47話

 震えが落ち着くのを待ってから、ヴァルに最後の質問をした。



「じゃ、森でも聞いたチェリミは どんなところなの? まさか、そこも変態の巣窟とか言わないよね!? 」



 最初の二ヶ所の説明を聞いて軽くトラウマになっている僕が、ヴァルに最後の街は安全だという答えを期待して食い気味に聞く。



『チェリミは、種族問わず 最も獣人族が多い街なのだ。猫人族、犬人族、狼人族、鼠人族。おおまかに分けて、この4種族で構成されている。そこでも我は崇められているが、人族のような欲望丸出しではない為 自由気侭に動ける。勿論、我の言葉は絶対だから アオイに危険が迫ることはないぞ』


「犬型神獣じゃないとヴァルが神に近い存在っての忘れそうになるよね」


『それだけ、我に心を許してくれたということなのだろう』


「そう、なのかな? 自分のことだけど、よく分かんないや」


『して、どこに移動するのだ? 』


「まだ僕に危害が加えられないチェリミにしようと思う」



 行先が決まったことで、また採取しながら移動する。


 小さな花を見つけては立ち止まり、ヴァルに説明しては頷いてくれる姿が嬉しくて自然と笑顔になる。

 長年生きてきたのだから知っているだろうに、それでも彼は僕が花や草木を見つけて歩みを止めると『これは、何という花なのだ? これは、何の樹なのだ? 』と説明を求めてきて、その都度 説明してあげた。


 一人旅だと、独り言が増えて他人から見たら変人扱いされるけど 今はヴァルと二人だから嬉しい。


 ん? 嬉しい?? 僕、何を思ってるんだろ。

 一人でも楽しかったじゃん。目的を果たしたら、結局はヴァル一人に戻るんだし嬉しがっちゃダメじゃん。



『どうしたのだ? 』


「え、なにが? 」


『落ち込んでるように見えたのだ。何か心配事でもあるのか? 』


「う~ん。心配と言えば心配事かなぁ」


『どんな心配事なのだ?』


「精霊王アレが後を追ってきたら、どうしようかなって・・・」



 本当は違うけど、ラセイの後追いもされたら面倒だもんね。

 意味合いは違うかもしれないけど、精霊王って土地神様みたいなもんだと僕は思ってるんだ。


 だから、その土地の主が役職放り投げてフラフラするのは許されないと思う。

 というか、理由が「ヴァルを返せ」ってとこにあるから やりかねないんだよねぇ。


 まぁ、追いかけてきたら 今度は二人きりの空間作って放り投げてヴァルに決着つけさせた方が早いかもしれないってことで この件に関しては僕思考放棄しても問題ないよね!



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