寮ぐらしっ!

・時刻:ポショポチョ氏の五回目の死亡から二日前(訂正)

・場所:サルでも入学できる魔術高等学園・蘇生の教会



 机に乗るという不良な行為に及んだ俺はミュカバ先生のソードスキルによって惨殺された。その、イケないことしたら怒る前に殺すってスタンスはどうかと想う。叱るという行為は大事。俺は切にそう思い、棺桶の蓋を全力の雄叫びと供に蹴り飛ばした。


「ふぅ……」


 今日で何度目なんですかねぇ、この行為。

 やれやれと、俺は魔術学園らしいラノベ主人公のようにイキりながら顔を上げる。

 其所にはミュカバ先生の姿はなく、ついでにクソゴミ共という生徒もおらず、更に言えば昼間だった筈なのに窓から夕焼けが差し込んでいた。

 

 みんな、俺を置いて下校してる。


 まぁ、仕方ない。


 しつこく繰り返すが、転移者は不死である。

 死んでも女神【アバズレ】像の足元から棺桶をボンッと置かれ、蘇生を果たすが。これほど強大な偉業には勿論のごとく、相応の代償が伴う。

 幾つか代償はあるが、まず上がるのが『蘇生までのタイムラグ』だろう。転移者は短いスパンで幾度となく死亡すると、蘇生を果たすまでタイムラグか発生する。簡単に言えば、死ねば死ぬほど蘇生するまでの時間が長くなるのだ。

 後もう一つ、『レベルダウン』というデメリットがあるが、ポショポチョくんのレベルは輝く王道の一なので、実質、無害だから気にしない。


 まぁ、今日だけで五回ほど死んでますからね。蘇生までのタイムラグは二時間程度ってところだろう。


 つまり、とっくに下校時間である。


 この、サルでも入学出来る魔術学園という転移者を最強に小馬鹿にした名前の学園は全寮制だ。其所に例外はなく、入学した生徒は全員そうなる。恐らく、皆はこれから五年近くも暮らすことになる寮へと向かい、割り振られた部屋でゆっくりしている筈だ。


 となれば、俺も行くしかない。

 どんな部屋だろうか。こう見えても可愛い物が好きで、犬のぬいぐるみを抱かないと寝られないという繊細な俺に合う部屋なんだろう。なんせ、この学園は転移者が強制入学であり、入学を拒否したら監獄行きというクソの塊みたいな学園の癖にして、高額の入学金だけはしっかりと搾り取りやがる。

 俺が王都の銀行に隠し入れていた金も全てミュカバ先生に持っていかれた。


 その額、日本円にして二千万。


 それだけの大金を払えない転移者は強制入学に加えて強制借金だ。考えれば考えるほど、この学園ってクソの塊だと想う。


 しかし、それだけの大金を何百人という転移者から搾り取っているからには、学園の設備には期待しても良いと想う。



 魔術学園での、寮生活って言うのは神秘だ。

 可愛い女の子と散々にイチャイチャした主人公は、疲れを癒やすために寮へと向かう。其所で出会うのは必ずと言って良いほど、おっぱいの大きい美人な寮母さんって流れよ。あらあらうふふ、とか笑う美人さんね。実際に聞いたら、ドン引きするけど、魔術学園って要素が加わるならアリ。つまるところ、俺にはおっぱいの大きい美人な寮母が待っているという事よ。


 さて、さっそく寮母さんに会いに行きますかね……俺の生活、どうなることやら……


 俺は魔術学園のラノベ主人公らしくイキりながら、棺桶を飛び出し、蘇生の教会の入口へと向かおうとしたとき、コツンと足下にあった何かに爪先が当たる。

 すっと目を向けてみると、其所にはドッグフードのような小粒の塊が転々と入口に向かって置かれていた。



 転移者フードだった。



 その昔、異世界【アルマ】にて、転移者のペット化を高らかに叫んだ犬の亜人さんが一人居た。名を“ナヤゴ・ッコル”。クッソ言い辛い彼女は、転移者は不死であるがクソザコナメクジであり、強者である亜人が確保し、愛玩犬の如く保護しなければならないと全世界に向けて声明を発表した。

 後に、転移者保護団体が設立されることになった“転移者ペットブーム”と呼ばれる出来事である。


 “ナヤゴ・ッコル”さん。このお方は、転移者のため、転移者フードなる栄養バランス最適で完璧な食料を開発した人で、“ゴッコル家のムツゴロウ”と一部のペット化肯定派である転移者から賞賛されている。正直、人間の闇が垣間見える歴史の一幕だ。だが、心の中ではペット化肯定派の転移者がいるのも仕方ないと想っている。

