多種多様な種族たち②

「こちらをどうぞ、果物を絞った飲み物です。

 少し酸っぱいですのでお口に合うと良いのですけど」

 

 そう言ってシャミーさんが、木をくりぬいたコップで飲み物を持ってきてくれた。

 飲んでみるとオレンジジュースみたいな味がする。砂糖は入ってないので果物そのものの味がする。


「これ、美味しいです」

「魔女様の口に合って良かったです」


 シャミーさんがちょっと安心した様な顔で微笑む。

 あ~魔女ってことで気を使われてるな……本当はフレンドリーな感じが良いんだけど、威厳とかあった方が後々やり易いのかな。


「ところでシベリ族の女性の皆さんは、手先が器用だって聞きましたけど何か作るんですか?」

「そうですね、私たちは主に生活で使うもの、食器だったり服、後は飾りなんかもよく作ります」


 そう言って頭に付けている髪飾りを見せてくれた。鳥の羽根と木の実を乾燥させて縫い合わせている。自然の物で作ったものとは思えない綺麗な髪飾りだ。


「凄く可愛いですね、シャミーさんが作ったんですか?」

「はい、そうです。他の子達もそれぞれ個性を生かして作ってます、後は絵を描くのも得意です」

「女子の飾りのセンスは凄く良いですし装飾品などに使えそうですし、絵が描けるのはポイント高いです。

 男性の足の速さと道に迷わず目的地にたどり着けるのは使わせてもらいます」


 私の中で点と点が繋がる。まずはドワーフ族とシベリ族を繋げてみよう。特にシベリ族に出会えたのは幸運だ。この能力があれば他の点と繋げるのも容易くなる。

 物の運搬をする為に箱みたいなのがいるかな? ドワーフさんに作ってもらおうかな。あれこれ思考する。


「まず私、灰の魔女の庇護にこのシベリ族の住みかをいれることを宣言します。

 差し当たりシャミーさんの作った飾りと花の絵を描いてみて、灰の魔女の使いと言って、ドワーフの村へ送ってみましょう。

 それが武器の装飾、食器の絵柄などで使えないか検討してもらいましょう。

 それから男性の皆さんは今後村と村の間を行き来してもらうようになるかもしれません。物を運搬してもらおうと考えています」


 こういうのはきっかけがあればどうにかなるもの、後は当人達に任せても上手く擦り合わせていけるはずだ。

 その他細かい打ち合わせをして、ギフラさん達に別れの挨拶をする。

 そしてエルフの村へ再び向かう。


 シベリ族の住みかを出て直ぐに頭の上から声がする。


「魔女様、魔女様、私たヒヨ族を庇護下に」


 小さな鳥が私の腕にとまる。


「よし、庇護下決定!」

「は、早いですね。いえ助かりますけど」

「あなた達人数多い?」

「ええ、ざっと100くらいはいます」

「じゃあ、私の伝言を伝えるメッセンジャー役と、この森の地図を作りたいから、上空で見た地形をシベリ族の女性に伝えて、絵を描けるものに描いて欲しいの。

 そう言う事を灰の魔女がやりたいってのを伝えてもらえる? それが庇護下の条件」

「分かりました、では仲間に伝えて早速作業に取りかかります」

 

 これで魔界の森の様子が少しは分かるようになれば良いんだけど。

 道とか作れば早いんだろうけど、私にはその知識や技術は無いし、そもそも作る気は無い。作ってしまうと各種族の居場所教える事になってしまう。

 あくまでも今の生態系を壊さずに私に有利になる道を探る予定だ。

 今まで3種族に会ったが恐らく皆戦力にはならない。ただこの森を弱いながらも生き抜いてきた知恵は役に立つはず。

 時間がどれだけあるか分からないから出来る限りのことはしよう。


 ***


 3日後、エルフの村へたどり着く。エルフの村と聞いて私は想像していた、美しい見た目にとがった耳、知的で冷静な者達を。

 結果だけを言えばエルフとダークエルフ、同時に出会う事が出来た。


 両種族とも美人だ。耳はとがってる。その時点で完璧にエルフだ。

 だが今、目の前で争っている彼女達は、あれだヤンキー? いやレディースとかの喧嘩だ。


 目の前の状況を見てメサイアちゃんが斧を召喚する。


「むっ 葵 メサイアが あいつら 全部吹き飛ばす」

殲滅せんめつに来たわけでないからねメサイアちゃん」


 私たちが物騒な話をしているとは気づかずガンを飛ばし会う両種族。


「あ~ん!! てめぇらあそこの泉はあたいらの島だって言ってんだろうが!!」

「はぁ~!! 勝手に決めんなよ!! いつからお前らの島になってんだよ!! ざけんなよ!!」


 お互い代表が一人前に出て、顔がぶつかりそうな距離で言い合ってる。

 その後ろに3人づつ横に並びガンを飛ばし合っている。


 なんだろう本物を見たことないけどなんか古いなぁ。

 この人達に何か求める必要があるか疑問は残るけど、どこに自分が生き残る術があるかは分からない、とりあえず話を聞いてみよう。


「あの~おーーい! 灰の魔女でーーす」


 必死に呼び掛けるが喧嘩に集中してるのか聞こえない。


「イグニス……」


 体内からの発現により火の粉が舞い始める。周囲に放つ熱気が広がる。


「うぉ!」「ひゃあ!」


 私の発する熱気で争いが中断される。


「あ、あんたは?」


 ダークエルフが訪ねてくる。


「私は灰の魔女、貴女達はなにを争ってるんです?」

「ま、まま魔女様!?」


 お約束の反応がきて同時に話し出す。


「いえ、あいつらが!!」

「あっ! あたいらが答えてんだろ!」「うっせぇてめぇ、引っ込んでろ!」


「…………爆」


 ズドーーーン!!!


 空中で爆発が起きる。


「私は聞いています。何を争っているかを。二度と争えないように全て焼き払いましょうか」


 イグニスの玉を手のひらにのせて脅してみる。


 ようやくおとなしくなった両方の種族から争いの理由から種族の実態の話を聞く。


「なるほど、話をまとめると両方の村の間にある泉の使用について争っている訳ですね」


 因みに時間を決めたり、半分に分けて使うとかはやってみたそうだが、時間がたつうちにルールが曖昧になって、そのルールが逆に理由になってしまい喧嘩が始まるそうだ。


「じゃあ私なりの判断を下しましょう。まず泉についてですが、灰の魔女の所有物とします!!」

「!?」


 驚く両種族のエルフ達。


「そして泉の使用は今から許可します。今まで通り使用してください。ただ争った場合は使用許可を取り消します」


 私は手を空に上げ呼ぶ。


「ヤエちゃん!」


 小さなヒヨ族の鳥が手に舞い降りる。私の専属になったヒヨ族の子『ヤエちゃん』女の子だ!

「はい、魔女様ご用でしょうか」

「えっとね、この村の間に泉があるんだけどそこの森に何人か住めないかな? そこに住んでもらってエルフ達が争わないか見てて欲しいんだ。

 住みかはドワーフさん達から加工してもらった部品をシベリさんに運んでもらって最後は現地でエルフさん達に組み立ててもらう感じにしようと思うんだけど」

「かしこまりました、仲間に伝達して移住希望者を募ってみます」


 パタパタ飛んでいくヤエちゃん。


「と言うことで貴女達を私の庇護下に入れます。泉の件に関しては私の所有物とし、違反があればヒヨ族の方により私に連絡がいきます。その場合どうなるかは……説明します?」


 私はイグニスの玉をポンポン手のひらでバウンドさせる。


 もちろん皆、首をぶんぶん横に振る。

 こう言う場合、力で解決だ! 力あるものが正しく力を使えば上手くいくこともあると思う。


「良いですか皆さん、エルフ族は農業や採取、ダークエルフ族は狩りが得意なんですよね。それぞれの得意なところをお互い認めた上で仲良くする必要はありません!」

「えっと……それはどういう意味でしょうか?」


 両種族とも首を傾げている。


「私が仲良くしなさい! って言って仲良く出来るなら、とっくに出来てるでしょう。お互いの特技は認めて、争わないように努力してください。友達ではなく仕事の同僚の関係です。

 友達なんて無理してなるものじゃないんです!」


 分かったような分からないような表情の両種族に今後の流れを伝えておく。


「まずエルフさん達は農機具と、採取用のハサミ、これをドワーフさん達に作ってもらい、篭はシベリ族の女性に頼みましょう。

 ダークエルフさん達は狩りの道具と獲物をさばく道具をドワーフさんに頼みましょう。

 報酬としてそれぞれが取ったもので、物々交換を行いましょう」


 かなり強引に庇護下に組み込み村を出る。

 パタパタとヤエちゃんが降りてきて肩にのる。


「ご苦労様、希望者いた?」

「はい、あの泉の近くの森のことを知っている者がいて是非住みたいと言ってるそうです」

「そっか良かった。家の設計とか希望言ってね、シベリ族の人にデザインお願いしてその後、ドワーフさんにお願いするから」


 ヤエちゃんは私の腕でピョンピョン跳ね喜びを表しているようだ。


「はい、ありがとうございます。それと報告なんですが、魔女様が探していると思われる天使と魔物の2人が見つかりました。」

「え、本当!」

「はい、2人一緒に海岸の方へ向かっていると報告がありました」

「海岸? 天使の町って海岸沿いなの?」

「いえ、真反対になります」

「……なにやってるんだろあの2人」

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