第3話 列車上の死闘

「誰が魔女ガチ勢だ」

 あいつらが魔女の事を何も理解していないにわかだということは否定しないが、その肩書きは非常に不本意だ。

「ふふ。そう照れなくてもいいのに」

「黙れ」

 誰も照れてなどいない。

「あらあら、相変わらずツンデレさんね。少しぐらい私の相手をしてくれてもいいでしょう?」

「断る」

 今の俺には余裕がない。

 なにしろ心配事が山のようにあるのだ。

 アトの発言で魔女信仰者の奴らに正体がバレるかもしれない。

 あいつらの発言で、アトの奴が暴れ出すかもしれない。

 これから始まるであろう戦闘で、下で『停止』している奴等を巻き込んでしまうかもしれない。

 その他にもまだまだある。数えだしたらきりがない程に。

 それだけこれから始まるであろう戦闘は、複数の意味で『危険』なのだ。

「お前は黙って見てろ」

 アトに釘をさしておく。

 考えられる中での最悪は魔女の戦闘参加。

「あれは俺の『課題』だ。絶対に手を出すな」

 だから念入りに。

 魔女を相手にする場合、しつこいぐらいが丁度いいのだ。

「勿論そのつもりよ。でもねダン。私、あのにわかの坊や達にどうしても一つだけ聞きたい事があるのよ。それぐらいは許してくれないかしら?」

 また我儘を。傲岸不遜な魔女らしいと言えばらしいのだが。

「……余計な事は言わないか?」

「勿論よ」

 ……まったくもって信用できない。爆弾発言を連続投下する魔女の言葉なのだから特にだ。

 しかしここで無理に押さえつけても、魔女の機嫌を損ねるだけだろう。

 八つ当たりでこの辺り一帯が地図から消える事になるだけは避けねばなるまい。

「好きにしろ」

「ありがとうダン。愛してるわ」

「そりゃどうも」

 ……頼むから、さっさと終わらせてくれ。

 俺の前に一歩出るアトの全てに警戒しつつ、俺は心中でため息をついた。

「さて」

 アトが俺ではなく、魔女信仰者達に向き直る。

 そこで空気が一変する。

 その場の流れを完全に引き寄せ、アトは言葉を紡ぐ。

「魔女を信仰するあなた達に一つだけ問わせてもらってもいいかしら?」

 本来、そんな質問は答えはしないだろう。

 だがアトは魔女だ。彼女の言葉には聞くものを無視させない力強さがある。

 それは魔術のような特異な力ではない。

 人を惹き付ける力――カリスマによるものが魔女にはあるのだ。

「いいだろう」 

 故に、魔女信仰者は応じる。年端もいかない少女の問いを無意識の内に聞こうとしてしまう。

「大した事じゃないわ普通なら聞くまでもないシンプルな質問よ――」

 にこりと微笑み、アトは問う。



「あなた達は、魔女に死ねと言われたら死ぬのかしら?」



(……確かに聞くまでもない問いだな)

 普通の人間なら答えはノーだ。

 世界の敵である魔女に死ねと言われて応じるバカはいない。

 だが、それはあくまで一般的な人間の話。

「愚問だ!」

 アトが問いかけた相手は普通とはかけ離れた狂信者達なのだ。



「魔女様の為に、この命を散らせるのならば、本望!」



(……)

