お友達からでお願いします
「あいてて、結界出たら森のど真ん中だし、土地勘無いからどっちへ行って良いのかも分かんないや」
ピーーーーーーー
「なに? 笛の音?」
子供のおもちゃのような笛の音色。音の方へ向かって歩く。
藪を抜けると女の子が座っていた。森の風景に合わないゴスロリの女の子。
笛を握りしめ私を凝視している。目に涙が浮かんでる。
驚かさないように話しかける
「ねえ、笛吹いたのあなた? ピーーって聞こえた気がしたんだけど」
元々大きな目がこれ以上ないぐらい大きくなる。
「あっ、突然でビックリさせちゃったね。
私は日向 葵、灰の魔女です。貴女は?」
「むっ!? 灰? ままままじょ??」
女の子がパニックを起こしているのが分かる。
そのうち怯えた目付きで私を見てくる。
魔女を名乗ったのが不味かったかな? でも嘘ついても仕方ないしなぁとか思いつつ会話を試みる。
「ねぇ、何もしないよ。笛の音がしたから来ただけだよ。お名前だけでも聞きたいな」
「むっ ふ、笛 鳴らなかった」
ようやく話してくれる。
「そう? ピーーって聞こえたよ。呼ばれた気がしたから来たんだけど驚かせちゃったね」
「!?」
女の子は目をまん丸にする。じーーと見つめたかと思うと涙をポロポロこぼし始める。
「あれ? ど、どうしたの? ごめんなんか不味いことしたかな」
おろおろする私はどうして良いか分からずとりあえず女の子を抱き締める。
抱き締めた事を拒否されなかったので泣き止むまで付き合うことにした。
女の子はしばらく泣いていたがわたしの胸に顔を埋めたまま喋ってくれた
「め、メサイア ……オラ トリオ……」
涙でぐちゃぐちゃの顔を見せて、もう一度名乗ってくれる
「名前 メサイア オラトリオ」
私は女の子の頭を撫でながら挨拶する。
「メサイアちゃん。よろしくね」
「むっ 魔女 天使食べない?」
「ん? 天使食べるってメサイアちゃんを?」
「そっ 頭から バリバリ」
「いや、食べない、食べない」
全力で否定する。魔女に対する認識ってどうなってんだろ。
「メサイアちゃんはどうしてここにいるの? 迷子?」
「むっ ビリビリ魔物 にやられた」
「ビリビリ魔物?」
メサイアちゃんはニサちゃんの討伐に向かって失敗。ビリビリ魔物に羽を撃ち抜かれたせいでここにいる事を話してくれた。
「ビリビリ魔物は舞かな? とにかくニサちゃんと舞は無事みたいだね。良かった~」
思わぬところで2人の話が出てきて安心した。
「そう言えばニサちゃんがメサイアちゃんの名前言ってた気がする」
「むっ 魔女は ニサの 仲間」
「あーーと、魔女じゃなくて葵。葵って呼んで」
「? 葵?」
首をかしげながら言うその姿が可愛い過ぎて思わず抱き締める。
「むっ!?」
ちょと抵抗したけどすぐ大人しくなりすがってくる。
ニサちゃん達とは違う反応に逆に戸惑う。これはなんか母性に目覚めそうだ……
抱き締めたまま話しをする。
「ニサちゃんはね、お友達だよ」
「むっ お友達?」
「そう、舞、えっとビリビリ魔物の人ね。その人もお友達」
「むっ ビリビリも 」
「メサイアちゃんもお友達にならない?」
「むっ お友達に メサイアが?」
「そう、メサイアちゃんが私とお友達」
「むっ 葵と お友達…… 」
そこまで言うと黙って下を向く、色々考えているみたいだから待つことにした。
風がそよぐ。魔界の森とか言われているけど魔物が出る事以外は普通の森だ。メサイアちゃんを抱き締めたままそよ風を楽しむ。
メサイアちゃんがもぞもぞと動き出して小さな声で
「お……おかあ……さんが いい」
「そう、これで私とメサイアちゃんは今からお母さんだね……ん??? 今……何て言ったのかな?」
「…… お母さん…… だめ?」
「いや良いけどって、いや良くなくもないと言うか……そう! まずはお友達から始めましょ!」
我ながら訳の分からないことを言ってる自覚はあるがこれしか言葉が浮かばなかった。
「メサイア 葵とお友達 仲良くなると お母さん」
「あ、うん仲良くなるとお母さんまでいくんだね。まあ良いか、とりあえず今からメサイアちゃんと私はお友達ね。よろしく」
「むっ お友達 よろしく」
そう言って抱きついてくる。なんか友達の接し方と違う気がするけど良しとしよう。
「そうだなぁ、とりあえずニサちゃん達に会えるかもしれないし、ドワーフの村へ行きたいんだけど案内してもらえる?」
「むっ 葵と行く 案内する」
「ありがとう」
そう言って2人で歩き出す。
道中会ったときから気になってた事を聞いてみる。
「メサイアちゃんの服可愛いよね。天使もそう言うゴスロリ的な服着るの?」
「むっ これは ゴシックパンク ゴスロリとは違う この服 前に人間界で買った いっぱい」
「メサイアちゃん人間界に行ったことあるんだ。いつか一緒に行って買い物しようか」
ぱあ!! と明るい顔して
「行く! メサイア 葵と行く!」
私の手を握ってくる。あっヤバい、これ私の方がお母さんでお願いしますって言いそうだ……
キラキラした目で、むす……お友達が見てくるので前にミカ達とショッピングモールへ買い物へ行った話をすると、食いつくように話を聞いて目がさらに輝く。
「絶対行く! 葵 メサイアと約束」
「うん、約束。一緒に行こうね」
2人で手をつないでドワーフの村へと歩いていく。
もうお母さんと娘で良いかも……
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