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 誕生日の朝、沙良さらはいつもよりも早く目が覚めた。


 ぼんやりと目を開けて、まず視界に飛び込んできたのは、見慣れた暗い天井だった。


 沙良の部屋に、窓はない。


 いや、窓だったものは存在するが、外から板が打ちつけられていて、決して開かないようになっている。


 部屋の中はとても広い。


 それは、沙良の家がとても裕福であることに関係があるけれど、他と比べるすべを知らない沙良にとっては、特に何の感慨も持てないことだった。


 広い部屋の壁には、大きな本棚がいくつも並び、ぎっしりと本で埋め尽くされている。


 ベッドがあり、机とソファがあり、一人暮らしの社会人が使うような小さな冷蔵庫と電子レンジがあった。


 さらに続きの部屋にはバスルームとトイレがある。


 沙良は物心ついてからこの方、この部屋から外に出たことはほとんどなかった。


 学校にも行ったことはない。


 知識はたくさんの本で培った。


 そのせいか、沙良の知識は偏っていて、小学生がするような簡単な計算しかできない。


 そのかわり、歴史や古典は必要以上に詳しかった。


 沙良はベッドボードにあるリモコンで部屋の電気をつけると、ゆっくりと起き上がった。


 今日は十七歳の誕生日だ。


 だが、祝ってくれる人は誰もいない。


 お昼前にお手伝いさんが、小さなケーキを部屋の入口においてくれる。


 今年もおそらく、それだけだろう。


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