に引いている。そして一言。
「鬼畜ですわ、葵」
「いや、あのときはその、高揚してたと言うか……んーーはい鬼畜です私は! 言い訳はしません!」
「ひらき直った」
「ですわね」
弁解してみるが途中で弁解の余地は無いことに気付き投げ槍な感じになってしまう。
そんな私を見てニサちゃんは小さなため息をつき、真剣な眼差しで私を見てくる。
「どのような理由であれ、わたくしは葵について行くつもりですけど、今回のこと詳しく聞かせてもらえるかしら?」
そう言われて私はこの間の鉱山とアイネの戦いについて心境も含めて詳しく話した。
ニサちゃんは話を聞き終えると大きく息を吐く。そして真っ直ぐ私を見る。
「いい、葵。貴女は目的を間違ってますわ。
貴女は生きる為に戦うのであって、相手の命を奪う事が目的ではないはずですわ。
今の貴女は自分が相手を殺せるかを試すのが目的になってますの」
頭を撃ち抜かれた感覚を受ける。
そうだ言われて気が付く。
生きるために相手の命を奪う場合があるのであって、常に相手の命を奪える私であるかを目的にしていた。
だからもっと残酷なことをしてやろうと思ってた。そしてそれが出来た自分に妙な安心感を持っていた。
「今回の事はもう仕方ありませんの、ただ今後暴走するなら止めますわ。
それで良いですわね?」
「あと、メサイアいい? 葵の友達なら善悪の区別は判断して止めてあげるのですわ。
まあ、貴女はまだ直ぐには無理だろうからこれからやるのですわ」
「むっ 分かった」
舞が私の肩をぽんぽんと叩く。
「あたしも同じかな。ま、頼りにしてくれよ」
アイネさんの事はどうして良いか今は分からない。
ただ今は本当に心配してくれて、間違いを正してくれる人がいる、その事に心から感謝する。
***
ちょうどその時ヤエちゃんが飛んでくる。
「魔女様、ミカ様と思われる人物を発見したそうです。
ただ、報告によると髪が銀色だったと、後もう1人怪我をしている天使を連れているそうです」
「銀色? もう1人って誰だろ?」
首を傾げ「?」を沢山飛ばす私に舞が少し不思議そうな顔をする。
「銀髪はミカで間違いないと思うぜ、地毛は銀色だから」
「え、そうなの?」
「あれ? 昔の話ミカから聞いたんじゃなかったっけ?」
「髪の話あった? ミカがアオイで死んで生き返ったしか覚えてない。あ、後マイ隊長」
「それは忘れろ」
やばい、全然その辺りを覚えていない。ミカが大変だったのと舞が連れ出したインパクトが強くて細かいことが覚えられていない……
まあ、とりあえずミカで間違い無さそうだ。
「ヤエちゃんミカに接触してみてくれる?」
「分かりました。もう1人を庇ってるように夜動くみたいだと聞いているので、夜に接触を試みます」
ヤエちゃんはパタパタ飛んでいく。
ミカにも近々会えそうだ。それまでにミケ族の問題を解決しよう。
***
屋敷のバルコニーでカノンは1人、先日ミカが壊した(ことになっている)壁を見ていた。
「風が気持ちいいですね」
「ふん、そうやって直ぐ気づくのが気にくわないな」
カノンの後ろにいつの間にか緑髪の女性が立っている。長い髪を三つ編みにして束ねている。綺麗な人だがどこかサバサバした感じを受ける。
「わざとですよね、そうやって風でアピールしながらやって来るのは」
「そう言うとこ! なんでも分かってますって感じが気に食わない!」
「イライラすると胃に良くないですよ、風の魔女、アイレ様」
「はい、はい、あんたと話すと調子狂うわ。でこれからどうするんだ?」
アイレと呼ばれた女性はカノンの横に立ち壊れた壁を見る。一瞬横目でカノンを見て再び壁を見る。
その一連の動作を見てカノンが微笑むとアイレはため息をつく。
「一度、灰の魔女様に挨拶にいこうかと考えています。アイレ様も来ますか?」
「へぇ~新人魔女に会うのも面白そうだね」
「ソフィー様も来ますよ」
「げ、あの人苦手なんだよな」
アイレは心底嫌そうな顔をする。そんな姿を可笑しそうにカノンが小さく笑う。
「まあまあ、人数は多い方が楽しいですよ」
「そんなものかな? 新人達は海岸近くの森にいるみたいだね」
「流石、アイレ様見つけてくださったんですね」
「まあ、興味あったからね。そう言えばあの辺て雷の人がいたような。
まあ、あの人程出てこない魔女もいないだろうし関係ないだろうけど」
空を仰ぎみるアイレに真剣な顔でカノンが告げる。
「アイレ様……フラグ。それフラグです!」
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