seventeen。

高林くん



今日、早紀の結婚式なんだよ。


お腹にはカワイイ赤ちゃんもいるんだよ。


これから、花嫁の早紀に会いに行くよ。


きっとキレイな花嫁さんだよね。



そしてね。


私も、今日とっても幸せなことがあったんだよ。


聖也くん、っていうとってもステキな人と恋人同士になれたの。




……10年前。


誰もいない放課後の教室でだったよね、私と高林くんが出会ったのは。


人見知りで、男の子と話すのも苦手な私だったけど。


なぜか高林くんとは楽しく話ができたよね。


あれが。


本当に真剣に人を好きになった、私にとっての初めての恋だったのかもしれないな。


高林くん。


ステキな想い出をありがとう。



17歳。



一生忘れられない、大切な特別な時間。


本当にありがとう。


みんなもきっと同じ気持ちだと思う。


想い出があるって、とっても大切なことだよね。


私、これからもいっぱいいっぱい想い出つくるよ。


大切な人達と一緒に。


高林くんのぶんまで、生きるから。



そして、また10年後。


今の私を振り返った時、楽しくてステキな想い出がいっぱいいっぱいあるように。


大切に生きていくよ。



見上げた空からは、いつしか小さな粉雪がフワフワのボタン雪に変わっていた。


……キレイ。


花みたい。


「……キレイだね」


私の言葉に、聖也くんも空を見上げる。


「ホントだ。キレイだな……」


そして、しばらく黙って空を見上げていた聖也くんが。


「ーーーよしっ。そろそろ行くか、かおり姫」


そう言って、笑顔ですっと手を差し出した。


「かおり姫ー?」


聖也くんってば、王子様みたいな真似して私の手を取るんだもん。


おかしくてまた笑っちゃった。


なんか不思議。


さっきまでスピーチのことで緊張して頭がいっぱいだったのに。


なんだかその緊張がやわらいだみたい。


なんか、うまくやれそうな気がしてきたよ。


聖也くんのおかげだね。


そう思いながら、彼を見ると。


優しい瞳と目が合った。


なんだか、恥ずかしくて照れくさくて、ドキドキしちゃうけど。


すごく、嬉しい。


心があったかいーーーー。




あの日。


高林くんがくれた、あのブルーのハンカチは、今でも私の大切な想い出。


静かにそっと、クローゼットの箱の中にしまってある。


いつか……もっと月日が流れて。


聖也くんとあったかいお茶でも飲みながら、いろいろ昔のことを話して懐かしむ時がきたら。


聞いてみたいな。


聖也くんは、どんな17歳だったのかなって。


どんな青春時代を過ごしてきたのかなって。


そして、私も教えてあげたい。


大切な仲間に出会えたこと。


そして、かけがえのない、特別な時間を過ごしてきたことを。



青春。



私の、seventeenーーーーーー。




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