28話

 気になるのに、頑なに言葉を濁す神獣ワンコを見上げていると悲しくなってきた。


 今までの旅?で鳴いた(※16話参照)ことはあっても泣いたことは一度もなかったのに、生きてた頃も動物に近寄ったら距離をとられて近づいて撫でることすら叶わなかった。


 せっかく第二の人生をってプレゼントしてもらっても、男に追い駆けられ、知らない人に声を掛けられ、挙句の果ては不気味なオネエに追い回されて良いことなんてない。


 だから、目の前のもふもふワンコに顔をうずめて癒されたかったのに・・・



「・・・・・・ぁ」



 気がついたら目からとめどなく溢れてくる涙。人間ひとに嫌われても、疲れ果てる前までは我慢できたのに。


 それなのに・・・、動物に嫌われるのは、つらい・・・。


 僕は、止めようとしても止まらない涙に「うぅ~~っ」と唸るようにしてると神獣ワンコがまた頬に流れるなみだをペロリと舐めた。

 その直後、顔を顰めて『塩を水で溶かした物を舐めてるようだ・・・』と呟いた。


 それを聞いた僕は「人は喰わぬ」と言っていたのに舐めるのはいいのかという思いと簡潔に言わないあたりが この神獣らしいなと何故だか納得してしまった。


 そして、涙を拭い もう一度お願いしてみた。何をって?もちろん、もふることをですよ(笑)


 断られてもお願いして、また断られを繰り返したところで神獣様ワンコはグッタリして折れてくれた。


 やったね!僕の粘り勝ち♪ 僕って、こんなに粘れるものだったんだねぇ。



「えへへ。ヴァルありがとう!」



 お礼を言ってから、その大きくてふっさふさの体毛に飛び込んだ。



「(ふっわぁ~。すっっっごく気持ちい!)」


『・・・・・・・』


「あれ? 何か驚くようなこと僕言った? 」


『お主は無意識のようだが、言葉を話せる上位種に名付けるということは主従関係契約を結ぶということなのだが知っていたのか?』


「・・・・・・ええぇぇえぇえ!? 」


『知らずに契約してしまったのか、人の子よ・・・』



 僕の盛大な叫び声と神獣様ヴァルの呆れたような溜息が重なった。


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