　ヒメちゃん、もしかしておじさんのことが好きなんじゃ……。

「おじさん！女子高生は犯罪だよ！」

「いや、だから俺まだ三十代になってないんだが。この場合ってお兄さんじゃないのか！？」

「何言ってるんだテンコ？」

「私も何か買おうかな～、あ、これなんて良いかも。ジャケがかわいいわ。」

「いいの選ぶじゃねえか、ガキ。Melt Yourself Downの"Melt Yourself Down"、パワフルなアルバムだぞ。」

　面倒くさそうなおじさんに頼んで流してもらうと、腰に来るようなドラム、パーカッションにブロウの効きまくったバリトンサックス、ボーカルのアジテーションにテンションが臨界突破するダンサブルなジャズでした。

「どわー、"Fix My Life"って曲、これめちゃくちゃ踊れるじゃん！やべー！」

「ファンク、アフロ、パンクにシリアっぽい異国情緒のあるメロディーとか、このごちゃまぜ感は凄いわね。」

「これはインディー・ロック好きの私もニコニコだよ～！」

「おまえらこういう音楽聴いてて学校で浮いたりしねえのか？」

「うーん、わかんない。仲いい子はたくさんいるよ、音楽がなくても仲よくなれるし。でもやっぱり同じように好きなものに一直線になってる仲間は一緒にいて楽しいな～。」

「あたしはちょっと浮いてる。音楽以外の趣味もあんまり人と合わないからな。まあそれでいい、あたしはこいつらがいるし。」

「自分はこういう気質だから楽しくやってるぜ。」

「ケイはムードメーカーだものね。私もなんだかんだ人に相談されることは多いわ。」

「ふーん、結構うまくやってるんだな。安心したわ。」

「おい、あたしは浮いてるって言ったぞ！」

「それでもいじめられてるわけでもねえし、仲のいい仲間もいるわけだろ？十分じゃねえか。」

「あ、うん。そうだな。そのとおりだな。うん。」

　ちょっと気を引きたいヒメちゃんなのでした。

☆　☆　☆

Melt Yourself Down - Melt Yourself Down - 2013

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