 何せ、“ナヤゴ・ッコル”さんは。


 “ナヤゴ・ッコル”さんは、“ゴッコル・ッコル”こと、ゴッコルさんの叔母である。


 俺は知らず知らずに汗を垂らした。

 この転移者フードはオリジナル。栄養バランスを更に考え、味等にも拘り抜いた巧みの一品。これを作れる人は一人しかいない。


 俺はハッと顔を上げて入口を見た。


「ポショポチョーっ! ポショポチョーっ!」 


 其所には、入口から此方に声をかけてくる“ゴッコル”さんの姿があった。



 くぅーん……

 俺は無意識に鳴いていた。染み着いていた犬の魂が気高く吠えたのだ。犬耳にモッフモフな尻尾。見間違いようがなく、其所にはゴッコルさんがいる。


「ポショポチョっ! なんだ、ここに居たのか、ポショポチョっ!! 探したんだぞーっ!!」


 ハッキリと此方に声をかけ、ゴッコルさんはゆっくりとしゃがみ込む。


 野郎……監獄だけじゃ飽き足らず、学園まで俺を追って来やがったのか……


 俺はイキッた。ラノベ主人公らしく、怨敵にあったようにイキッた。


「おいで、ポショポチョっ!! ほら、おいでっ!!」

 

 ぱんぱんと手を叩き、犬のように俺を呼ぶ。もう人間扱いとかどうでも良くなるくらいの犬扱いである。俺は四つん這いに体勢を移行して素早く地面を蹴り飛ばす。


「わんわんわんわーんっ!!」

「よしよ、しよしよしよしよしよしよしっ!!」


 俺は歓喜の雄叫びを上げてゴッコルさんのフカフカなおっぱいに飛び込み、慣れた動きで足をぺろぺろした。

 ダメなんだよ。ゴッコルさんを殴ろうとしてもな……動いちまうんだ、身体が……魂に刻まれた監獄での生活のせいさ……


「ハハハハっ! ポショポチョー、ゴッコルだよーっ!!」

「ゴッコルさん、ゴッコルさんっ!! 王都に居るはずの貴女がなんでここに居るの!? ポショポチョ、気になるのっ!!」


 きっと親が俺を見たら泣くだろう。俺がニートになるより遙かに辛い光景だろう。分かる。俺は素直にそう思った。


「それは勿論、呼ばれたからさ、ポショポチョーっ!」


 ゴッコルさんの巧みなナデナデに俺は腹を見せて屈服する。


「呼ばれたからっ! どういうことなの、ゴッコルさんっ!!」

「ポショポチョは私以外に懐かないからなぁーっ! ポショポチョは暴れん坊だから、ポショポチョが暮らす寮を管理してくれってミュカバさんに任されたんだよーっ!」

「えっ……?」


 俺はつい意識を取り戻して素で言葉を返す。


「私がポショポチョの寮母さんになるんだっ! ポショポチョーっ! 可愛いなぁ、君はっ!!」

「………………」


 ワシワシと途方もない筋力で抑え付けられながら、俺はおっぱいの大きい犬の亜人さんの元、犬として暮らしていくことが決定した瞬間である。



◆◆◆◆


・時刻:ポショポチョ氏の五回目の死亡から二日前(訂正)

・場所:サルでも入学できる魔術高等学園・第八男女共同学生寮前



 ルンルンとご機嫌なゴッコルさんに抱っこされた俺はくぅーんと気高い鳴き声を上げながら、なすがままに連れられていく。自慢じゃないが、俺の身長は二メートル近い。高身長であり、正直にいうと俺より大きい奴を見たことがない。

 体重だって優に八十近いが、ゴッコルさんは鼻歌交じりに俺を抱いたまま歩いている。


 亜人さんの身体能力は恐ろしく高い。そりゃ、魔物が跋扈する世界で悠々自適に生きている種族なんだから、当たり前と言えば当たり前なのだが、正直凄すぎる。どのくらい凄いかって言うと、たぶん、ミュカバ先生はゴッコルさんにワンパンで負ける。

 亜人さんにレベルの概念はないが、予測だけで言えばゴッコルさんのレベルは【800】くらい。結構前にドラゴンに「めっ!」って叩いてドラゴンの頭部を粉砕していたから間違いないと想う。


 強すぎじゃない? ゴッコルさんに勝てる奴いるの?


