17歳の誕生日
「ねぇ、お姉ちゃん。どうしてN高ってあんなにクラスの数多いんだろう……」
私は、ソファで隣に座っているお姉ちゃんに話しかけた。
お姉ちゃんは大学2年生。
私とは真逆な性格で、かなり社交的。
「はぁ?なによ、いきなり」
ポカンと聞き返す姉。
「A、B、C、D、E、F、G、H、I、J、K……。11クラス」
クッションを抱えたまま、指を折って数えてみた。
それでいて1クラス大体40人。
ざっと計算しても軽く400人超え。
これだけ人がいれば、なかなかそう簡単には会えないよね……。
この前、一度だけ廊下の遠くから、後ろ姿が彼っぽい人を見かけたんだけど……。
ちがう人かもしれないし。
それに……もうきっと、私の顔なんて忘れちゃってるんだろうなぁ。
万が一会えたとしても、きっと気づかれないんだろうなぁ……。
「はぁ……ーーー」
すく。
私は立ち上がると、ポテポテと2階の自分の部屋へと上がっていった。
「かおりー?」
お姉ちゃんが、階段の下から覗き込んでいた。
パタンーーー。
部屋のドアを閉める。
ザァァ……。
窓の外は、灰色の雨。
雨のせいかな。
今日はヤケに気分がブルーだよ。
明日は私の誕生日だっていうのにーーー。
ひょっとしたら、あの人は早紀の好きな高林くんの友達で……。
もしかしたら、明日のカラオケにも来るかもしれない。
……なんて考えてたけど。
そんな都合のいい偶然、ありっこない。
そんなうまくいくわけがないんだよね。
明日は、私の17歳の誕生日……。
新しい扉、開けるのかな……。
窓の外に目を移す。
降りしきる雨。
まるで、私の今までの淡い期待をキレイに洗い流してるように見えた。
「……セブンティーン、か……ーーー」
私は、小さな声でつぶやいた。
ピチチチ……。
見事なまでの晴天。
「おーーーっす!」
眩しそうに日差しを手でよけながら早紀が駆けてくる。
そして。
「あれっ?かおりなんか雰囲気ちがう!髪、下ろしてるーーーっ」
早紀が、ビックリしながら私の髪を触った。
「えへへ……。今日から17歳だから。ちょっとだけイメチェンしてみようかなーなんて……。変、じゃない?」
ちょっと心配。
「変なわけないじゃんっ。すっごいカワイイ!おさげもカワイイけど、こっちの方が絶対いいよ!かおりカワイイー」
早紀が目をキラキラさせながら、私の周りをゆっくり回った。
「あ、ありがとう」
ちょっと恥ずかしいけど、嬉しい。
結局。
天気がいいだけで元気になちゃうなんて。
私も案外単純だな。
そして、やっぱり自分の気持ちにはウソはつけないんだな、と思った。
どんなに自分に言い聞かせても、諦めようとしても。
心の奥の奥の、ホントに見えない奥底で期待してるんだ。
セブンティーンの奇跡をーーーー。
ただの夢かもしれない。
きっと、夢が壊れてがっかりしちゃうかもしれない。
だけど……だけどね。
それでも、ひょっとしたら……ホントにひょっとしたら。
また、あの人に会えるかもしれない……って。
17歳の誕生日の今日。
また、あの人に会えるかもしれない……って。
そう考えるだけで、ドキドキして。
すごく、幸せな気持ちになれちゃうんだ。
自分でも不思議なんだけど。
ーーーでも、こんな気持ちになるなんて。
私、名前も知らない、〝彼〟のことが。
好き……なのかな……ーーーーー。
かぁぁ。
自分の言葉に顔が熱くなる。
やだ、な、なに言ってんの?私ってば。
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