ヒント
二件目の犯行現場は先の裏路地から出て、幾つものビルや飲食店が立ち並んでいる場所の一角にあった。犯行現場である駐車場の周りには、パトカーや救急車が止まっている。車から降りた中田達は立ち入り禁止のテープをくぐった。現場に入った田口と中田が警備員に警察手帳を見せた。中田の警察手帳を見た酒井は、「中田さん、警察官だったんですか!?」と驚いた顔で聞いた。「まあね」と中田は何事もなく普通に答える。すると、田口が数歩歩いて
「皆さん、ここは今から公安が捜査の指揮を執ります。指示があるまで車で待機していて下さい!」と現場にいる捜査員に聞こえるように言った。しかし、遺体を見ていた強面の刑事が、その命令に納得いかない表情で「ふざけんな!公安だかなんだか知らねえが、お前ら昨日も俺達のヤマ取ったよな?それでまた俺達のヤマを横取りするってか、あ?そんなに隠してえ事情があんのか?そもそも、そこのメガネは公安の人間には見えねえがなあ」と仁藤を指差して言った。そう言われて、驚いた仁藤は自分で自分の顔に指差した。
「え、俺?」「ああそうだよ、そこのお前だよ。お前みてえなひよっこが
刑事の挑発に対して、仁藤は挑発で返した。仁藤の挑発に堪忍袋の緒が切れた刑事は「何だと!!」と言いながら、仁藤に殴り掛かった。「危ない!」酒井が止めようとするが間に合わない。刑事の拳が仁藤の顔面の前に来たその時、仁藤は左手で刑事の拳を受け流し、刑事のスーツの襟を掴み、右足で刑事の右足をかけて、前に押し倒した。倒された刑事は思い切りむせた。倒された刑事に向かって中田が
「ごめんね〜。でもね、この人格闘技のプロだから怒らせると怖いよ」と優しい口調で刑事を脅す。観念した刑事は「くそっ」と言い残して、現場から立ち去った。捜査員が撤収した現場に、田口の部下と思われる一人の黒スーツの男が立っていた。田口の部下の敬礼に中田と酒井と田口が敬礼を返す。
「被害者は伊藤正人25歳。ここの近くのコンビニ店員で、休憩時間を過ぎても戻って来ない伊藤を店長が探しに行ったところ、この駐車場で遺体となっているのを発見したそうです」部下の説明を聞いたメンバーは、遺体の前にしゃがんで合掌した。早速仁藤がドローンで遺体を調べ始めた。
「ちょっとシゲさん、勝手に触んないでよ!」
同時刻、八咫烏内の一室、試験管やビーカー、パソコン、精密機器などが置いてあるラボに冬木、道重、湊の三人はいた。二人はとある精密機器の前におり、サンプル解析の準備を進めている。湊は二人から少し離れた場所でパソコンのキーボードを打っていた。
「なんだよ、ちょっと触るぐらいいいじゃねえか、どうせ袋に入ってるんだからよ」
「ちょっと触るだけでもダメなの!」そう言うと、冬木は道重からサンプルの入っている二つの袋を取り上げて、解析装置に入れた。するとサンプルの解析結果がラボのモニターに映し出された。
「DNA鑑定の結果を見ると、吉田は狭霧じゃなさそうね。えーっと、アスファルトの解析結果は......」
モニターには遺体の近くのアスファルトと、遺体から離れたアスファルトの解析結果が映し出された。
「遺体の近くの方が劣化してるわね。でもなんでかしら?駐車場だったら車が奥まで入るから、アスファルトは均一に劣化するはずよね」
「奥まで入る車が少なかったんじゃないんですか?」悩んでいる冬木に、パソコンのキーボードを打っている湊が答える。
「でも数値を見ると、不自然なくらい劣化の差が激しいの」冬木が首をかしげて考えていると、冬木の
「被害者の身元が分かったよ」中田はそう言うと、八咫鏡を操作した。するとラボのモニターに被害者の伊藤の写真と、簡単なデータ被害者は伊藤正人25歳、コンビニ店員。ドローンのレントゲン解析の結果、遺体には心臓がなかった。それと、ちょうど心臓のある部分の皮膚が黒く変色していたんだ。先生、そっちは何か分かった?」
冬木は先程のサンプルの解析結果を中田に伝えた。
「アスファルトの劣化か......。分かった、彩香ちゃん、そっちはどう?」
パソコンのキーボードを打つ湊は吉田と伊藤の共通点を言った。
「吉田と伊藤は前の職場が同じみたいね。コピー機の販売会社にいたみたい。会社の名前はカオン。今データを送るわ」
同じ頃、犯行現場で.....
「分かった、ありがとう彩香ちゃん」中田はそう言うと、通信を終了した。
「仁藤君、皮膚のサンプルを回収したらラボに戻ってサンプルの解析をして。僕と酒井君はカオンで二人の関係について話を聞きにいくよ。田口さん、ここは任せても大丈夫ですか?」「はい、ここは公安が引き継ぎます」田口は中田の指示を受けると、部下に指示を出した。
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