第12話 眠る妹

 光は、ある部屋のドアをトントンとノックし「きらり、入るよ」と部屋の主であろう者に声をかけ中へ後ろの2人と共に中へ入る。


「亜使君、これを見てくれ……」


 豪華なベッドで小学生くらいの少女が眠っているのを、虹夜へ見せる。名は呼ばれていないが、ついでにビルファも見てみる。


「この女の子は、天心くんの妹さんかな?」


 光の面影を、この眠っている少女に感じ、彼は、聞いてみた。


「うん、亜使君の予想している通りこの子は、僕の妹、大事な大事な妹なんだ……」


 光は、悲しそうな声で下げ落ちた両拳をギュッと握る。


「もしかして、この女の子が、悪い悪魔に──?」


「そうみたいなんだ……ある朝から、きらりが目を覚まさずに、ずっと眠り続けているんだ……」


 光は、辛そうな口調で続ける。


「輝が眠ってしまって6日目の朝、僕が部屋に入ったら天使が中にいて、『この女の子が眠り続けているのは、悪魔の呪いにかけられているから何です』って教えてくれた」


 光は、語り終える。


「そっか……天心くんが悪魔を憎んでいる理由は物凄くわかった……俺も同じような事があったら……うぅ……」


 もしも、自分が大切に思っている存在が、目を覚まさず、会話も出来ず、一緒に遊んだりしたりする事が出来なくなってしまうと考えてると、とても虹夜は。心の奥の辛いものに通ずるものを感じ取り、涙を流す。


「あ、亜使くん……」


「でも、ビルファは、優しい悪魔だから倒そうとするのは辞めて欲しいな……」


 彼は涙を拭い、相手の気持ちを分かってはいるが、それでも大切な友達を傷つけられたくなかった。少々身勝手かもとも思っているが、それでも、ビルファは見逃してくれと頼む。


「うん、ビルファさんは悪い悪魔じゃないのは、もう分かってるよ、倒したりはしない」

[彼にとって、ビルファさんは、本当に大切な人なんだね……こんな心優しい亜使くんに慕われているくらいだし、さっきの一見もあるから、ビルファさんには何もしないでおこう]


 優しい2人の友情を壊しては行けないと、彼はビルファのことを見逃すことにした。


 それを傍観していたビルファだが、


「おい、光野郎!! 気になることがあるんだが、答えろよ?」


「う、うん」


 実はビルファは、この問題の謎を既に見破っている。だが、敢えて質問と称して答え合わせを始めようとしてる。


「んじゃあ始めるぜ!」


 目覚めぬ光の妹にビルファはチラリと視線を送り、彼への追求を始めた。

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