サキ・モンティ

 …………皆と違う…………皆金色の髪に、エメラルドグリーンの瞳……

 私の髪は茶色に近い金色、目はちょっと暗めのグリーン、エメラルドじゃない。


「お母さん、お父さんってどんな人?」

「凄く優しくて、面白い人、あっちの世界の事色々教えてくれてね。特に忍者が大好きでね」

「ふーーん、この本の人? なんで顔隠してるの?」

「これはね、隠密って言って敵に顔を見られないためだって」


「で、こっちが、くないって言って投げたり、手に持って切ったり、それでねこっちが刀って言ってね……うっ」


 ゴホッ、ゴホ……


「お母さん大丈夫? 痛い?」

「うんうん、大丈夫よ。ダメねお母さん、お父さんの事になると張り切っちゃうから、ちょっと寝るわね」

「うん、お水持ってくるね」



 …………お母さん死んじゃった……

 天使に寿命は無いけど病気になるし怪我もする。酷ければ死んでしまう…………

 …………皆なかなか死なないから私の気持ち分かりにくいのかな?

 もう二度と会えないの凄く悲しいんだよ…………


 …………髪や目の色、馬鹿にされる、うるさい! これはお母さんとお父さんの色!馬鹿にするな! させない!


 どうする? 強くなってやる!

 皆が文句言えないぐらい強く!

 お父さんの好きな忍者みたいに!!…………


 * * *


「サキ モンティ、君はいくつだったかな?」

「アイネ様、38歳になります。」

「38! 若いな! その歳でこの強さ。なあ、うちに来ないか? トリス様直属の隊を結成したんだ。天使の中で実力あるものだけの隊だ! 是非君に来てほしい!」

「アイネ様……分かりました。お願いします」


 認められた! これで皆に見せてやるんだ! お母さんとお父さんの色を!!…………


 * * *


 大きな門の前で静かに目を開ける。昔の思い出…………

 今回の任務、トリス様直とは言え疑問が残る。

 人を魔物と混ぜる。目的までは分からないが良かったのだろうか。

 それに自らは魔物と動くように言われているのに、同じく魔物と一緒にいたミカ様を裏切り者として報告するように言われた。

 本当にこれで……


 いや考えてはいけない、上からの命令は絶対だ。

 ただ任務をこなす、私は忍者なのだから。


 * * *


 私達は階段を降りて池の下へ向かう洞窟のようなところを歩いている。


「まさか池の近くに入り口があるなんてね、びっくり」

「普通の人には見えないけどこっちに階段があって地下に降りれるってわけ」

「そろそろ着きますわ」


 通路を抜けると開けた場所に出た。そこに遠くからでも分かる大きな門があった。

 金色の扉に天使の羽を思わせる装飾。

 その門へ行くための階段にその人は座っていた。


 その人は前に見たスーツ姿ではなく、口元を布で隠して、来ている服も青をベースにした完全に忍者。


 なんで天使が忍者なのだろうと思うが、今のピリピリした雰囲気では聞けないので黙っておく。


「サキ、ここを通してはもらえないか?」

「無理です。任務ですので」


 ミカの言葉はすぐに否定される。


「サキ様、話を聞きたいだけですの。葵、灰の魔女の話を!」

「ニサ……そっちにつくか、お前の討伐も命じられている」

「サキ様……」


 サキに睨まれ泣きそうなニサちゃんを私はニサちゃんの前に出て背中に押しやる。


「ニサちゃんは下がってて、ここは私たちがどうにかするから」


 その言葉と同時にゆっくりとサキが立ち上がる。


「では、参る!!」

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