 それはおそらく、魔女信仰者達の共通の答えなのだろう。



「……そう」

 だが、



「くだらないわ」



 それはアトが最も嫌悪する答えであった。



「くだらないだと!?」

「ええ。くだらないわ。どうして魔女なんかの為に、その素晴らしい命を捨てられるのかしら? だからあなた達魔女信仰者は駄目なのよ……」

 吐き捨てるように言うアトは、ただただ辟易としていた。

「貴様! 魔女様が我々人間より劣っているとでも言うのか!?」

「その通りよ」

「ふざけるな!」

 いいや。アトはふざけてなどいない。

 本気で言っているのだ。自分の命よりも、この魔女信仰者達――否、人間の命の方が素晴らしいと。

 だがそれは決して伝わらないだろう。

「魔女様は永遠にして不変の神! 我等人間の刹那しか生きられない者達よりも優れているのが何故分からん!?」

「……愚かしいわね」

 心底失望したと言わんばかりに溜め息をつき、アトは言う。



「永遠が刹那の上だなんて誰が決めたのかしら?」



 彼等の信仰を真っ向から否定する言葉を。

「確かに人の命は短いわ。永遠と比べたら、それこそ刹那のものでしょうね」

「だから我等は!」

「でもね……」

 こういう話をする時、アトは本当に羨ましそうに人間を見る。

 そしてそれは今回も例外ではなかった。

「だからこそ、その刹那に何よりも美しく、気高く、雄々しく輝くのよ」

 羨むように、尊い者を見るように、その場にいた人間達を見ていた。

「さっきから叫んでいる若い坊や。あなたとても綺麗な手をしているわ。今すぐ魔女信仰者なんかやめて、パン職人に転職しなさいな。きっと大成するわよ」

 アトは本心から言っている。

 永遠自分よりも刹那人間の方が素晴らしいと。

 そういう女なのだ。

 天敵であるが故に人間の弱さも強さも誰よりも理解している。

 ……だからこそ、手強い・・・

「我等の信仰を愚弄するな!!」

 だがそれは決して魔女信仰者達には伝わらない。

 魔女の偶像を信仰する彼等だからこそ、本物の魔女の心中は決して見えない。

「我が愛は唯一、魔女様に捧げるのみ!!」

 故に自分達の信仰が否定されたと激昂する。

 若い魔女信仰者はアトが誉めた手にナイフを持ち、少女に襲いかかる。

 それが自らが神と称する魔女と知らないままに。

「死ね!」

 男がナイフを振り下ろす。

 だが――

「!?」

 その前に、俺は一気に距離を詰め、ナイフを持った男の手の手首を掴み取った。

「貴様、一体いつの間に!?」

「お前――」

 近くで見れば分かるが、本当に綺麗な手だ。

 アトの言う通り、パン職人でもなれば、大成したかもしれない。

 だがもう手遅れだ。

 アトに襲い掛かった時点で――

 否。

(ああ……やっぱり・・・・か)

 接触して俺は気付いてしまった。

(既に仕込み済み・・・・・か)

 杞憂であって欲しかった心配事の一つが的中してしまった事に。

 なら、俺がやる事も一つだ。

「離せ!」

「ああ」

 離してやるとも。



「お前の手をな」



 腕に力を込める。

「ぐ、ぎ!?」

 ただ、込める。

「ぎぃゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 すると、ゴキリという骨が砕ける音と共に、男の綺麗な手は過去の話となった。

