24枚目 雨のイヌイヌレコード
「お、ガキども、来やがったな。」
イヌイヌレコードでおじさんはのんびりと缶コーヒーを飲みながら迎えてくれました。店内のお客さんは私達だけのようです。
「嫌な雨だなぁ。客も来やしねえ。」
「でも自分は雨の日好きだぜ。この店で割引になるからな!」
そうです、イヌイヌレコードは学生割引の他に、雨雪の日はレイニーサービスデーとなり、全商品が100円引きになるのでした。
「めざといガキンチョどもだよ、まったく。ま、ゆっくりしていけ。」
お店にはノイジーでハードコアなオケにキュートな女性ボーカルが乗った音楽が流れています。
「あ、Deerhoofだ~。この曲は"The Perfect Me"?」
「ああ、おまえは好きそうだなこれ。ライブも凄いんだぞ、ドラムなんか椅子がビールケースでさ、すごいパワフルなんだ。ノイズバンドっぽいけどチャイルディッシュでそれがまたいいよな。」
「うん、好きです!あ、"+81"だ、かわいい~!このアルバム"Friend Opportunity"ですっけ、持ってないんだよな~。買おうかな~。」
「この作品はDeerhoofの出世作だと思うぞ。そう言えばボーカルのSatomiはStephen MalkmusやKim Gordonなんかと詩の会をやってるとかなんとか。うろ覚えだが。」
「へえ、面白いじゃん。ドラムめっちゃ暴れてる。ウケる。」
「ノイズ要素のあるバンド特有の暗さがないのがいいわね。」
おじさんは感心したように頭を掻くと言いました。
「なんかいいなおまえら。ジャンル違いの音楽も楽しそうにすんなり受け入れちまう。」
「普通じゃないのか?」
「どーだろうな。若いと知らねえこと多いだろ?俺はそれがいいと思っててさ、凝り固まってなくて、ジャンルやメジャーとマイナーとか分け隔てなく吸収してさ。」
私たちは顔を合わせておじさんの話を聞きます。
「例えば俺なんかはよ、色々知っていくうちにこのジャンルは興味ないとか、こいつは所属しているシーンがダサいとか、このレーベルはイケてるからこいつもそうだろうとか、あとは体裁的な問題で音を聴いたり聴かなかったり、音楽そのものとは関係のないところで勝手に判断するようになったりするんだよ。それがすげーつまんねーの。」
「こだわりを持つことは必ずしも悪いことじゃないと思うわ。」
「好きなものを好きに楽しめばいいよ~!」
「いいものはいいんじゃないのか?」
「自分と友人が楽しんで聴ける音楽って最高だよな。」
「ははは、ガキども、おまえらのそういうところいいと思うわ。」
☆ ☆ ☆
Deerhoof - Friend Opportunity - 2007
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