第6話 靴を探そう

 虹夜はギリギリ朝のチャイムに間に合い、授業を受けた。


 そして、放課後……


「さてと……学校も終わったし帰ろうかビルファ」


「ああ、そうだな」


 2人は、教室を出て玄関へ行く。


 そして、靴を履くために自分の下駄箱を見る。


「あれ? 俺の靴が無い……」


 下駄箱にあるはずの虹夜の靴が何故か無くなっている。


「中学生にもなって、あの馬鹿5人組みたいな事をやるなんてまだまだ稚拙で幼稚な奴もいるみてぇだな……!」


 ビルファは、虹夜の靴が無いことを察し、腹を立てたように呟く。


「やっぱり誰かが隠したのかな? まぁ、こんな事もあろうかと、靴に闇魔法で魔力をまとわせているから……『属性変化・闇』」


 彼は、自信が靴に付着した闇の魔力を察知する為に、闇属性に変化する。


 そして、2人は靴の場所を目指して移動する。


「この調理室にあるみたいだね」


「さっさと入ろうぜ」


 虹夜は引き戸を開けて2人は中へ入る。


 彼らは中に入ると、4人の生徒が集まってガスコンロの火の中に虹夜の靴を放り込んで談笑していた。


「君たち何をやっているのかな?」


「ん? 何って……うわっ! 亜使!! 何でここにいんだよ!?」


 集団のリーダーらしき男子生徒が虹夜の声に反応し、彼がいる事に驚く。


「俺は靴が無くなっていたから、靴に魔力をまとわせてそれを察知してここに来たんだけど、君たちは何をやっているの?」


 虹夜は、男子生徒の質問に答え、もう一度この場所で何をしているのか問いかける。


「見て分からないの? 目が腐っているのかしら? 光君に酷い事をしてのうのうと学校へ来ているゴミの靴を親切な私達が焼却処分してあげてるの! 全然燃えないと思ったらこんな細工していたのね! キモッ!!」


 集団に2人いる女子生徒の片方が暴言を交えながら説明をする。


「そっか、じゃあ靴返して!」


 虹夜は、靴がまだ無事な事が分かり返してもらおうと伝える。


「はっ? 何言ってんのお前? お前自分の立場分かってる?」


 リーダーの男子が馬鹿にしたように彼に突きつける。他の3人も「そーだそーだ」と言い放つ。


「そんな事はどうでも良いから返して欲しいんだけど……」


「ちっ、 お前マジでうぜぇ……んだよ!!」


 返すように要求してくる虹夜に腹が立ち、リーダーの少年は、身体強化魔法を自信にかけ彼に蹴りを入れる。


 だが、男子生徒の足は虹夜に届く前に謎の手に止められる。


「おい愚人共! 俺の友達に暴言を吐き、しまいには暴力を振るうとか何を考えてんだ? 痛い目に遭わなきゃわかんねぇようだなぁ?」


 姿を消していたビルファが実体化して、4人組を威圧する。そして、虹夜を蹴ろうとした少年の足を握り、骨にひびを入れる。


「あーーー!!」


 足に激痛が走る男子生徒は、痛みのあまりに大声で悲鳴をあげる。


「うるせぇ!!」


 ビルファは、叫ぶ少年を椅子が積んである所へ投げつける。


 彼はそこへ直撃して大きな音を立て、ぐったりする。


 靴を放り込んでいるガスコンロの周りにいる残りの3人は、謎の恐ろしい存在に友達を気絶させているのを見て、ガタガタ震える。


「次は、テメェらの番だ……!!」


 禍々しく美しい悪魔が、3人の方を睨みつける。


「ヒィ!! あ、亜使!! この悪魔の友達なんだろ!!? やめさせてくれ!!」


 グループの男子が虹夜へ必死に懇願する。


「でも、君たちは、天心君の為に俺の靴を燃やしたんでしょ? ビルファも俺の為に怒ってくれているのは同じだと思うな」


 虹夜は笑みを浮かべて答える。


「ビルファ、あまりやり過ぎないようにね」


 彼は、ビルファが流石に殺したりはしない事は理解しているが、念のため彼に伝えとく。


「グハハハ! お前は相変わらず優しいな! 気をつけるぜ!!」


 ビルファは、リーダーの少年が倒れ、そこで散乱している椅子を念力魔法で大量に持ち上げ、3人へ投げつける。


 調理室から悲鳴が鳴り響いた。

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