「私の手がぁぁぁぁ!!??」

 男の悲鳴が響き渡る。

「あらあら。大袈裟ね」

「無理を言ってやるな」

 突然手首を握りつぶされれば誰だってこういう反応になるだろう。

「貴様ああぁぁぁ!!」

 だがまあ、しかし――

「やかましい」

 少しばかりうるさいので俺は男の頭を容赦なく蹴り飛ばし、黙らせることにする。

「ぎゃぴぃ!?」

 奇声を上げ、男が仲間達の元に吹き飛ばされる。

「ぬん!」

 だがそれを長身の男がいともたやすく受け止めてみせた。

「無事かトオル」

「し、神父、様!」

 神父と呼ばれた長身の男は、若い男の身体を列車の天井に横たえると、油断なく俺に視線を向けた。

「そこで横になっていろ。貴様の無念は私が晴らしてやる」

「い、いえ! 奴は、私が!」

「不可能だ。貴様ではあの少年に決して勝てない」

「ですが!」

「ですがではない。次に向かって行けば、せっかく拾った命を散らす事になる。そのような事は私が許さん」

 どうやらあの神父様は意外と仲間想いのようだ。

 そんなあいつらとこれからやり合う事に、少しのやりづらさを覚える俺に、ニヤニヤとした笑みを向けてくる魔女にも少しはその思いやりを見習って欲しいものだ。

「くふふ。まるでこっちが悪者みたいねダン」

「みたいじゃないだろう」

 ……最初から悪以外の何者でもない。

 なにしろ俺達は魔女とその宿敵兼弟子。

 どこに行っても、世界の敵なのだから。

「貴様の魔女様への信仰が本物であるならば、今は耐え、そして生き延びよ。あの少年は、私が倒す」

「……」

 盛り上がっている所悪いがーー

「無駄だ」

 残念ながらそれは決して叶わない。

「随分な自信だな少年。確かに君もかなりの実力者のようだが、私も自分の魔術の腕には自信が――」

「違う」

「?」

 その事ではない。

「魔術の腕前なら比べるまでもなくお前の方が上だよ神父様」

 自分で言うのも何だが、俺の魔術の才能のなさは常軌を逸している。

「断言してやる。俺以上に魔術が無能な奴はこの世界に存在しない」

「……なら、何が無駄だと言ったのかね?」

「その前だ」

 神父は若い魔女信仰者に言った。

 生き延びろと。

 だがそれは無駄なのだ。

 何故なら――



「もうその男は殺してある」



「まさか――」

 俺の言葉を受け、神父がトオルに目を向ける。

 その視線の先は俺が先程握りつぶした部位がある。

「! 腕ごと切除しろトオル!」

「え?」

 正解だ。一瞬で唯一の生存方法を言い当てるとは。

 魔術の腕に自信があるというのは本当のようだな。

(だがもう遅い)

 若い男の握りつぶした際に仕込んでおいた魔術式を発動する。



「パラライズ」



 術式は麻痺。

 ただし加減ができない今の俺は、必要以上にその効果を高めてしまう。

 本来は相手を一時的に行動不能にするだけのこの術は――

「ぎ、ぴ!」

 発動すれば最後。相手の心臓にまで麻痺を与え、一瞬の内に絶命させてしまう。

 俺がマーキングした魔術紋が発動し、あまりにも呆気なくまだ若い魔女信仰者の男は死亡した。

「トオル? しっかりしろトオル!!」

 死体となったトオルを抱き起こし、声をかける神父。

「しっかりもなにも、もう死んでいるのにねダン」

「認めたくないんだよ」

 仲間が死んだ事を。

 その気持ちはよく分かる。

「……」

 返事がないが、それでもまだ信じられないと言った風に、神父は若い男の脈を取り、やがて項垂れる。

「納得したか?」

 こういう時、俺は自分でも驚くほどに冷ややかな声が出る。

 昔の癖だが、これでは本当に悪役だ。

「……君はまだ学生だろう?」

「ん?」

 死んだ若い男を列車の屋根の上に横たわらせると、神父は俺を睨みつけて来た。

「どうしてここまで平然と人を殺せるのかね?」

 神父らしく説教――いや、単純な疑問からの質問か。

 面白い事を言う。魔女によってもたらされる滅びを受け入れる事を救済としている魔女信仰者の者が言う言葉ではない。

(案外、根はまともな奴だったのかもな) 

 だがしかし、それでも俺のやる事は変わらない。

「答えてあげなさいなダン。哀れな狂信者に」

「ああ」

 ならば俺の答えも一つだ。



「殺さない理由より、殺す理由の方が多いからだ」



 我ながら外道の極みではあるが、俺の偽りのない本心であった。

 この魔女信仰者達を生かしておくのは『リスク』が高過ぎる。

 だから殺す。それ以外の理由など必要ない。

「悪魔だな君は」

「……否定はしない」

 むしろ全面的に肯定する。

 俺は悪魔。

 いやそれ以上に達の悪い化け物だ。

 なにしろあの黙示録の魔女の宿敵兼弟子なのだから。

「ならどうするのかしら神父様? 悪魔であるダンをあなたはどうするのかしら?」

 満面の笑顔で問いかけ――いや煽るアトに、神父の返答は即答だった。

「当然。断罪する」

 ……当然ときたか。

「この私の手で!」

 言いながら、男は外套を脱ぎ捨てた。

 外套の下は……何も着てなかった。

(何故――脱ぐ?)

