彼といるとーーーーーー

「……オレの顔になんかついてる?」


「え?あっ……。ご、ごめんなさいっ」


たちまちプチンとスイッチが入って我に返り、私は慌てて目をそらした。


心臓がバクバクいい出した。


もう、緊張の嵐で。


今すぐにでもここから抜け出したかった。



「足、大丈夫か?」


彼は、私が座っている目の前に先生のイスを持ってきてストンと座った。


「は、はい。もう大丈夫ですっ」


ドッキン ドッキン ドッキン。


き、緊張しちゃうので、そんな目の前にいられると非常に困るのですが……。


内心あたふたしながら黙ってうつむいていると。


「ごめんな。ドアによっかかってるなんて知らなくてさ」


すまなそうにくしゃっと髪をかき上げる。


「い、いえっ。私が悪いんです!ドアは開けたり閉めたりするモノであって、か、壁ではないのに、あんなところにもたれかかっていたから……」


ホントに私のバカ!


「あんた……1年?」


カク。


「2年です……。一応」


1年生に見えるのね、私。


同じ学年なんだけどなぁ。


存在感ないんだなぁ……。


「え、2年?じゃあ、オレと同じじゃん。あ、そうだよな。2年の教室にいたもんな」


ちょっと驚いた様子だったけど、すぐに納得したようにうなずいて。


「じゃ、その敬語はなしっ」


彼が笑顔で言った。


「え。あ……は、はい」


「はいじゃなくて、〝うん〟!」


コツン。


おでこをこづかれた。


ドッキン!


「は……じゃなくて、う、うん……」



ひゃあーーーっ。


お、おでこ!


し、心臓が飛び出そう。


だけど、そんな緊張してる最中さなか


私は自分でもビックリするくらい思い切って口を開いて、彼に話しかけたんだ。



「あ、あのっ。サッカーの試合……ーーー。どう……なったのかな……って」


「ああ。ーーーっていうか。なに、おまえ観てなかったの?学校にいたのに?」


じろり。


ギク。


「あ、ご、ごめんなさいっ。途中までっていうか、かなり最後の方まで観てたんだけど。その……」


「帰りのホームルームで言われただろ?放課後はサッカーの地区大会があり、我が校のサッカー部が大活躍するので、1秒たりとも見逃さずに応援しましょうって」


「え……言われてない」


「言われてないな」


そう言って、イタズラっぽい笑顔で笑う彼。


そんな姿に、カチコチに緊張していた私の心もほんの少しほぐれて、自然と笑顔になった。


「ラスト5分、すげー接戦だったんだけど、そこでロングシュート!!最後のゴール、オレが決めたんだぜ」


そう話す彼の瞳は、とても生き生きしていて。


とてもキラキラしていた。


背も高くて、大人っぽいキレイな顔立ちも、見るからに立派な高校生だけど。


その澄んだ瞳は、なんだかやんちゃな少年のようなカンジで。


楽しそうに夢中で試合の話をしてくれる彼を見ているうちに、不思議と気持ちがやわらいで。


気がつくと、私から笑みがこぼれていた。



「ーーーふふふ」



「なんだよ。オレ、なんか変なこと言った?」


急に静かに笑い出した私を見て、彼がキョトンとしてる。


「あ、ちがうのっ。そうじゃなくて。ただ……すごく嬉しそうで、楽しそうだから。なんか私も嬉しいっていうか……楽しいっていうか。そんな気分になって……」



不思議。


すっごくドキンドキンいってたのに。


緊張してたハズなのに。


なんだか楽しい。


なんだかすごく、嬉しいの。





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