23枚目 仲直り
結局お昼休みになるまで私はケイちゃんに話しかけられないでいました。
「あれ、なんだ。まだケイと仲直りしてないのか?」
「だ、だって……。」
「あ、ほらケイ~、ちょっと来て~!」
「え、え、心の準備が!あわわ!」
ケイちゃんが仏頂面で来ました。
「……なんだよ。」
「ほら、テンコ。」
「あの、昨日はごめんなさい、私、知らないのに素直に教えてって言えなくて。」
「……いや、自分も、その、悪かった。よくある間違いなんだよ、ヒップ・ホップに興味がないやつがさ、よくするの。その間違い。だから、その、寂しかったんだよ。テンコには知っておいて貰いたくて。あ~もう!とにかくごめん!」
「じゃあ、めでたしめでたしね。お昼食べましょう!」
「は~、茶番だったな。今日はケイ、あんたが曲選べよ。」
ということで、屋上でケイちゃんの選ぶ音楽を流しました。アコーディオンのさみしげな音にかすれたシブいラップが聴こえてきます。
「え、えっと、これはその、MF DoomとMadlib、どっち……?」
するとケイちゃんはニヤリと笑って答えます。
「これは、MF DoomとMadlibの二人によるプロジェクトMadvillainのアルバム、"Madvillainy"だぜ!」
「そ、そういうのもあるのか~!!」
私は感動してしまいました。
「あ、この"Raid"って曲いいわねー、ジャジーでかっこいいわ。私にも聴けそう。」
「Madlibはサンプルの引き出しの多さもさることながら、このアルバムでは一曲に数曲のサンプル、多ければ十曲以上のサンプリングを使っているらしい。それなのに混沌とならずにバチっと決まって聴けるのはMadlibの手腕だな。MF Doomの作品でもここまでのものは珍しいから、MF Doomファンにもこのアルバムは新鮮に聴こえたんじゃないかな。」
「いいアルバムだな。使ってるネタの幅のワリに統一感のある全体の雰囲気もあたしは好きだ。」
仲直りして食べるお弁当は賑やかで楽しかったです。
☆ ☆ ☆
Madvillain - Madvillainy - 2004
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