 神父とは思えない程に鍛え上げられた肉体があらわになるが、それ以外は何もない。

「あら。筋肉もりもりマッチョマンの神父様だわ」

「……変態の間違いだろう」

 流石に下は着ているが、上半身は裸。その上に外套を着ただけの神父なんて、どう考えてもやばすぎる。

「行くぞ少年!!」

 神父が動く。

(意外に速いな……)

 鍛え抜かれた筋肉の割には素早い動きをする。

 離れていた距離がすぐに詰められた。 

「ぬうん!!」

 繰り出される神父の拳。肉体強化の『系統魔術』でも使用しているのか、その速度は下手な銃弾よりも速い。

(……これはかわしては駄目だな)

 速度的にはかわせない事はない。

 だが俺の後ろにはアトがいる。

 避けてアトに当たれば、魔女は腹いせにこの列車ごと神父を消してしまうだろう。

 そうさせるわけにはいかない俺は、神父に取れる行動は一つであった。

「ふ!」

 向かってくる拳に、同じく右の拳を繰り出す。

 これでもとある理由から力には自信がある。

 並大抵の肉体強化を使用されても負けない程度の身体能力は持っていると自負している。

 だが――



「あ、それだめよダン」



 そんなちっぽけな自信は拳同士が接触した瞬間に砕け散った。

 俺の拳と一緒に。

 文字通りに。



「ぐ!?」



 力負け……などというレベルの話ではない。

 一方的に拳を粉砕された。

(だが――)

 既に勝敗はついた。

「エンチャント」

 既に拳が接触した時点で、奴の拳には魔術紋をマーキングしてある。

「パラライズ」

 そして再び麻痺の術式を発動する。

 神父は先程の若い男と同じように絶命――

「無駄だ少年!」

「!?」

 しなかった。

 術式が不発に終わったわけではない。

 魔術は発動しているのに、神父は麻痺する所かまったく影響を受けていないのだ。

「ぜやぁ!」

 神父の拳の追い打ちが来る。

 顔面を狙った攻撃。

 避ける事も、守る事も許されない。

 ならば――

「エンチャント」

 足元に念の為にマーキングしておいた魔術紋を発動する。

「コンヒュージョン」

 発動するのは混乱の術式。

「ぬ!?」

 神父の拳が止まる。

 当然だ。今奴は俺の姿を見る事が出来ないのだから。

 この魔術の範囲内にいる者は、例外なく認識能力が混乱する。

 視覚を始めとした五感。全てが狂うのだ。

 並大抵の者であれば、平衡感覚すら狂い、行動不能に陥るのだが……

「舐めるな!!」

 目の前の神父には、やはりほんの少しの間動きを拘束しただけで、混乱を解いてしまった。

(やはり直接マーキングしないと効果は薄いか……)

 だが今はこれで十分だ。

 既に俺は距離を取り、後ろにいたアトを無事な方の手で抱き上げ、更に大きく後退していた。

「くふふ。流石の逃げ足の速さね」

「誰かのおかげで鍛えられているからな」

 なんせ、一発食らえば終わりの攻撃を連発してくる魔女といつもやりあっているのだ。

 場を仕切り直す為に後退する術は嫌でも上達する。

(しかし……)

