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 沙良は、両親から愛されていなかった。


 幸いなことに、両親の顔だけは知っている。


 だが、生まれてこの方、両親とまともに会話をした記憶はなく、優しい瞳で見つめられたこともなかった。


 沙良は、愛が何なのかを知っている。


 部屋にあるいくつもの小説に書いてあったからだ。


 だが、愛を実感したことは一度もない。

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