37話

 それに、もっと不思議なことと言えば ヴァルが本来の姿で入っているのに毛が一本も抜けてない。

 もしかして、水やお湯に浸かると体毛が変化して抜けないようになってるとか・・・?



『アオイ、我の体毛が特殊なのではないぞ』


「あ、考えてること口にしてた?」


『不思議そうに我の体毛を撫でている時点で読み取ることができる』


「それって、意思疎通っていうのかな?」


『意思疎通とは違うが、似たようなものだと思えば間違いも起こるまい』


「そういえば、僕のスキル 何か獲得したんだった。何度も見るの面倒で放置してたよ」


『アオイ、そこは一番に気になるとこではないのか・・・? 』


「こっちに来てから気になって確認した直後にステータスに変化あって2度手間になったことあるからね」



 ねぇ、ヴァル? そんな憐れむように見なくてもよくない?

 とりあえず、今の僕は泉もとい温泉に浸かって今までの疲れを癒すことに専念するんだもんね!


 地球では、料金払わないと入れなかったけど ここではタダなんだから堪能しない手はないよね。


 でも、本当に不思議な温・・・じゃなかった。泉だよね。

 意外と精霊王とか居たりして・・・まさかねぇ。



『ふふふふ。面白いオーラを持つ人間ひとの子よ』


「はい・・・?? 」


『どうしたのだ、アオイ』


「今、何か声しなかった? 」


『微かに懐かしい波動を感じたが、声は聞こえなかったぞ』


「あれぇ~? これって、まさかのデジャヴ?? 」



 まさかねぇ・・・。この泉で変な気配は感じられないから、変なというか不浄なものはいないはず。

 でもでも! 声はハッキリと聞こえたし、話してて すぅ~っと消えるとか経験してそんなに時間経ってないから疑いを持っちゃうよね!?



『アレと同じに扱うとは面白い子なのだな』



 今度は、ヴァルもはっきりと聞こえたようで啼いた。

 遠吠えに近い啼き声で、姿が見えなかった存在が姿を現した。



『久しいな。アベリー・ノースサンセム・ペディラム』


「アベリー・・・?? 」


『久しぶりだな。ラセイ・スノー・ボリス』


「ヴァル、アベリーって誰のこと? 」


『アオイに名を与えてもらう前の我の名だ』


「僕、知らなかったとはいえ ヴァルの名前上書きしちゃってたんだね・・・ごめんね」


『気にするな。我は我の意思でアオイに名付けてもらったことに感謝しているのでな』


『へぇ~、アオイって名前なのか。私のアベリーが世話になったようだね』



 何故か棘のある言い方をする、目の前の男? 女? に僕は無意識にヴァルの体毛に触れるのだった。




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