第23話 私の幼なじみは、恋愛対象外……のはず。

「みなせんってさ、関谷くんにドキドキしたりしないの?」

「ゴホッ」


マッツーにそう聞かれて、私は飲んでいたタピオカにむせてしまった。


「えっ、ちょ、大丈夫みなせん?」

「大丈夫じゃないよー。タピオカ、噛まずに飲み込んじゃったじゃん!」


ごめーん、というマッツーの言葉を聞きながら、ゴホゴホと咳き込む。


そう、今日はマッツーと2人で放課後に今話題のタピオカ屋さんに来ているのだ。

いつもなら、嫌がる関谷を無理やり引っ張って連れていくのだが、いつも部活を忙しくしているマッツーが、今日はオフだと言うので2人で来たのである。


「だって、いっつも関谷くんと一緒にいるじゃん。少しくらいあるでしょ、ドキドキすること!」

「そりゃ……あるよ、ありますよ」

「え、あるんだ……」

「何その反応!聞いてきたのそっちじゃん!!」

「いや、そうなんだけどさ、素直にあるって言わないと思ってたから……で、どんな時にドキドキするの?」

「どんな時って、そりゃー、あいつは、そこそこにはカッコイイし……でも、ドキドキするって言っても、ときどきだし、! 」

「そのドキドキがさ、恋愛になったりしないわけ?」

「恋愛って……」


あいつの事を恋愛対象として見たことは全然なかった。確かにあいつは、一般的に見ればイケメンの部類に入るかもしれないけど、そんなこと、考えもしなかった。ドキドキすることはあっても、それを恋愛のドキドキとは思ってなかった……。


「自分では違うと思ってても、意外と気づいてないだけっていうのあると思うなー」


マッツーの言葉にビクッとする。


気づいてないだけ、か。


もしかしたら私は、思わないようにしていただけなのかもしれない。


このドキドキが、恋愛などではないと。


そう、思いたかったのかもしれない。



私は残っているタピオカを吸い上げた。

タピオカは、いつもと同じく美味しかった。

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