移動
宮崎県に向かうには新幹線で福岡へ、そこから特急に乗る必要がある。
魔女1、天使2、魔物1は今、新幹線に乗っている。
「やっぱり速いな、新幹線って」
舞が窓に張り付きながら感心したように言っている。
「そう言えば舞達ってどうやって宮崎からこっちまできたの?」
「私は電車、ニサも?」
「ですわ、お金や移動手段すべてこちら側の天使達が手配してくれますの」
「出た! ブラック企業!」
「あたしは途中まで歩きだな。ミカと会うまではうろうろしてたな」
「舞ってなんでこっちに来たの?てっきりミカと一緒に来たかと思ってたけど」
私の質問にちょっとだけ間が空くと遠い目をした舞がポツリと呟く。
「強いやつを求めてだ」
「うそっぽい……まあいいや」
舞も何か言えないことがあるんだろうけど、多分悪い事ではないはず。
* * *
一端乗り換えの為、福岡の小倉駅で降りる。乗り換えまでは時間があるのでお昼にする。
「まっ、福岡ならこれだよね。ラーメン」
「どこのお店が良いとか分からないからココ行こう」
この辺りに詳しい訳でも事前に調べてきた訳でもないので適当に入る。
「ラーメン? 麺ですわよね」
「ニサちゃんって食べ物あまり知らないけど、こっち来て何食べてたの?」
「配給品ですわ。あっちの食事と変わらない、体調に支障をきたさないものが配給されますの。ミカ様みたいに好き放題食べる方は珍しいですわ」
ニサはジーとミカを見つめる。
「いや、私は女子高生として食べざるえなかったんだ! て言うかニサも最近じゃカレーばっかり食べてんじゃん! なんかニサカレーの匂いするし!」
「なっ! カレー女とかいくらミカ様でも今の発言は撤回させて頂きますわ!」
「2人ともここラーメン屋さんラーメン食べようよ」
2人を諌めラーメンを注文する。ミカと舞は食べ慣れているので、ズルズル食べているがニサはキョロキョロしてる。
見た目が外国人なんで箸の使い方がおかしいのはご愛顧なのだが
「ニサちゃん、無理しなくても良いよ。後でカレー食べようよ」
「いえ、食べてみますわ。ちょっと匂いが気になったのですわ、よし」
「よし」って……結構勇気いるのかな豚骨ラーメンって。ニサちゃんの場合ラーメン自体が初めてなんだけどね。
目をつぶりそーと口に運ぶ
「!?」
一口、その後一口、ぎこちない箸で麺を掴みながらズルズル……
ガタッ
立ち上がる。
「これは! なんですの! この濃厚なスープ!! それにこの麺! 麺にスープが絡んで……」
「ちょっと、やめてニサちゃん! 皆見てる、見てるよー。分かった落ち着いて、替え玉出来るよ。ねっ替え玉して良いから、あっ替え玉分かる? おかわり、麺だけおかわりできるよ、ね、ね!」
「頂きますますわ」
スッと椅子を戻し座るニサ。
お嬢様の好物にラーメンが追加された瞬間だった。
その後特急に乗り換え電車に揺られる。
「眠くなるなーあたしは寝る。着いたら起こしてよ」
舞いはそう言って速攻で眠りにつく。
そんな舞を横にしてニサちゃんのことを聞いてみる。
「ニサちゃんってなんでこっちにきたの? サキさんだっけ一緒に任務?」
「わたくしは魔女を……殺せと言われましたわ。サキ様は分かりませんけど、光の魔女の補佐みたいなものかもしれませんわ」
「わたくしたちはトリス様の直属の隊、隊長のアイネ様、副隊長のサキ様、後が盾のカノン、回復担当のメサイア、そしてわたくしの5人で構成されていますわ。
あまり一緒に行動することはなくそれぞれが違う任務に就きますの。サキ様に会ったのも20年ぶり位ですの」
「20年ぶりか……ニサちゃんの見た目でさらっと言えるなんて……天使の年数トークはついていけるかな?」
「すぐ慣れるよ、魔女の葵さん! 一緒に年数重ねようぜぃ」
グッと親指を立てるミカに腹が立つ。
「おそらくこのメンバーと戦うことになりますわ」
「ニサちゃんは良いの?」
「なるようになるですわ」
「ニサちゃん意外に適当だね」
「葵だけには言われたくありませんわ!」
電車に揺られ約5時間、宮崎に到着する。
宮崎でお嬢様が「チキン南蛮、美味しいですわ!」とか叫んだりして目的地へとたどり着く。
* * *
「禊池」
なんでもイザナキノミコトが禊をおこなって神様が生まれたとこらしい。
「ここからちょっと離れて、ここだな」
ミカはそう言うと木と木の間の空間を触る。
ポワーーンって感じで波紋が広がったかと思うと地下へと伸びる階段が現れる。
「順調過ぎるな……」
ミカが怪訝そうな顔で言う。
「ですわね、ここまで邪魔が入らないところをみると、下で待ち伏せしてますわね」
「もしくは門を潜って直ぐとかかな?」
「なんでも良いさ、行こうぜ!」
「なんかさ、みんな格好いいよね。覚悟してるって感じで。私は戦うの怖いよ」
そんな私に対して3人がほぼ同時に答える。
「えっ、私も怖いよ」
「戦闘嫌いですわ」
「痛いの嫌だ」
「傷つけるのも、つけられるのも嫌いに決まってるじゃん。
自分がやられる訳にいかないから戦う。本当に正しかったか葛藤しながらもね。
年数を重ねれば重ねるほど葛藤は大きくなるけどその葛藤が無くなったとき自分じゃ無くなるのかなって思うんだよね」
ミカが語る。
「ミカ様、結構まともなこと言いますわね」
「ちゃかすなよ! まあ、怖いって気持ちを大切に持ってた方が良いよってこと。葵の持つ気持ちは葵のものなんだから大切にねって……まとまらないなぁ」
「うんうん、なんとなく分かったよ。ありがとうミカ」
私はお礼を言うと皆と地下への階段を降りていく。
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