むっ ゴシックパンクはゴスロリとは違う
舞とニサが魚を食べ終え片付けをしていると空から少女が降りてくる。
ニサよりも小柄な少女。
目の下に大きなクマ、髪は頭の横からちょこんと出た短いツインテール、ピンクのチェックの入った黒を基調としたゴシック調の服。
天使なのに背中に小さな悪魔の羽の飾り。
この子を見て天使だと言う人はまずいないはずだ。
「むっ 当たり ニサと魔物 倒す」
「スウォナーレ」
少女はニサ達の答えなど聞かずいきなり魔方陣から斧を取り出し構える。
その少女に思い当たる節しかないニサが怒鳴る。
「メサイア! こんなところまで! て言うか道教えなさよ!」
「むっ やだ ニサ怖い 倒す」
メサイアと呼ばれた少女はニサに斧を振りろす。
それを槍で受け止めた衝撃で火花が散る。これが開戦の合図となり2人が激しい斬り合いを始める。
2人共に羽を展開し地上に空中にと槍と斧が交差し甲高い音と火花を咲かせる。
だが徐々にメサイアの方が押され始める。
「むっ やっぱり ニサ 強い なら」
「リング」
メサイアは頭上にリングを召喚すると両手で掴み口に入れる。
「はむっ」
ボリ、ボリ、ボリ……
「おい、あいつ天使の輪食べてるぞ! あれ食べれんの?」
舞が木に持たれかかったままニサに問うがニサも戸惑う。
「分かりませんわ! メサイアのリング初めて見ましたもの」
意外な行動に驚く2人対しメサイアはマイペースにリングを食べ続ける。
「モグモグ 甘い」
メサイアはリングを食べ終えると斧を構え
「むっ もう一度 行く」
ドーーーーン!
地面を蹴る音が響くと同時にメサイアがニサにとび込んでくる!
「なっ速い!」
ニサはなんとか反応して受け止めるが吹き飛ばされる。
飛ばされながらも羽で勢いを殺し空中で体制を立て直す。
「リング」
「ウンディ」
頭上に召喚したリングを右手につけ、折れた槍を出す。
「クリュスタッロス、セレネ」
氷の刃を飛ばす。
「デュオ」
メサイアは2本の小ぶりな斧を取り出し氷の刃を砕く。
ニサが鞭状の槍で打ち込むが、全て2本の斧で受け止められる。
メサイアの動きは先程とは動きも力も段違いに上がっている。
「なんですのその力! リングの力かしら」
「むっ 秘密」
再び槍と斧で斬り合うが今度はニサが押され始める。
「メサイアがここまで強いとは油断してましたわ」
分が悪いニサを見て舞が動く。
「ブラッド ミスト」
辺りが赤く染まり始める
舞の背中に赤い羽根が生えて、周辺に血の霧を噴霧している。
「逃げるぞ!」
舞に言われニサは走り出す。
2人はどれだけ走ったかは分からないがなんとかメサイアを撒けたみたいだ。
「舞大丈夫ですの?」
「いや……無理……血が足りない」
舞は無理して走ったのと血を大量に消費した反動だろうか、白い顔でフラフラして倒れる。
「舞!ちょっと、大丈夫ですの!」
血の霧が晴れた後
「むっ 逃げられた でもこっちも時間切れ 血でベトベト キャンプで 洗う それから探す」
そう言って飛び立つメサイア
***
ーーー葵ちゃんの修行③ーーー
リエンさん曰く無理な修行は為にならないらしいので今日はお休みです。
「葵ちゃん、紅茶飲みましょ」
「私が用意します」
紅茶を飲みながらリエンさんが質問してくる
「ねえ、なんで魔女って天使に嫌われてると思う?」
「言われてみればなんでだろ?魔物の仲間だからです?」
「ちょっと正解だわ。魔女は天使を倒せる存在だからよ。
魔物の中にも強いものはいるけど、基本魔物は自分が生きる事にしか興味ないわ」
紅茶のカップがリエンさんの柔らかそうな唇に触れる。それを見てるだけでなんだか私は頬が赤くなるなるような感覚を覚える。
いつかあんな風になれるのかな?想像つかないなぁ、なんて考えていたらリエンさんの話の続きで現実に戻る。
「天使の政治や生活にも関われて、強い魔女は邪魔なの。
ただ魔女は天使と違って極端に数が少ないし、そもそも天使の生活に興味ないの。それは天使達も分かってるでしょうに」
リエンさんは遠い目をする。その綺麗な青い目には何か思うとこがあるのか哀愁が漂う。
「興味ないの分かってるならなんで攻撃してくるんですか?」
「天使は明確な『敵』が欲しいのよ。そう言う意味では魔女は手頃な存在ね。それと……魔女の力に興味があるのかしらね」
リエンさんは紅茶を1口飲み気持ちを落ち着けるような仕草をする。
「天使は勘違いしてるのだけど、わたし達魔女の力は、火や水・風・雷・光・土なんかは本来、人と寄り添う力なの。
火は温もりを、水は潤い、風は種などの命を運び、雷は生活を豊かに、光は明かりを土は恵みを与える物なの。
それらは普段暮らしに欠かせないものだけど、一度牙を剥けば火災や洪水と言ったように仇をなすものに変わるわ。
それは自然と同じ。一方的に怖がるのではなく上手に付き合う方が利益は大きいの。
怖がらず、欲張らずお互い寄り添っていけばお互い上手くいくのだけど」
真剣に聞く私を見てリエンさんは元の優しい雰囲気に戻る。
「ふふ、ごめんなさい。紅茶が冷めるわね。つい熱くなってしまったわ。
今日は畑にいきましょ。そろそろジャガイモが収穫出来るはずよ」
リエンさんが熱く語るの珍しいなぁと思いながらも、紅茶を飲み、今晩の献立を考える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます