27枚目 雨の日のにおい

「雨、止まないねぇ。」


 外はざあざあと雨が振り、駅から遠いこのあたりは人通りも少なく、お店にはお客さんが現れません。


「そろそろ梅雨なんだなぁ。自分は夏は好きだけど、この時期は嫌だな。」


「そう?あたしは結構好きだぞ、雨が降ると土や緑のにおいがするんだ。」


「部屋の中で聴く雨音もいいよね~、良質なドローンみたいで。」


「それで思い出したけれど、部屋で聴く雨音は子宮内で聴いてた音に似ているらしいわね。」


 雨の日、レコード屋で飲む缶コーヒーはなんだかいつもより染みるようで美味しい。


「あれ、何かけてるスか?」


「ああ、これはRhyeの"Blood"だ。曲は"Waste"だな。」


 雨音に寄り添うような静かなトラックにさみしげで孤独感を感じる美しいボーカル。


「これはすごい良い気がするよ!」


「ああ、買うぜ!自分これ買います!」


「お、じゃあ包むからちょっと待ってろ。」


「いや、このまま再生しておいてもらってもいいっスか。なんかこういう音楽だと雨の日も良いなぁとか思えるぜ。」


「ゲンキンだなケイは。」


「この人はどんな人なんですか?」


「ああ、Rhyeか?カナダ人のMichael Miloshとデンマーク人のRobin Hannibalによるユニットとしてスタートしたんだ。2017年にRobin Hannibalは脱退して、現在ではMichael Miloshのプロジェクトとなっている。このアルバムはそんなRhyeの2枚目のアルバムだな。ライブバンドの面々と一緒にレコーディングに当たったらしい。」


「検索したわ。2010年に活動を開始して1stは2013年に出しているわね。」


「これはわたしも好きだよ~。今度貸してね、ケイちゃん!」


「おうよ!いいぜ~。」


☆ ☆ ☆


Rhye - Blood - 2018

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る