告白!!

「かおりーーーーーーっ」



ヒューン。


高いネットを越えて、白いバレーボールが飛んできた。


「えっ」


ど、どうしよう。


あたふたしながら、とっさにレシーブの体勢に入ってみたけど……。


バシッ。


構えた腕は虚しくも活躍せず。


バレーボールは、私の顔面を直撃した。


ぶ……。


い、痛い……。



そう。


なにを隠そう、私はめちゃくちゃ運動音痴でもあるのです。


「かおりっ。大丈夫⁉︎」


同じチームの人達が駆け寄ってきた。



今は、体育の時間。


女子と男子に分かれて、2クラス合同でやるんだ。


それで今日は、私のクラスD組と隣のクラスのC組とで、バレーの試合をしていたんだけど。


運動音痴の私はこのザマ。


顔面レシーブで、みんなに笑われちゃった。


「ご、ごめん……。大丈夫……」


へへっと笑って見せたけど。


痛いよぉ。


鼻、つぶれるかと思ったよぉ。


「次は顔じゃなくて腕で受けてよ、かおり」


「……だね」


笑い合う私達。


私のことを〝かおり〟って呼んでくれるクラスの女子はけっこういるんだ。


たぶんそれは早紀ちゃんのおかげ。


早紀ちゃんがかおり、かおりって呼んでくれるから、みんなも同じように呼んでくれてるだけ。


そうじゃなきゃ、私なんて用がある時のみに普通に〝川村さん〟って呼ばれるような地味な子だから。


もちろん、私のことを〝川村さん〟って呼ぶ人達もいるけど。



「ーーーこれだもん。ちゃんとやってよね」


ボソッと聞こえてきた言葉に私は振り向いた。


やっぱり。


岡本おかもとさん、だーーー。


キッとひっつめたポニーテールのせいでつり上がったその目は、明らかに私の方をにらんでいた。


かなりイライラしてるみたい。


「ご……ごめんね、ごめんね」


私は、慌てて目をそらして立ち上がった。



岡本さんグループは、私のことをかなりうざったく思ってるらしいの。


トロトロしてるし、ドジだし。


なにかあるとボソッと言われたり、冷たい視線を送られる。


その度に、すごく悲しい気持ちになる。


本当はすごくイヤだ。


でも。


こうやって、いつもオドオドこそこそなにも言えない自分がいちばんイヤなの。





「かおり、顔面レシーブの方は大丈夫ー?」


お弁当タイム。


早紀ちゃんが、ニヤニヤしながら私の顔を覗き込んできた。


「……もぉー。大丈夫だってば。せっかくちょっと忘れてたのにー」


「いやー。できることならもう1回見たかったわ。見事なまでのあの顔面レシーブ!コントみたいで最高だったよ。さすが私の心の友!笑いを心得ている。笑いは大事だ」


卵焼きを頰ばりながら、早紀ちゃんがケタケタ笑ってる。


「痛いですー。もう1回なんてやりませんっ」


と、言いつつ早紀ちゃんの笑い顔につられて私も笑っちゃった。


でも、早紀ちゃんがなにげなく言った『心の友』って言葉が、なんだかすごく嬉しかった。



「早紀ーーーっ」


後ろのドアから、クラスメートの知里ちさとちゃんが興奮した様子で教室に駆け込んできた。


どうしたんだろう。


そんなに慌てて。


「なによ、知里。憧れの有沢ありさわ先輩と話しでもできたの?」


早紀ちゃんが言うと。


「ちがうよわよ、残念ながら。それより、早紀ってばやるじゃん!もぉー」


ニヤニヤしながら、知里ちゃんが早紀ちゃんを肘でつつく。


「なにが?」


「あのねあのねっ。F組の桐山きりやまくんが、お昼食べ終わったら屋上行く階段のとこに来てだって!待ってるからって!!」


早紀ちゃんの耳元で、かなり興奮しながら話す知里ちゃん。


「なんで?」


あっけらかんとしている早紀ちゃん。


「なんでって。なにすっとぼけたこと言ってんのよっ。これはどう考えたって愛の告白しかないでしょっ」


えっ。



こ、ここ、告白ーーーっ⁉︎



当の本人を差し置いて、私ってばひとりで真っ赤になってドキドキしちゃったよ。


「さ、早紀ちゃん、すごい……」


告白だなんて、告白だなんてっ。


「もぉ。なによ、かおりまで。そんなのわかんないじゃん。人には言いにくい相談ごとや頼みごとかもしれないじゃん」


早紀ちゃんはそう言って平然と野菜ジュースを飲んでいるけど。


私も、それはやっぱり愛の告白だと思うよ、早紀ちゃんっ。


ドキドキドキ。


早紀ちゃん、すごい!






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