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チャッチャラバベ太郎

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「違うって言ってんでしょうがッ!」

「なんでよ、この惨状を見てまだ分からないの!」

寝ぼけたことをぬかす目の前のオンナが心底憎らしかった。

現実ってやつの優先順位をどうしてわからないんだ。

「どう考えても私の提案の方が正しいわ!長期的な期間を置けば脳味噌ホコリだらけのアンタにも正しさが証明されるでしょうね!!」

「ケッ明日の暮らしも満足にできるかどうか怪しいのにそんな計画は机上の空論だね!まず環境を整える事の方が大事さっ!」

「何を!」

「ぉを!?」

互いの右ストレートが互いの頬をかすめた。


お前と会ったのはクソ熱い夏のドブ川だった。

「あたし家ないんだー」

栄養失調かというぐらい瘦せこけた顔で女はへたくそな笑顔を浮かべる。

「借金600万作っちゃってさー、リボ払いで誤魔化すのも限度が来て逃げて今ここに住んでんだー」

「………」

「おねーさんはなんで平日の昼間からこんなとこいんの?」

「……夜勤だからだよ」

「ふーん、そ」

「だから、昼なら家賃一万で住まわせてやる。水道ガス代含めてだ」

気まぐれ、同情、好奇心、一目惚れ。どれが理由だったかはもう忘れた。

が。

生活力がない二人がつるんだところでお察し。

部屋はお部屋化が加速し、こいつは私の名義でカード作って借金を増やし私は肝臓を一度壊すぐらい酒を浴びるようになった。


色々身辺整理し、借金が現実的な額になってきたので……。


互いを殴り続け、息が上がってきたところでアイツが小声で…あっやりやがったな!

「勝手に…電話するなよ!」

私は唯一の電子機器の携帯を奪い、腹に力を入れて叫ぶ。

「私も、あんたも、ちまちま必死に貯金してきただろうが!私の意見は当たり前だ、それを否定するなァ!」

「暴論!!!」


『あんた、夢とかないの?』

『なんでんなこと聞くの?そりゃフィリピンのカジノで一山』

『ギャンブルは却下。夢とかあった方がモチベーション上がるでしょ』


「無職のアンタが!私に!勝てるわけないだろうが!」

「なっ、構えて…!?」


『そうだね、じゃあ…』


「うおおおおおおおおおおおおおおお私が!望むのは!!」


『あたしが一番欲しいのは!』



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「ぐわぁ!」

こいつは窓の外へ吹っ飛び、裏のドブ川に転がり落ちた。

「忘れちゃったのかよ……!あのころの夢を……!」

私は外に飛び出し、こいつの胸ぐらを掴んで睨みつける。

「いっちばん初めの事忘れるやつはなあ……ロクな奴じゃねえんだよ!!!」

「!」

こいつの目が、呪いが解けたかのように見開かれる。

「そうだ…私の夢は…!」



「私は……お腹いっぱい冷凍食品を食べたかったんだ!!!」

「そうだ!!!!!」

私の口元は笑っていた。

「そう考えると何がクーラーだよ!厚けりゃ川に入ればいいし寒けりゃ布団被るわ!!」

「よーしマツモトキヨシ行くぜ!」

「それ薬屋じゃねえか!フッハハハ!」

私たち二人は川から立ち上がり、水面と目が合った。


すっぴんのブサイクが二人映っていた。


「「まず化粧道具買うかあ!」」

サーモンピンクのチークを買った。

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