12

 よくわからないが、シヴァの機嫌が恐ろしく悪い。


 そして、さらによくわからないことに、先ほどから沙良はシヴァの膝の上に抱きかかえられていた。


 シヴァの膝の上で、アスヴィルから差し入れてもらったケーキを口に運びながら、沙良はちらちらとシヴァの横顔を見上げる。


 シヴァは沙良を膝の上に抱きかかえてソファの上に座り、先ほどから難しい顔で書類と睨めっこしている。仕事中だ。


「あのー、シヴァ様、わたし、お邪魔じゃないですか?」


 くつろいでいるときならいざ知らず、仕事中に沙良を膝にのせていては、仕事がしづらいだろう。だがシヴァの左腕は沙良の腰にしっかりと巻きまきついていて、沙良は立ち上がって逃げ出すこともできなかった。


 朝食後、問答無用でセリウスを部屋から追い出したあと、シヴァはなぜか沙良から離れないのだ。


「いいから、ここにいろ」


「はい……」


 沙良は首をひねりつつ、素直に頷いた。そして、ふと顔を上げる。バタバタという足音が聞こえてきたからだ。


「シヴァ様!!」


 コンコンとノックの音が聞こえたかと思えば、シヴァが言葉を発するよりも早くに部屋の扉が開く。


 血相を変えたアスヴィルが立っていた。


 アスヴィルはシヴァの姿を見つけるなり、悲痛な声で叫んだ。


「シヴァ様、セリウス殿下を何とかしてください!!」

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