光の魔女
「クッ、ハァ、ゲホッ……」
「今のは……やりますわね。流石、魔女……負けましたわ」
ハ―、ハー、勝てた。倒れたままで苦しそうに息をするニサだが私も肩で息をする。正直私もギリギリだ。
あーもームリ、倒れそう。視界が霞む私にニサが声をかけてくる。
「さあ、魔女さんわたくしを煮るなり焼くなりしてくださいな」
「いやいや、しないよそんなの」
「食べますの?」
「いや、食べないよ!」
魔女ってどう思われているんだろ。灰の魔女宣言既に選択ミスか!?
「もうお互いボロボロだし、もう帰ろうよ。ほら、手を貸すから」
私が手を差し伸べたときだった。
パチ パチ パチ パチ
突然拍手の音が響く。音の方を振り返ると黒いローブに笑っている仮面の人が拍手してる。
「いやいや、良いね! うん良いよ! 実験体と戦ったときとは大違い! さっきの戦いの中でも成長してたし、飛び道具を弓じゃなくて銃を選ぶのも面白い!」
突然現れた仮面の人のテンションがどんどん高くなっているのが分かる。
「誰……でしょうか?」
「あぁ失礼だったね」
ローブと仮面を取ると黒いワンピースに白衣? を羽織る銀髪の女性が現れる。結構美人だが、目に狂気が宿っているのが私にでも分かる。
「私は光の魔女と呼ばれている者だよ。はじめまして、灰の魔女さん、同じ魔女同士仲良くしましょうよ」
ニターと笑う。
殺気を感じる。明確な殺気を……
「あいたた、まったく殺気が駄々もれじゃないですの。隠す必要もないってことかしら?」
槍を杖の代わりにして立ち上がるニサが新たに槍を召喚する。
『ウンディ』
「
『そーど』
抑揚のない、やる気のない感じの声で一瞬光が走る。そしてウンディの槍と共に切られるニサ。
「あっ」
胸元から血を吹き出しながら崩れ落ちるニサ。
「イグニス、剣、3つ、散開」
3本の剣を光の魔女へ投げつけ爆発させる。
「ショット」
その爆風目掛け散弾を連続して打ち込むとその隙にニサを抱え走り出す。多分目眩ましにもなっていない。それでも走って逃げる。
「へーー足速くなったねぇ、なんだっけ? 牛おとこ? 今の速さなら逃げれるんじゃないかな?」
光の魔女は関心したように頷く。そして両腕を伸ばし背伸びをする。
「追いかけないよーーやりたいこといっぱいあるからね。さて、お仕事、お仕事」
そう言って闇に消える。
* * *
痛い……あちこち痛い! 太ももなんて何もしてなくても激痛が走るのに、鎧を着たお嬢様を抱え走るからもう千切れそう。でも止まったら死ぬかもしれない。
あれは明確な死を感じさせるものだった。今の私に出来る事は走って逃げることだけ。
ぜぇぜぇ言いながら走る。この体になってここまで疲れたのは初めてかもしれない。ニサの顔から血の気が引いていく。まずい死んでしまう。
さっきまで殺し合いをしていた相手だが、死なせたくない。
切られたのは痛かったけど、だから死んで欲しい訳じゃない。
うまく説明できないけどこの子を助けたい。まあ誰に説明するわけでもないし、自分の気持ちに従おうなど考えながら走り続ける。
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