34話

 言い争いしたいわけじゃなかったのに、どうしてこうなっちゃったんだろう。

 言葉交わすと途端に仲が悪くなる・・・

 見た目の違い? それとも、別の何か?



『アオイよ、価値観の違いを押し付けてしまった我を許してくれ・・・』



 そうか。僕は人間でヴァルは神に分類される存在。

 だから、僕の言葉が彼には理解出来なかったんだ・・・


 振り返って見ると、ヴァルの耳と尻尾がシュンと垂れている。

 こんなこと言うと嫌な顔されるけど、その動作が飼い主に叱られて落ち込む犬そのものに見える。



「噛み痕消してくれるなら許してもいいよ。無理なら知らない。口も利かない」


『ままま、待ってくれ。傷痕治せば機嫌も直るのか・・・?』


「今後、もふもふワンコ姿で一緒に寝てくれるならいいよ」



「んなっ!! 」という衝撃を受けたような顔をして固まったヴァルに対して僕は、「嫌ならいいよ。知らないから」と冷たく言い放った。


 実際には、知らなかったとはいえ主従関係契約を結んでしまった状態で一方的に しかも理不尽な内容で解除するのは出来なかったはず。


 僕としては、せっかく手に入れた癒しを簡単に手放す気は更々ないんだけどね。

 それでも、素直に紡ぐのは癪だから言わない。



「どうするの?」


『寝る時だけ犬型神獣に戻ればよいのだな? 旅をする時は、獣人化でよいのだな? 』


「うん、それでいいよ。だから、早く噛み痕消して」


『我の印を結んだのだが、アオイに無断でしたことを詫びよう・・・』



 ん? 彼の噛み痕が印を結ぶって何!?

 神様から貰った知識で調べたら分かるかな。



「(神獣が印を結ぶ時、噛み付く理由は・・・?)」



「その質問は制限されている為、閲覧出来ません。別の質問をお願いします」という結果に、僕は頭を抱えずにはいられなかった。どうして、こういう大事な時だけ役に立たないの!?



『アオイよ、首に違和感はないか? 』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る