点と点を繋ぐ……勝手に

「ねぇ~~まーーーいーーー」


「ねぇ~~てばーーー」


 海岸の近くにある木々の陰からニサは叫ぶ。


「なんだよ、今大事なとこだ。これ説明したら話聞くから待ってろ」


 ニサの訴えを無視して舞は目の前にいる体が鱗で被われ、人間と魚の中間の様な顔をした者と熱心に話をしている。


「あぁごめん、でさこれ海に投げた後引っ張る事で水が振動して、その振動に釣られて魚が寄ってくるんだ。で、ここからが腕の見せ所で……」


 相手は魚人族、海辺に住み主に海の物を食べ生きている種族だ。日々海と共に生きており温厚な種族である。そんな魚人達にルアーの講座を舞が行っているのである。


「これは時間がかかりますわね。それにしても海は日の光を遮るものがなくてお肌が焼けますわ」


 ニサがごそごそと日陰に入っていく。


 魚人族にルアー講習をする舞を見る。皆熱心に聞いて、質問も飛び交い中々盛り上がってる。


「そもそも魚人族は海の中を泳いで漁をするでしょうに、わざわざ陸から釣りをする意味あるのかしら」


 冷ややか視線を送ってみるが効果はなさそうだ。


「て、訳だ。中々面白いだろ」

「お~面白そうだな。ところでそれはどうしたら手に入る? 作れるか?」

「そうだなーー何個かはあたしのをあげるとして、ドワーフの村とか知ってるか? あそこなら作ってもらえるんだけど」

「ドワーフの村? いや知らないな」

「そっか、ちょっと待っててくれ、方法考えてみる」


 そう言ってニサのいる方へ歩いていく。


「お待たせ、さっき何か言ってたけど何か用?」

「何か用? ではありませんわ。なんでわたくし達は海にいるんですの? わたくしが空から見ると言っても舞が魔界の森なんて庭みたいなもんだ! って言うから信じたのに!」

「まあ、落ち着こうか……ほらここに来るまで結構強い魔物とか倒したじゃん、訓練だよ、訓練。

 強くなるために実践経験を積みたかったんだ。あたしもニサも雷もバリバリ使えるようになったしなぁ。

 よし、次は海の中の魔物でも倒して海中でも戦えるようにしようぜ!」

「嫌ですわ、海で戦うなら舞がタコでも食べてグネグネしながら戦うと良いですわ!」


「なにおーー!」

「やるのですか!」


 2人が言い争っていると1羽の鳥が降りてきてニサの頭にとまる。


「お取り込み中すいません、貴女方は舞様とニサ様で間違いありませんか?」


 突然の小さな来訪者に驚くが自分達の名前を知っていることから話を聞くことにした。ニサが来訪者の問いに答える。


「えぇ間違いありませんわ」

「良かったぁ。ぼくはヒヨ族のハルジオです。灰の魔女さまより伝言をお預かりしてます。『ミケ族の村で待ってるよ』だそうです」


「わるい、待ってるの意味は分かったけど、灰の魔女って葵だよな? どういう経緯でハルジオは伝言をあたしらに伝えに来たんだ?」


 舞の質問にハルジオがニサの頭の上で小さな体で胸を張り自慢げに語り出す。


「我々ヒヨ族は、灰の魔女様の庇護下に入れて頂きました。他の種族と協力、交流を持って灰の魔女様をお助けするのです!

 それに灰の魔女様はとてもお優しい方で、各種族の特技を生かしつつ足りない所を補ってくれるんです。

 しかもエルフとダークエルフの長年の争いも納めた凄い方なのですよ」


 頭の上のハルジオに気を使いながら首を傾げるニサに舞もつられて首を傾げる。


「なあ、葵はなにしてるんだ」

「元気そうなのは間違いありませんわね」

「だな、でミケ族の村にはどう行けば良いんだ?」


 舞の問いにハルジオは胸を張ったまま答える。


「途中までは、ぼくが案内します。森の中に入ったら次の案内の者がくるはずです」

「なるほど分かったそいつに付いていけば良いんだな、おっとそう言えばさ、ここの魚人族にルアーを広めたいんだけど、こことドワーフの村を繋げたり出来たりする?」

「ん~ぼくだけでは決めれませんけど他の仲間に伝言を頼んで聞いてみましょう」


 そう言ってハルジオはパタパタ飛んでいき、すぐ戻ってくる。


「伝言完了です。灰の魔女様の許可が降りれば、後は使いの者がここに来るでしょうから、細かい決め事は魚人族とドワーフ族との話し合いになるはずです」


「はぁ、なんか魔界の森に凄い流通網を作っているのですわね」


 ニサが感心したように言う。


「あたしちょっと魚人族に説明してくる」


 舞は走って魚人族へ今後の流れを説明しに行く。


 ***


 舞とニサはハルジオの案内で森の途中まで案内される。

 少し待っていると茂みが揺れ1匹の犬が現れる。


「私、シベリ族のペルナと申します。ここからは私が案内しますのでついてきて下さい」

「では、ぼくはこれで道中お気を付けて」


 ハルジオは2人がお礼を言う暇もなくパタパタ飛んでいく。その姿を見送っているとペルナに声をかけられる。


「では行きましょう」

「あぁ、頼む」「お願いしますわ」


 ペルナの後ろを着いていく2人は葵について考察を始める。


「葵は何を目指しているんだ?」

「魔界で商売でもやるつもりでしょうか?」

「門でバラバラになってから何していたんだろうな葵」

「灰の魔女の庇護とかいってましたから、森の支配者になるつもりなのですわ」

「ああ、たぶんそれな。すげー鍛えてゴツい体で魔物従えてんだよ。で逆らったら可愛い服に着替えさせられ葵が満足するまで写真撮られるんだぜ」

「いや、それは……ぷっ、ふふふふふ」

「あ、ニサ想像したな! 葵に言いつけよーーと」

「あーー卑怯ですわ! 舞が先に変な事言うからですわ!」

「なにーー! やるかーー!」

「やるですわーー!」

「ははははは」「ふふふふ」


 賑やかな2人の会話の内容をペルナは聞こえないフリをして案内を続ける。


 ペルナの足が止まる。


「なにかいます! お2人ともお気をつけください」


 2人が武器を構えるて何かに備える。やがて出てくるリザードマン。


「驚かせて申し訳ない、灰の魔女様を探している。どこにいるか知らないか」


 舞が近寄り肩をリザードマンの叩きフレンドリーに話しかける。


「なにか困り事か? それなら魔女の親友のあたしが頼んでやるよ。なあ、ペルナ伝言ってどう頼めば良い? いや直接会いに行くから聞いてやるよ。言ってみな」

「おぉ、ではお願いします、実は……」


(あぁこの人勝手に事を進めてるよ……良いのかなこれ後で確認しないと魔女様の迷惑になるなぁ)


 ペルナは困った事になったと思うのであった。

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