30話
苦々しい思い出が甦り、顔を歪めた僕の頬を温かい舌が三度目のペロリだった。
「っ!? だ、だから!何で舐めるの!! 」
『アオイが気になるからな』
「さっき、人間は喰わないって言ったのに!」
『人間は喰わぬ。が、アオイは興味がある』
ヴァルが僕に興味持つってどういうこと・・・? 意味が分からない。
『僕』というか人間は食べないって言ってるから、痛い思いして死ぬことはないと思う。
『アオイは死にたいのか?』
「うん。生きていても良いことないし・・・って、僕 いま口に出して言ってた?」
『我とアオイは主従関係契約を交わしたのだ。口に出さずとも通じる』
「そう、なんだ・・・」
『我はアオイに興味がある。だから、今すぐ「死のう」とは考えるな』
「今はヴァルで癒されて幸せだから、今すぐ『死にたい』とは思わないよ。でも・・・」
僕は、どうしたいんだろう。
いやいや、『自然の中で静かに眠るように朽ち果てる』ことを望んで異世界に転生したのに 何を悩む必要がある?僕は旅を楽しむよりも死に場所を探し求めているんだから、一時いっときの感情に揺らいじゃダメだよね。
そもそも、誰かと一緒にいること自体がおかしいんだ。
やっぱり、今まで通り一人で旅をしなくちゃ・・・・・・
『何を考えている?』
「ぇ・・・?」
『また泣きそうな顔をしている』
「そんなことないよ」
『アオイは嘘が下手なのだな』
「嘘なんかついてないって、何でそう思うの」
『アオイは辛いことを思い出すと悲しみを堪えた顔をする。さっきと同じような、、、な』
「そんな顔してない。してないったら、ない」
顔を見られたくない僕が俯いて地面を睨みつけていると、ヴァルが一声啼き輝く。
あまりの眩しさから目を閉じ、ギュッと瞑っていると光が徐々に弱まっていったのが分かった。
さっきの、なに・・・!? ヴァルに何かあったのかな??
そう思ってても森では何か満足すると浄化され消える存在がいるから、ヴァルも消えちゃった・・・とか?
『何を震えているのだ?』
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