アイドルは貴方の正義を守らなくちゃだめですか?

里仲璃音

プロローグ










七人の少女たちが紙吹雪が散る中、声をそろえる


「「「「「「「今日もライブに来てくれてありがとうございました。」」」」」」」


少女たちが喝采を浴びる。




その拍手は、その歓声は、彼女たちの未来を照らすには十分すぎるものに思えた。




























「藍奈、今日の


コーラスよかったよ」


「まあ私は莉愛みたいにかわいくないから歌もがんばんないと」


「なにそれー」


莉愛のフルネームは、西園寺・グレース・莉愛。この国を牛耳ってる西園寺財閥の一人娘で、母親はイギリス人。顔がかわいいのはもちろんだけど、金髪で長身で巨乳、そして青い瞳。残念ながら、見た目で勝てる人はほとんどいないだろう。


「はあ...」


藍奈と呼ばれた少女が、吐息を漏らす。




彼女は着替えを終え、帰路についた。






「新都心行きアクセルトレインが参りますので線の内側までお下がりください。」


彼女はディスプレイに指を走らせる。


「きょうのSeventhNovaのライブよかった」


「寧々さんかっこよすぎww」


「でも、蓮ちゃんもかっこよかったー」


「この七人なら今年中に中央アリーナいけそう!」




彼女たちのファンのSNSへの書き込みは今日も好調のようだ。






ファンだけでなく、彼女の周りにいるすべての人たちが、彼女の未来など考えもせずに、それぞれの価値観で自分勝手に、彼女の言動に対して、喜んだり、怒ったり、悲しんだりするだろう。




そう。彼女の未来など考えずに。彼女の気持ちなど考えずに。

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アイドルは貴方の正義を守らなくちゃだめですか? 里仲璃音 @rion1012

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