別れ

「ミカの国はなんて言うの?」

「ファイエルン共和国、天使の住む大きな国だ! って言っても8割が魔界と呼ばれる森になるんだけどね」

「じゃあ、そこに行ってアリエルさんとやらに話を聞く! それが今の目的にする」

「でも、行くってここに戻って来れないかもしれないよ」

「うん、でも行く。今の私の目的の為にね。

 多分このままじゃいけない気がするから」

「明日皆にも話すよ」

「分かった。今日はもう寝よう」


 夜風にで冷えた体を布団に入れ眠りにつく。


 翌日、舞とニサに目的を話すと舞いは「わかった」と一言。


 ニサはしばらく考えていたが

「わたくしも、貴女方と行きますわ。わたくしがいた方が便利なこともあるでしょうし」

 そう言って同行してくれることになった。

 

 残りの2日、訓練にはニサも加わり、訓練はより激しく! 夜は食べたり、笑ったり、楽しくお話したりした。


 あっという間に過ぎる。

 ファイエルン共和国に行くには天使が管理する「門」を使うしかない。その門は宮崎県にあるらしい。神々が降り立ったと言われる神話が残る場所。


 そういった場所には門があるためにそのような神話多く残る。

 この合宿が終わったら向かうことに決めた。


 学校に休む電話をする。もう二度と行かないのに「今日は風邪で休みます」そう伝えた。

 

 結局、事故の後皆と距離が出来てしまいその距離が埋まることはなかった。

 学校へ復帰したとき


「葵大丈夫?」

「辛いよね?」

「何かあれば言って、力になるから」


 …………皆が言ってくる


 大丈夫な訳ないじゃん

 力になる? 何ができるの?

 代わってくれる?

 なってみなよ

 そうしたら言って良いよ

 大丈夫? って


 心の中でそう言う思いが渦巻くけど、必死で隠し、引き吊った笑顔で「ありがとう 大丈夫」そう言った。


 日除けのアームカバーやら、ニーソックスなんかで傷や火傷を隠してはいたが細かい傷は見える。体育の時間見学でも、一応体操服に着替える。

 どうしても皆に見えてしまう傷痕。見られているのが痛い位分かった。

 引いているのを感じた。

 

「力になるから?」嘘じゃん。むしろ邪魔してる。もう関わらないで!

 そんな気持ちが言葉ではなく態度で伝わったのか、皆距離を置くようになった。


 そんなときに


「あ、ワタしミカ テレーゼデス、アオイサン……よ、よろしくデス」


 変な外国人が話しかけてきた。


「アオイ 放課後 コメドコーヒー 行こう……イク ワタシとアオイ イク」


 なんか胡散臭い片言の日本語を使ってくる。本当は普通にしゃべれるのでは? と思いながらも流す。

 最後の方でミカは片言日本語が流暢にしゃべれるようになっていくんだけど……

 必死で誘うミカに付き合う。

 そのうちに少しだけ心が軽くなったのを感じた。


 もう二度と行かない学校の思い出が甦る。

 一瞬、前はよく遊んでいた沙理や菜々に連絡しようかと思ったが、今さら何を話すのかとやめてしまう。



「うん、元気、うん大丈夫」


「そう、大丈夫だよ」


「あーーそうなんだ、うん、うん」


「あっ、うん あーーちょっと良い?」


「あのね、奈保なほおばちゃん、えっとねそのありがとう。えっあの……ほら元の学校に戻るって言ったとき行かしてくれたし、マンションとかさ、ね、だからありがと」


「いやいや、なんにもないって、大丈夫だよ、えーーお小遣いでもないし酷いなーー」


「ただ、お礼が言いたかっただけ」


「あっ、うんそれじゃ、奈保おばちゃんも腰、気を付けてね。

 うん、里果りかちゃんとたくみくんにも伝えてて、うん、それじゃ、はい」


 ピッ…………


 スマホの通話を切る。


 …………言えなかった、お母さんの妹である私のおばさん、奈保おばちゃんにお別れを言おうと電話したが言えなかった。普通に会話して終わってしまった……


 奈保おばちゃんごめんなさい、黙っていなくなります。手紙残そうと思ったけど書けなかった。


 この後、私がいなくなった後のこと考えると、奈保おばちゃんにまた迷惑かけると思うと心が痛い…………


「イグニス」

(なんでしょう? ご主人さま?)

「魔女って心あるの?」

(ご主人さまは心があるのでしょ? なら魔女さまにはあります)

「ふっ、なにそれ。私が魔女で、私が心を持っているから、魔女に心があるってこと」

(はい、だって他の魔女さまのこと知らないですから)

「だね、私が心を持ってる。結論はそれだね、うんありがとうイグニス」


 持っていく荷物とお金を確認しながら部屋を見渡す。短い間だったけど住んでた部屋、今日でお別れ。


「ありがとう」


 誰に向かってのありがとうか分からないど、そう言って玄関に向かう。


「葵、良いですの? 今日行かなくても別に大丈夫ですのよ」


 玄関で待っていたニサが気を使ってくれるのが伝わってくる。だって私を名前で呼んだとき恥ずかしそうだったから。


「あーー! 今、葵って言った! ねぇもう一回言って」

「や、やめ……もーー言います、言いますわ、葵」

「ニサちゃんありがとう」


 ニサちゃんの顔をフニフニしながら必死で笑いながら玄関の扉を閉める。


   ────行ってきます────




 

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