誕生日の計画

案の定、早紀はあの他校のサッカー部の人に告白されていました。



なんと、ひと目惚れだったんだって。


でも、早紀は告白されてプンプン怒ってるの。


「いきなり、『ちょっとこっちに来てもらってもいいですか?』とか言って。人いない場所に連れていかれてさ!せっかく試合いいとこだったのにっ。しかもソイツ、自分から呼び出しといてなんかウジウジしちゃって。なかなか戻れなくて、試合のラスト見逃しちゃったよっ」


って。


早紀らしくて笑っちゃったよ。


でも、地区大会の最中に他校のサッカー部員にひと目惚れされて告白されちゃうなんて。


やっぱり早紀はすごい。


早紀はジョーダンじゃないってご立腹だったけど。


そんなカンジで、早紀にも私にも、ちょっとしたハプニングがあった1日だったけど。


その日以来、早紀の好きな高林くんを見かける機会もなく。


……あの、保健室での彼を見かけることもなく。


淡々と時間だけが過ぎ。


気がつけば、カレンダーは私の誕生日が来る10月になっていた。



「ーーーあ、そういえば。10日ってかおりの誕生日じゃん」



雑誌を読んでいた早紀が、思い出したように顔を上げた。


「うん。もうすぐ17歳」


セブンティーン……か。


「ねぇ。かおりの誕生日、学校休みじゃん。パーッと遊ぼうよっ。カラオケでも行こっか!」


早紀が嬉しそうに身を乗り出した。


近くにいた知里ちゃんも。


「いいねぇ!私も混ぜてよ。もぉさ、みんなでパーーーッと騒いじゃおうよ。うちらの他にも何人か呼んで!もうすぐテストも始まっちゃうしさ」


「だねっ。景気づけに昼間っから遊んじゃおう」


「かおり、どうっ?」


ノリノリの知里ちゃん。


「う、うん。みんながいいなら……」


「じゃ、決定!かおりの誕生日の体育の日は、みんなでカラオケパーティーだぁ!」



と、いうわけで。


トントン拍子にことが決まっていき。


私の誕生日は、急きょ早紀の提案でみんなでカラオケパーティーをすることになったんだ。



そして、その日の帰り道。


私と早紀は、なんか小腹空いたねぇと、駅前のマックに寄ったの。



「ーーーねぇ、早紀。私歌わなくてもいい……?音痴だし、恥ずかしいし……」


「なーに言ってんの。ずっと前に2人でカラオケ行った時、かおりうまかったじゃん。ま、かおりは1曲歌っただけで私ばっかり歌ってたけど。でも、次はかおりに歌いまくってもらうからねっ。なんたってその日の主役はかおりなんだから」


「えー」


人が歌ってるのを聴くのは大好きなんだけど。


みんなの前で自分が歌うのって、やっぱりちょっと……だいぶ恥ずかしい。


でも……早紀ちゃん以外の友達とカラオケに行くのなんて初めてだから、すごく楽しみだな。


「かおり、あと誰呼ぶ?クラスの割と仲のいい女子何人か誘ってみようよ。ん……ちょっと待って」


早紀が、なにかひらいめいたように嬉しそうに顔を上げた。


「正吾とか呼んじゃおうか!」


「え、ええっ?」


正吾って……早紀の好きな高林くん?


「かおりに紹介したいしさ。だって、学校じゃなかなか会わないし。ね、どぉ?」


どぉ……って言われても……。


「で、でも……」


私、しゃべったこともないし……当然だけど。


それに、そんな初めて会う人といいなりカラオケだなんて。


「わ、私、そういうの苦手かも……。知らない男の人とカラオケだなんて……」


やっぱり無理だよー。


「だいじょーぶっ。正吾は気さくないいヤツだから。賑やかだし。きっとすぐ慣れるよ。それに、絶対楽しいから!正吾の仲いい友達も呼んじゃおうっ」


「えええっ⁉︎」


友達までっ⁉︎



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