ミカの過去

「どっどうしてそう思うのカナ?」

「戻ってる、戻ってる。ミカ嘘つくの下手でしょ!」

「どうしてそう思う?」

「ミカさ、私のこと「葵」じゃなくて「アオイ」って呼んでるでしょ。「舞」は「マイ」だしイントネーションが若干違うよ」

「!?」


 観念したようにミカは頭を掻いている。


「灰の魔女舐めないでよ」


「はーー、じゃあ話すよ。良い?」

「私の本当の名前は『アオイ ミカエル』だ」


「え!?」


「いや、いきなり序盤からそんなに驚かないでよ。続けられないじゃん」

「続けて、続けて! 灰の魔女さん舐めるなよ!」


 意味もなくシャドウボクシングをして動揺を隠す。


「じゃあいくよ…………」


     ──1560年前──


「ねー、あなたーそこのあなたー! おーーい!」

「なんだよ、うるさいな。食事中だってんの」

「ねーー遊ぼう!!」

「聞けよ! あたしは食事中だ!」

「じゃあそれ頂戴、一緒に食べたい!」

「あーーもーーうるさいな、ちょっと待ってろ、降りるから」


「ほれ、食えよこれで良いだろ」

「ありがとう。私はアオイって言うんだ。あなたは?」

「はー? 魔物に名前なんて無い! そんなことも知らないのか?」

「ふーん、でも他の人と話すとき不便じゃないの?」

「そんな不便感じたことも無いね」

「今、不便だし」

「じゃあ、私が決めてあげる!」


 んー、んー、んー、おー!


「その食べてる木の実、カタツムリさんみたいに巻いてるから「マイマイ」って言うんだよ。それ食べてたからあなたは今から「マイ」いい名前でしょ」

「いや、なんだよその安直な感じしかも自画自賛しやがって!」

「でーーマイ。これ食べたらなにして遊ぶ?」

「あーーこいつ 調子狂うーー」

「マイはアオイの友達1号ね!」

「なんだよ、色々勝手に決めんな! おいこの」


 * * *


「レイチェル! 聞いて、聞いて! 私ね友達出来たんだ!」

「それはおめでとうございます。」

「今度レイチェルにも紹介するよ」

「楽しみにさせて頂きます」

「でさ、その時レイチェルのあれ!あれ見せてよ天使のリングからビーームって出すやつ! マイ喜ぶよーー」

「いえ、アオイお嬢様、天使の輪は天使の最初で最後の武器です。いわゆる切り札ですので、おいそれと他人に見せる訳には……」

「レイチェルのけちーー」

「はい、はい、けちで申し訳ありません。ときにお嬢様、お嬢様も天使の輪の召喚成功したと伺っていますが?」

「おーー! そう出来たんだ!」

「見ててよーーリング」


「これは可愛いらしいリングですね。能力も現れたのですか?」

「それがさーー、リングにものをくぐらせると色が変わるの、なんかダサいよ! 使い道わかんないよーー」

「わたしもビーームしたいーー!」

「こればっかりはその人の個性ですからどうしようもありませんよ」


 * * *


「ねぇお母様! わたし友達1号出来たんだ! 名前はマイって言うんだよ!凄いでしょ!」

「それは良かったわ、どんな子かしら?」

「魔物の子だよ」

「あぁ、そう……魔物の子は短命、次会えるかは分からないですが、精一杯仲良くしなさい」

「なんで短命? 寿命とかあるの?」

「魔物が住むのはこのお城の塀の外、外は恐ろしい魔物がいっぱいです。生きていくだけでも大変、いつ死ぬかも分からない世界なの」

「じゃあさーー、お城に入れようよーー、そしたらマイも安心だよ!」

「そうしてあげたいのですが、魔物を良く思わない人もいるの。いつかはみんな仲良くなれると良いのですが」

「じゃあアオイがやる! マイと一緒にやる!」

「期待してますわよ」

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