 十分な距離を稼げたので抱えた魔女を下ろしながら、俺は今の敵である神父に向き直る。

 神父は混乱の魔術から回復していたが俺を警戒し、追撃はしてこなかった。

 見た目とは裏腹に、慎重な男だ。

「……厄介だなあんた」

 心からの本心であった。

 魔女信仰者はただのテロリスト集団だと思っていたが、まさかここまで戦闘に秀でた魔術師がいるとは。

 認識を改める必要がありそうだ。

「その言葉はそっくりそのままお返ししよう」 

 拳を持ち上げながら、神父は首を横に振った。

「この拳は何人もの異教徒達を断罪してきたが、まさか初歩の『系統魔術』で逃すとは思わなかったよ」

「……」

 流石に気付かれたか。まあ、無理もない。

 俺が使っているのはこの世界に生きる魔術師なら誰でも知っているような超マイナー魔術だからな。

「『付与魔術』……君が使っている魔術はただそれだけだ」

「……まあ、気付かれるよな」

 俺が使っている魔術は数ある『系統魔術』の中でも初歩中の初歩。

 魔術学校ではまず一番初めに教えられる程に簡単なものだ。

「お察しの通り、俺が使っているのは『付与魔術』。全系統魔術の中でも最弱の落ちこぼれ魔術だ」

 無から有を生み出すのが魔術の基本。

 その最初の段階で物に別の属性や能力を一時的に付与する魔術。

 それが上級魔術師からは『初心者魔術ビギナーズマジック』と揶揄されるこの『付与魔術』の特徴であった。

「確かにただの『付与魔術』なら、君の言う通り最弱の落ちこぼれ魔術だ」

 「だが君のは違う」と彼の背後にいる若い魔術信仰者の男の死体を見た。

「触れただけで魔術紋を即座にマーキングし、桁違いの魔力を注ぎこむことで本来の付与魔術では不可能であるはずの逸脱した効果を発揮できる」

「……」

 正しくは発揮しているのではなく、発揮してしまっているのだがな。

 魔力のコントロールという魔術師としての初歩が出来てない自分が、我ながら情けない。

「しかも腕だけではなく足――それも、間接的に触れた物にすらマーキングが施せるようだな」

 俺が先程マーキングをしていた列車の天井を見ならがら、男は冷静に分析していた。

「ひどく厄介だ。しかし幸運な事に、私と君の相性はいいようだ」

「だろうな」

 奴に発動した付与魔術が効果を発揮できないのがその証拠だ。

「肉体強化の『個有魔術』だろ? あんたのそれは」

「然り。これが我が個有魔術『鋼の信仰スティール・フェイス』の能力である」

 男の肌が変色――いや、変化・・していく。

「我が肉体は鋼と化し、あらゆる物理攻撃も魔術も効かない無敵の身体を作りだす」

 漆黒へと。奴の言葉を借りるなら、鋼へと全身を変化させる。

「故に、君がいくら私の身体に魔術紋をマーキングしても無意味だ」

 確かに『系統魔術』の上位である『個有魔術』で形成されたあの鋼の鎧を『付与魔術』で突破するのは不可能であろう。

 ならば――

「何を悩んでいるのかしら? 使えばいいじゃないダン。あなたの『個有魔術』を」

「……黙れ」

 余計なことは言ってくるアトを睨み付ける。

「あら。別に余計な事ではないから言ってもいいでしょう?」

「どこがだ」

 相手にこちらの手札を晒すような発言が余計でないはずがないではないか。

「そうでもないでわ。だってあなたが『個有魔術』を使えば、それだけで勝負はつくのだから」

 目には目を歯には歯を…… 

 奴が『個有魔術』を武器として来るのであれば、こちらも『個有魔術』を使うまで。

 それが定石セオリーであり、ここでの正答なのだろう。

 だがそれは……

「駄目だ」

「あら。どうしてかしら?」

「……分かっているくせに聞くな」

 使わないんじゃない。使えない・・・・のだ。

 俺の『個有魔術』は、あの神父のように、気安く使えるものではない。

「なら、どうするのかしら?」

 そんな期待するような目で見るな。

 俺の答えなんて分かっているだろうに。

「相手はあなたの『付与魔術』に優位をとれる『個有魔術』で形成された最強の鎧を持っている――相性は最悪よ」

「……」

 分かってはいたが、改めて言われると確かに絶望的だ。

 だがな。



「それがどうした?」



「くふ」

 俺の答えに、魔女が頬を吊り上げる。

 お前のリクエストに答えるのは癪だが言ってやる。

「たかが最強の鎧程度・・に俺は負けん」

 一番求めている答えを。



「勝つのは俺だ」



「ああ――」

 恍惚とした顔でぶるりと身を震わせる魔女。

「なら、逆襲してみなさい逆襲者リベンジャー

「言われるまでもない」

 見ているがいい。俺の宿敵兼師よ。



 ここからが逆襲の始まりだ。


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