第4話

その猫の本当の名前はミーヤ。


ミーヤには誰もが、気軽に色々な相談を持ちかけてくる。


そして、そのほとんどを解決して帰る。


そして、いつもミーヤは感謝されていた。


ほどなく、一人の30代くらいのスーツ姿の男がミーヤの傍に来て、地べたに座り込んだ。

「お、今日も生きてたか?

ねこ吉は恋してるか?」

『にゃー』


「そうか、おまえも悩んでるんだな。

俺も相当悩んでる。

同じ職場だからな。

うまくいかないとすっごく気まずくなるし、でも、うまくいったら、いったで、同僚とかにはバレないようにしなきゃだから、それもたいへんだしな」


『にゃー』

「そうだよな。

どうして、同じ職場のコなんかに惚れたんだろうな。

でも、しょうがないよな、好きなものは好きだから」


『にゃー』

「ありがとう。

よくわかってくれるな俺の気持ち。

やっぱり、このまま考えてても仕方ないよな。

思い切って行動あるのみ!」


『にゃー』

「だよな。

もし、うまくいかなきゃ、転勤願いでも出すさ。

でもな。

実は彼女わりとこの近くに住んでんだよ。

どっか、外で偶然会ったりすれば、もっと自然に話できるかもなんだけどな」


『にゃー』

「えー、それは無理。

いくらなんでも彼女の家を探すなんて、そんなストーカーまがいのことは出来ないよ」


『にゃー』

「あ、そうか、そこまででなくても駅で待ち伏せして偶然を装って通勤を一緒にするとか、そういう手はあるな。 

確かに。

いいこと言うな、ねこ吉は」


『にゃー』

「よし、明日早速試してみるよ。

ありがと。

今度、うまく行ったら彼女と会いに来るからな」


そういうと男はミーヤをひとなでするとスクッと立ち上がり、つかつかと歩いていった。


残された猫は、黙って男を見送った。




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