第8話 互いの意見価値観

「グハハハハァ!! 間に合って良かったぜぇ!」


 家庭科室から学校外の大きめな公園へ繋いである、ビルファの魔法で作った黒に近い濃い紫の穴【ゲート】から彼は悪々しい笑い声をしながら虹夜と彼の荷物を抱えて公園まで出てきた。


「安心しろ! 人がいねぇ所だから変な騒ぎにはならねぇよ!」


 ビルファは、家庭科室で教師達の声が聞こえてゲートを開くまでの短い間に、この公園の人の目に映らない所を見つけて、そこに今転移している。


「配慮してくれてありがとう。ビルファ」


 適切な配慮をしてくれる好き友達に、虹夜は感謝の気持ちを伝える。


「そんじゃあ虹夜、靴履けよ!」


 ビルファは悪魔の固有能力である、物体を浮かせる力で優しく虹夜と荷物を浮かせて彼に靴を足に履かせてカバンを手元に浮かせる。


 虹夜が自身のカバンを手に掴むと、口で膨らませた風船の用にゆっくりと地面に下ろす。


「ビルファ、ありがとう! 君のおかげで先生に見つかって騒ぎにならずにすんだよ。ただ……」


 虹夜は、「はあぁー…………」と大きくため息を溢す。


「人の服と荷物が入ったカバンを燃やすのってやり過ぎじゃない? 制服や教科書って結構お金かかるし、筆箱とかには自分の好きなアニメやゲームとかのストラップとかあるんだよ!?」


 流石に、報復としては度が過ぎていると友達悪魔に説教する。


「何を言ってんだよ! あの人間共はお前の靴を燃やそうとしていたんだぞ! しかも、魔法じゃねぇんだぞ!? わざわざ本物の炎で燃やそうとしてたんだぞ!?」


 ビルファは自分の仕返しは正当だと説明する。


「奴らの記憶を見たが、まず学校の人が少ない場所で炎魔法を使って、燃えなかったから、かみ……色んな魔法を駆使して靴を怖そうとしやがってた! それで、魔法でダメだとわかって化学の力にまで使おうとお前が見つけた家庭科室の料理用のガスコンロで直接炙ってやがったんだ!」


 彼は自身の種族の者達が持つ固有能力で覗いた彼らの記憶について説明する。


「この国の人間達の言葉には、因果応報って言葉があんだろ!? やられたらやり返すされるのは当然の事だ! 俺は、あいつらと同じ事をやっただけだ!」


 ビルファは、同じ事をそのまま相手にした訳だとご立腹な友達に説明する。


「それなら、彼らの靴か上履きを燃やすのは理解出来るけど、制服やカバンやリュックを荷物丸ごと消し炭にするのは、やりすぎじゃない?」


 虹夜は、ビルファの考え方に従った場合でもやり過ぎだと返す。


[虹夜め……俺と出会ったばかりの頃は、文句を言いながらも何とか納得してたんだが、今となっちゃあ、めっちゃ論理的にダメだと言ってくるようななっちまったぜ……]


 彼が自分と出会った頃は、壮絶ないじめを受けていて感覚が麻痺していたのと、まだ小学生だったのもあって、ビルファの容赦ない報復を虹夜はやや不満ながらも軽い説得で認めていたのが、今の彼はいじめもなく年齢も重ねて、ダメなことはダメ、報復はやり過ぎるなと言うようになり、友達として嬉しい反面、残念な複雑な感情にビルファはなる。


[まぁ、こいつを納得させられる言葉を俺は知っているが、こいつの強いトラウマ、解決するまで消えねぇぐらいの、魔王が戦争や勇者との戦いで敵対者を殺すつもりで放った攻撃魔法を受けた奴がおった絶望的な傷を心に負って、それにつけ込む言葉だからな……俺の数少ない友達として、その事に関連する事は避けてってから、言う訳にはいかねぇし……]


