DIGりガールズ!~女子高生による一口サイズのディスクレビュー物語~

柚木呂高

1枚目 ウィー・アー・DIGりガールズ!

 ここはCHIBA市立涅槃学園。私、法水典子のりみずてんこはこの学園に通う花の高校二年生。典子のりこと書いて「てんこ」と読みます。さらさらのミドルロングにくりくりの目が自慢です。


 キーンコーンカーンコーン。

 下校の時間、みんなが私の席に集まってきます。


「テンコ~、帰ろ~ぜ~。」


 彼女は同じクラスのケイちゃん、無造作のショートカットにニットキャップがかわいい元気な子です。


「や、テンコ、ケイ、今日も寄っていくわよね?」


 背の高くてお姉さんぽいワンレンロングの女の子は隣のクラスのサトちゃん、落ち着いてて大人な雰囲気。


「テンコ、いつも帰る準備するの、遅すぎだろ。」


 小さくて黒髪ぱっつんの眼鏡の子はヒメちゃん。ちょっと愛想が悪いけれど可愛らしい女の子。


「よっしゃ!放課後活動へ出発!」


 今日は晴天、校門の外はもう春のうららかな柔風が気持ちが良い。

ワイルドバンチかレザボア・ドッグスのように横に四人並んで下校。

そう、私たちは涅槃学園帰宅部、人呼んで、『DIGディグりガールズ』です!


「ねえねえ、ということでわたしたちのテーマソングを決めようよ!」


「お、提案するってことは何か持ってきてんだろうな~?聴かせてみろよ!」


「じゃん、お姉ちゃんの部屋から持ってきたGirlsの2009年の1stアルバム、その名も"Album"!そのまんま!潔い!」


 四人でBluetoothのイヤホンを取り付けて、私が再生する音楽をみんなで聴く。


「これこれ!一曲目の"Lust For Life"!最高なんだよ~!これにしようよ!」


「ぺにょぺにょな軽いクリーントーンのギターにこの疾走感、いいわね。」


「おお、すごい青春って感じがするぞ。」


「低音軽ッ、やべえな、このLo-Fiローファイ感もクセになりそう。」


「でしょ~!経歴も良くてね、ボーカルのクリストファー・オウエンスは16歳の時にカルト教団のチルドレン・オブ・ゴッドってところから逃亡して、妹に会いにスロベニアからテキサスまで行くの。で、そのころからパンクに傾倒するようになって、三十歳でついにバンドでデビューするんだよ。」


「まるでドラマみたいね。」


「うん、あたし好みな話の展開だ。これで同性愛者だったら最高だった。」


 みんなが音楽に耳を傾けながら帰り道を行く。

ふわりと風に吹かれて桔梗キキョウの香りが私たちの前をかすめていく。

それが音楽とあいまって、私たちの青春を彩ってくれるみたいだ。


「よっしゃ、今日もDIGって行くぜ!」


「「おーっ!!」」


 爽やかな風、眩しい太陽、この不可逆な時間で私たちが共有する音楽。

これからたくさん、好きなものを見つけていけるといいな。


☆ ☆ ☆


Girls - Album - 2009

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