低い砦の女

@sengokutarou

第1話

202X年、東京府某所

男は必死の形相で逃げていた。


サイレンとともにこの国ではお馴染みのあの歌

「教祖、教祖、教祖、きょーそー」

がエンドレスで流れ

「こちら、救済警察です。ただ今、我々は思想犯人を追っております。我々だけではなく皆様の協力が必要です。逮捕につながる情報をお教えされた方には、謝礼。犯人そのものを現行犯逮捕された方には、謝礼の他教祖の名のもとに地位向上をお約束いたします。」


男はそれを聞いて

「嘘だろ!ただ酒に酔って髭ダルマと軽口をたたいただけじゃねーか!」


だが、現実は非常であった。

街のいたるところに貼ってはるホログラムポスターは通常は

初代今では永世教祖と君臨していた人物から男の物に代わり、

名前、年齢、その他諸々の情報がそのポスター、音声で街の人物のも伝わっていき、

警察だけではなく、報酬にも目がくらんだその地区の住民たちも加わった大捜索網となった。

そして、数時間後

大捜索網の前には勝てずに、救済警察に捕まった。


「ふざけんな!俺が何をした。ただ、あの髭ダルマといっただけじゃん。それが罪になるのか!」


だが、救済警察には全くといっていいほどに響いていなかった。

それどころか、無表情かつ抑制のない声で


「はい、そうです。この国では教祖、教団への侮辱はそれだけで罪です。」

「ですが、我々は慈悲深い存在、あなたを教祖の名のもとに一から我々の教えを伝えるためにともに学びましょう」


男は青ざめた顔で

「学ぶ!?もしかして収容所か!収容所か!あそこは嫌だー!見逃してくれー」

と叫ぶも

先ほど同様に、無表情で男をバンに載せそのまま街から姿を消した。

そして、逮捕と同時にポスターも再び永世教祖に戻り、街はいつもの姿に戻っていた。


これが今の日本のいつもの光景であった。


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