 虹夜を納得されたいが、大切な友達の心の傷を刺激する発言をして説得したくないビルファは、「うぅーん……」と考えこむ。


「彼らの燃やしちゃった物を元に戻せない? 【悪魔時間──デビル・タイム】の666分までまだ時間があるから復元できるでしょ?」


 虹夜は、ビルファに燃やしてしまった物を元に戻すようにお願いする。


「ダメだ! 人の物を勝手に燃やすような奴らには当然の報いだ!」


 ビルファはそれを拒否する。


「悪魔時間を過ぎてからなら考えなくもねぇがな!」


「それだと、彼らが払う代償が多くなっちゃうでしょ? 悪魔時間の間なら、それがかなり軽い対価で済むよね?」


 悪魔時間──デビル・タイムは、666分の間に起きた事、物が壊れたりペットが病気で死んでしまったりなどのことを、悪魔に頼んで物を復元してもらったりペットの病気を治して蘇生したりするのに支払う対価を物凄く少なく出来る期限の事。


 悪魔は、人とやり取りする時に何を代償にするか聞いてくるのは、その代償を元に人の願いを叶える為でもある。ただ、その支払ってもらう時にその願いを叶える分以上に払って貰うと、その余り分はその悪魔を強くする事が出来る。悪魔は基本、強くなることを望んでいる者達が多い傾向にあるので、悪魔は基本的に願いを叶える為の代償よりも多めの対価を人に要求する。


「お前がそこまで言うなら、仕方ねぇ! 今直ぐに、奴らの夢の中に行って悪魔時間内の内に復元するか聞いてやってもいいか!」


 急に、虹夜の頼みに彼は了承する。


「本当!? ありがとうビルファ!」


 お願いを嫌がっていた彼がやってくれると言うので、彼は嬉しそうにお礼を言う。


 だが、少し怪しかったので彼に一応聞いてみる。


「期限の間だけど、それを黙って大きめの代償を払わせたりはしたらダメなのはわかってるよね?」


「流石虹夜だなぁ! ……なんで分かったんだ?」


 クソ!バレたか! という感じの表情でビルファは残念そうな顔をする。


「4年近く友達で毎日一緒にいれば、種族が違くても考えてることは分かるよ……」


 やっぱりか……という感じの声をしながら虹夜は彼に伝える。


「ビルファ!」


「ん? なんだ、虹夜!?」


「ありがとう! 俺の為にこんなにも怒ってくれて! 俺はその気持ちだけでもとても嬉しいよ! 俺には燃えて無くなった物を元に戻す能力がないから、ビルファにお願いしたいんだ! どうかお願い出来るかな?」


 虹夜の純粋な感謝の気持ちと、彼は基本的に何かあっても人に話たりしないどころか、軽いお願いですら人に頼んだりしないのを、今回ばかりは自分に頼んでくるくらいの事だとビルファは理解した。


[こいつはそういう奴だからな……あぁ! 仕方ねぇ!」


「わかった! お前の慈悲に免じて、奴らの消し炭になった物を元に戻してやる! それにお前だって復元の代償を奴らからじゃなくて自分ので代用しようとか言うと思うが、それを岩ねぇだけでもまだマシだ!」


 ビルファは、彼の頑固で善良な心に折れて、彼が燃やしてしまった4人組のものを必要対価が凄く軽い今のうちに戻す事にした。


「んじゃ、俺はお前の学校へ戻って奴らの夢へ復元の契約しに行くぜ。ただ、お前は今から俺がゲートを開くから、このまま家に帰れ。帰宅する道に、お前を待ち伏せしている奴らが何組かいるからな」


 ビルファは虹夜が待ち伏せしている人達をみんな対処出来る事は理解しているが、虹夜を過去に強いトラウマと人間の身体で考えた場合、人間の肉体と言うよりズタズタに切り刻まれ尚且つボロボロになった布の塊のような心の傷を与える事になったあるジャンルの人達みたいな輩のグループも待ち伏せしている為、彼がフラッシュバックを起こして、その人間達に何をするか分からないので、ゲートを開き彼の自宅の扉の前からまで、帰らせる事にした。


「ビルファに頼ってばっかりじゃ悪いから、俺は歩いてかえ」


「ダメだ! 俺はお前の頼みを聞いた! だから俺の頼みを聞いてくれ!」


 虹夜の発言を遮るほど、ビルファは彼にゲートから家まで帰るように伝える。


 切実そうな顔と声をしている彼の言葉を聞いた虹夜は、「わかった。君がそこまで言うならこのゲートから帰るよ」と了承した。


 そして、虹夜は黒紫の空間の中を通り、玄関の鍵を開けて家の中に入っていくのをビルファは確認すると、虹夜の通う中学校までゲートを空けて、友達からのお願いを実行しに行った。

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