大キライ
あれは、絶対告白だよね。
OKしたのかな、それともNOかな。
……OKはないかな。
早紀ちゃんはきっと、ホントに好きな人じゃないとつき合ったりしないと思うから……。
「ーーーねぇねぇっ。早紀、ホントに好きな人いないのかな」
知里ちゃんが、ちょっと企んだような笑顔でまた身を乗り出してきた。
「え」
「なんかいそうな気しない?でも、いたとしても、早紀って誰にも言わないでこっそり秘密にしてそうな感じもするよねー。まぁ、よほど仲いい友達にだけは言うかもしれないけど」
え……。
私、早紀ちゃんからそういうこと聞いたことない。
でも、それは早紀ちゃんに好きな人がいないから、そういう話をしなかっただけだと思ってたけど。
ちがうのかな……。
私には、内緒なのかな……。
「あたしの予想だと、やっぱ早紀だって好きな人くらいはいるだろう!うん、いる!絶対。誰だぁー?」
知里ちゃんの楽しそうな声。
「ね、かおりけっこう早紀と一緒にいるじゃん?『あ、早紀はひょっとしてこの人のこと好きなのかも……』みたいなさ!そういうのない⁉︎」
「……ううん。わかんないなぁ」
……わかんないよ。
私、鈍いし。
そういうの全然気づかないし……。
「そっかー。仲良しのかおりでもわかんないか。ってことは、ホントに好きな人いないのかなー」
知里ちゃんが腕を組んで首をかしげている。
知里ちゃんの言葉に、なぜだか胸が少しざわっとするような……ズキンとするような……。
そんな変な感覚が私の中をかすめた。
ガラッ。
「あっ。早紀!」
早紀ちゃんが戻ってきた。
「ねぇねえ、やっぱりそうだったんでしょ⁉︎」
知里ちゃんが、早紀ちゃんの腕をぐいぐい引っ張って席に座らせる。
「うん。そうでした」
や、やっぱり告白だったんだね、早紀ちゃん。
ドキン ドキン ドキン。
「きゃーっ。やっぱり!で?で?なんて返事したの?」
知里ちゃんが興奮しながら早紀ちゃんに詰め寄る。
「ーーーきっぱりお断り」
早紀ちゃんが静かな口調で言った。
そっか、きっぱりお断りか……。
そうだよね。
早紀ちゃんは、きっとホントに好きな人じゃないとつき合わないと思う。
「えーーー。断っちゃったのぉ?桐山くん、カッコイイのにー。さては……他に誰か好きな人とかいるんでしょっ。白状しろー」
知里ちゃんの言葉に。
「好きな人はいないよ。今は誰ともつき合う気がしないの。だから『ごめんなさい』」
早紀ちゃんがサラッと答えた。
……本当なのかな。
「早紀ちゃん……本……ーーー」
〝本当に好きな人いないの?〟
一瞬、思わず口から出かけたけど、私は慌ててその言葉を呑み込んだ。
私、なに聞こうとしてんだろう。
なんか友達の腹探ってるみたいでイヤだよ。
「え?なに?かおり」
笑顔の早紀ちゃん。
「あ、う、ううんっ。ーーーなんでもない」
私も笑顔で返す。
「そ?げっ。次数学だぁ。イヤだなぁ」
いつもの早紀ちゃん。
そんな早紀ちゃんの横で、私はなんだかなんとも言えない気持ちになっていた。
さっきの知里ちゃんの言葉が、妙に胸に引っかかっていた。
ーーーよほど仲いい友達にだけは言うかもしれないけどーーー
ーーーかおりでもわかんないかーーーー
知里ちゃんは深い意味で言ったんじゃないってことはわかってる。
でも……ふと、不安になってしまったんだ。
私は、早紀ちゃんのことが大好きで、一緒にいると楽しくて、いろんなこと話せて、すごく仲良しな人で。
私は、早紀ちゃんを親友……心友だと思って一緒にいたんだけど。
もしかしたら、そう思ってるのは私だけなのかな……って。
私は、もし自分に好きな人ができたらきっと真っ先に早紀ちゃんに話して相談に乗ってもらうと思う。
だけど。
もし、早紀ちゃんに好きな人がいたとしたら。
早紀ちゃんは私に打ち明けてくれるのかな……。
早紀ちゃんに好きな人がいようがいまいが、それを私に話そうが話すまいが。
それは早紀ちゃんの自由。
それもわかってる。
だけど……ーーーー。
知里ちゃんのなにげないひと言で、こんなに不安になっていろいろ考えてしまう自分がすごくイヤ。
大キライーーーーー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます