2枚目 電車の中でも

 ここCHIBA市はサイバーと綴りが似ているという理由で、新しい未来的なプロダクトデザインを積極的に導入する試みがなされています。


 例えばVRメガネとか、例えばブラシ部分だけ取り替えが可能な歯ブラシとか。私たちの学園でもデジタル標示の黒板などが導入されています。まあ、結局そうは言っても、私たちの生活は他の市の人たちと大して違いはないんですけどね。


 さて、私たちの放課後が始まります。街に出てCDやレコードをDIGディグる。お菓子を買って公園で戦利品を聴きあう。うーん、最高のひととき。


 電車に揺られながらCHIBA駅に向かう。


「駅に着くまでに聴く音楽を用意してきたぜ。」


「待ってました~!」


「お、さすがケイ、抜かりないわね。」


 みんながイヤホンやヘッドホンを装着する。


「2011年に出たJames Blakeの1stアルバム"James Blake"だぜ。」


「あ、気になってたけど聴いたことなかったんだ~。」


 音数を削ぎ落としたようなシンセサイザーの音に控えめのスネア、気持ちの良いキック。そこにR&B風の若々しくも切ないヴォーカルが乗る。


「ポスト・ダブステップの代表格って感じのやつなんだぜ。このアルバムを出した頃はまだ童貞で、曲も全体的に哀愁が漂っていて良いんだよな~。」


「一曲目の"Unluck"でこの作品の世界観への理解ができるのもいいところだな。」


「JBって言ったらJames Brownだったのに、私たちの世代だとJames Blakeのことだったりしそうよね。」


「ねえねえ、ヒメちゃん、首を横にブンブン振ってよ。」


「あ?まあいいけどさ。ブンブンブンブン……、これでいい?」


 首を振りまくるヒメちゃんをスマホで撮影する。


「あっははははは、貞子みたい!」


「バカにしてんのか!?」


「違う違う!スローシャッターにしてJames Blakeのジャケみたいにしたかったの!」


「面白そうなことしてんじゃん、みんなで撮ろうぜ!」


 そうして電車の中みんなで首を横にブンブン振って写真を撮り合ったのでした。


☆ ☆ ☆


James Blake - James Blake - 2011

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