また、会いたい……

「早紀。そ、それはちょっと……」


私がタジタジしていると。


「かおり。たまにはいろんな人との交流も楽しもうよ。大事大事!同じ高校、同じ学年の仲間なんだし。かおりにも楽しい男友達ができるんだし。いいことじゃん!」


「い、いいよ……私、男友達いらない……。私には無理……」」


そろそろと首をすぼめると。


「まーたそんなこと言う。あのさ、かおり。誰も恋しろ、つき合えとかって言ってるわけじゃないんだからさー。しゃべってみたら、楽しいじゃんいいヤツらじゃんってきっと思うから。それに、男子でも女子でも友達になるってすごくいいことじゃん!」


と、早紀。


「……う、うん……。それはまぁ……」


「男友達もなかなかいいよ。スッキリさっぱりしてて」


早紀がにっと笑う。



そりゃあ……ね。


私だって、いろんな人と会っていろんな人と知り合って、そこから友達になることはすごくいいことだと思う。


友達の輪が広がるのだって、すごくステキなことだよね。


でも……。


「でも……。私なんて、いてもつまらないだろうし……。その人達もきっと……」


「かおり」


早紀が、私の言葉をさえぎった。


「もっと自分に自信を持って。かおりはつまらなくなんてないっ。私、一緒にいてすごい楽しいもん。私はこのとおりチャカチャカ!っとした性格だから、かおりのそのおっとり穏やかな空気感が逆に居心地がいい。なんか癒されるっていうかホッとするっていうかさ。みんなそう思ってるよ」


みんなーーー。


ふっと私を横目で見る岡本さんの顔が浮かんだ。


「……ありがとう、早紀。そんな風に言ってくれるのは早紀くらいだよ」


「そんなことないから。かおりのことカワイイってみんなホントに言ってるんだから」


ええっ。


「と、とんでもないっ」


かぁぁ。


顔が赤くなる。


「とんでもなくないのっ。そうなのっ。だから、『私なんて……』なんてもう言わない。OK?」


「……は、はい」


「よし。じゃあみんなで集まろう!!」


「え。そ、それとこれとは……また別というか……。なんというか……」


「かおりの記念すべき17歳の誕生日なんだよ?ちょっと冒険しようよ。気楽な気持ちでみんなで楽しく遊んでみようよ。今まであんまり関わってこなかった『男子』ともさ、仲良くなれるいいきっかけになると思うよ」



男子ーーーーーーー。



ふと、あの彼の笑顔が浮かんだ。


キラキラ澄んだ少年のような瞳。


あんなに男の人が苦手な私が、初めて2人きりでしゃべれた人。


2人で笑った、あの人。


もう一度、会いたいな……ーーー。


そして、名前を知りたい。


それだけでいいから。


知りたいーーーーー。



あの日から。


私は、あの人のことがなんだか忘れられないの。


また、会いたいなぁ……ーーーー。



「かおり?どうしたの?ボーッとしちゃって」


「へ?……え、あ、ああ……なんでもない」


慌てて笑ってごまかしたら。


「あ……。ひょっとしてぇ……」


早紀がニヤリとしながらずいっと顔を寄せてきた。


「好きな人、できた?でもって、その人のこと考えてたんでしょー」


ドキッ。


「いいい、いないよっ。そ、そ、そんな人っ」


絶対、顔赤い……。


思わずうつむく。


「正直者ーっ」


ゲラゲラと笑う早紀。


「いや、ちがうのっ……。あのね……」


だって、だって。


別に私は、好きとかじゃなくて。


そんなのよくわかんなくて……。


ただ、もう一度会いたいな……って。


ただ、それだけなの……ーーー。



「ほら。なんか恋してる顔してるぅー」


ちょんと指で鼻をつつかれた。


こ、こ、こ、恋!!


「ち、ち、ちがうの!!そ、そんなんじゃなくてっ……」


動揺する私。


ニコニコ顔の早紀。


「さ、早紀。だからそれはね。別に好きとかじゃなくて、ただ……なんとなくいい人だったな……って」


ドキドキ鳴ってる私の胸。


「なるほど。で、もう一度会えたらいいなぁ……って?」


ドキッ。


「えっと……。ま。まぁ……そんなカンジかな……。で、でもそれだけでっ……」


「それだけ、ねぇー」


早紀がニヤッと私を見る。


「そ、それだけ……!」


「ふーん。かおり。いいこと教えてあげよっか。世間ではそういう気持ちを〝恋〟と呼ぶんだよ」


ドキン!!


こ、こ、こ、こ……。


こ……ーーー。


顔も耳もどんどん熱くなり、私は恥ずかしくてテーブルに鼻がつくぐらい顔を沈めた。


「ちなみに、その人って。この前のサッカーの地区大会の時に、足をくじいたかおりを保健室まで連れてってくれた人ーーーでしょ」



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