襲撃
「たくもー、何が大丈夫!ですか。あれからすぐに血まみれで倒れてるのですから、信用なりませんわ」
ニサは憤慨しながらベットに横たわっている舞をにらむ。
ニサが部屋を追い出された後、近くの椅子に座ってくつろいでいたら、部屋から大きな音がしたのであわてて駆けつけた。
鍵のかかった扉を槍で両断し部屋に入ると、そこには血まみれの舞が倒れていたのである。
倒れて3日経つが、うなされ続けて目が覚める気配はない。
しかも時々電気が走ってピリピリするので汗を拭くのも一苦労だ。
「さっき村長さんから新しい槍が完成したって渡されましたわ。早く自慢したいから起きるのですわ!」
舞の頬をつねったが、ピリッとしたのでやめる。
「天使さんここにいるか?」
扉を開いてドワーフが慌てた様子で入ってくる。
「あら、ドワーフさん。どうしたかしら?」
ドワーフには名前がなく、みんな同じ顔に見えるのでニサは全て「ドワーフさん」で済ましている。
「いや、村長のとこに別の天使が来て揉めてるんだ。あんたらは来なくて良いって事だからここに居てくれ」
「そんな事言われたら行くに決まってますわ。貴方、舞を見ててくれるかしら」
そう言って困って慌てるドワーフを押し退け村長の元へ向かう。
***
「ここに天使と魔物はいないのか?」
「いねぇーつったらいねーよ!俺は天使が嫌いなんだ!帰ってくれ!」
「隠すとお前達にとって良いことにはならないぞ!」
「ほーーどうなるってんだ!」
怒鳴る村長と脅すサキ、その後ろでオドオドしているメサイアの姿が確認出来る。
(あーーこれは出るべきか。変に飛び出しても村長さんの嘘がばれるし。このまま帰ってくれないかしら)
そう思いながらニサが様子を見ていた。
やがて痺れを切らしたサキが動く。
「そうか、ならお前の腕の1本落とそう。それでもいないと言うのなら信じよう」
サキが刀を召喚し振りかぶる
それでも村長は動かない……
「あーはい、はい、いますわ。ここにいますのよ」
ニサが芝居がかった口調で歩いて出てくる。
「ニサ!ドワーフやはり隠していたか!」
ニサがドワーフの村長を睨み付け今にも斬りかからんとするサキを挑発する。
「サキ様そんなに怒らないで欲しいですわ。その村長にわたくしの事言ったら槍で突き殺すって脅してたんですの。
なにせわたくし、裏切り者ですから、それぐらいして当然ですわ」
「ニサ……お前を討伐、もしくは連行する。おとなしく投降する方が懸命だ」
「どちらも嫌ですわ。お断り致しますわ」
そう言ってスカートをつまみ華麗に挨拶する。
「挑発するか……良いだろ。元は仲間殺したくは無いが仕方ない」
「外へ出ましょう。ここは狭すぎますわ」
森の奥に住んで娯楽に乏しい生活をしているせいなのかドワーフ達が見物に集まってくる。
危ないからどっかへ行って欲しいのですわ、とか思いながらサキと村の広場へと向かう。
「サキ様、この間負けたとき好きにしろって言ってましたわよね?また討伐に来るのは、どうしてですの?」
「あの時は門を守れと言われ失敗した。死ぬ覚悟だった。だから好きにしろと言った。
そんな私をトリス様はお許しになり、もう一度チャンスをくれたのだ」
「あーー、サキ様。それダメなやつですわ。自分を持った方が良いですわよ」
ちょっとバカにした顔で言う。
「ニサ……お前変わったな。魔女の配下になった影響か……」
「配下?お友達ですわ!」
そこまで会話したところで村の広場へ着く。
同時に
「リング!」
1人はリングを右手にはめ、もう1人はリングを投げる。
「キキョウ」「スプレンディド」
刀と槍が激しい火花を散らし始める。
***
ーーーミカの軟禁生活③ーーー
この日ミカは椅子に座り本を読んでくつろいでいた。裁判を待つ身だがソフィーの力もありのんびり過ごせていた。
扉がノックされアイネが入ってくる。
「お元気ですか、ミカ様」
「アイネか、珍しい」
「ええ、ミカ様の様子を見に来ました。投獄前より元気そうで驚きました」
「アイネも皮肉言えるんだ」
「?」
アイネはミカの言った意味が分からないという顔をする。本気で分かってなさそうなのでミカは話題を変える。
「ところでさ、アイネは今の天使界についてどう思う?」
「平和で秩序ある世界だと思います」
即答だ。
「じゃあ、トリスについては?」
「お優しい方です。以前、姉が殉職したときも行方不明の段階から必死に探してくれましたし、その後も色々お世話になりました。
そして今、トリス様、直の部隊長の立場まで用意して頂き感謝しかありません」
再び即答だ。
「そうか……いや、変な事聞いてごめん」
「ミカ様も悔い改めれば、トリス様も悪いようにはしないはずです。私の方からも進言しますよ」
「あ~、うん、ありがと」
天使の門での一件があったミカにはトリスが悪いようにしないという想像が出来ない。
愛想笑いをするのもぎこちなくなる。
「では、わたしはこれで失礼します」
「あぁ、また」
アイネは立ち上がり帰って行った
閉まる扉をしばらく見つめミカは独り言を呟く。
「あれ位単純な方が、トリスも使いやすいのかな?アイネも、もう少し柔軟になれば良いのにな……」
そして自分の胸に手をあて次はぶつぶつと文句を言い始める。
「にしてもお義母様の封印800年分は解くのに時間がかかるなぁ。滅茶苦茶こんがらがっているし。あーーもーー早く解けないかなこれ」
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