 と、想うのは異世界アマチュア。

 ゴッコルさんでも勝てない魔物や亜人さんはいる。


 転移者が不死じゃなかったら異世界のインフレに置いていかれるだろう。兎に角、この異世界は転移者に優しくないのか優しいのか分からない。転移者でも、【地球回帰組】という地球の帰り方を探し回るため、各国を渡り歩いているレベリングの廃人共でも、最大レベルは600程度。普通にゴッコルさんに負けてる。


「ふふふっ。ポショポチョは私が抱っこしてると大人しくて良い子だなぁっ!」


 前に抱かれているのに抵抗したら、そのまま絞め殺されたからね、そりゃ大人しくなりますわ。


「やっぱり、君は可愛いなぁっ! 此処には可愛い子がいっぱいだっ。君の友達も沢山いるだろう? ワフゥにフジサンにコイノボリ、マチャルもいるんだよねぇ。あぁ、フクヤマは脱走してから三年近く会ってないなぁ。速く会いたいなぁ……」

「そうっすね」


 俺は凄く適当な返事を返した。

 俺を除いた“最悪の転移者達”は、既にゴッコルさんのペットとなっている。 と言うより、名前で分かると想うが、転移者でありながら意味不明な名前の奴等は亜人さんのペットだ。

 ステータス画面の名前を変える方法は身も心も亜人さんのペットになること。意外と知られていない裏技である。多分、亜人さんのペットになるっていう凄まじい所業が情報拡散の歯止めになっているのだろう。

 まぁ、ワフゥ軍師に関しては元からクソみたいな名前だったがな。


「フジサンとコイノボリは脱走癖が酷かったけど、ちゃんと首輪を買ってきたから大丈夫だっ!」


 嘘でしょ? 首輪買ったの? 付けちゃうの、首輪? 大の青年少女に首輪とリードって論理的に大丈夫なの?

 俺は全てを諦めた。どれだけ抵抗してもエロゲの女キャラみたいに即墜ちが待っているんだ。ならいっその事、自信もって首輪付けたままダブルピースしてやろう。

 転移者のペット化が止まることを知らない。

 くぅーんと気高い鳴き声を上げ、俺は縮こまった。


「ほら、ポショポチョ! 君が暮らす寮が見えてきたよっ!」


 ゴッコルさんタクシーに揺られること十分くらい。俺の目の前に、八階建ての中々にお高そうな寮が姿を現した。家賃九万ってところだろう。外観に五月蝿いポショポチョくんも一目で満足する寮だ。


「ほら、ポショポチョっ!」


 すっとゴッコルさんに地面へ下ろされた俺は、寮を見上げる。

 外から部屋を見るに……2kってところか? 広い部屋だと落ち着かないタイプだから丁度良い広さだ。中はどうなっているだろうか。ポショポチョくんは外観だけじゃなくて内装にも五月蝿いからね。厳しく行くよ。


 すっと寮に入ろうとした時、ゴッコルさんに腕を捕まれた。


「ポショポチョ、違うよ」


 いやいや、違うってなんだよ。

 俺はゴッコルさんに歯向かうように言う。


 まぁね。うっすら分かってましたよ。俺の住む寮は此処じゃなくてもっとボロくて今にも壊れそうな寮ってんでしょ? もう、ありきたりなんすよ。魔術学園ラノベに有りがちっての? なんで俺はここに住めないんだーって主人公がキレるパターンの奴でしょ? 分かってましたわ。分かる。俺もこの流れは絶対にこの寮に住めないって分かってたから。はぁぁ……で、俺が住む寮はどこにあるんです? お? どんな小屋なんですかねぇ。教えろや、クソがーーッ!


「流石はポショポチョだ。私をよく分かってる。うん。君の住むのはアレだ」


 俺はイキりながらゴッコルさんに言うと、ゴッコルさんは寮な入口の右側を指差す。 


 犬小屋があった。

 

 えっ? アレ?


「アレだよ。今朝に作ったんだ」


 ゴッコルさんの自作だった。


 嘘でしょ? 犬小屋なの? こういうパターンもあるんだ。へぇー。関心しちゃいますわ。ユーザーを飽きさせないっていう動き? テンプレから悉く外れていくよね、ゴッコルさん。そういうとこ嫌い。


「私はね、ポショポチョ。ペットに甘過ぎたんだと想うんだ」


 アレだけ俺やワフゥ軍師を殺害しといて甘過ぎたの? 普通はどれだけペットに辛辣なの?


「だからワフゥやポショポチョ達は脱走したし、直ぐに悪いことをする。ペットは甘やかすだけじゃダメなんだと実感したよ。躾もペットに対する深い愛があるならしなきゃダメなんだと痛感したんだ」


 そんなことないと想う。

 俺はなけなしの言葉で暴走気味な飼い主を止めに入るが、ゴッコルさんは首を大きく振り、懐から一冊の本を取り出した。


「この本は王都でベストセラーとなった本だ」


 題名は【犬の躾方】

 あ、もう、犬扱いなんすね。感心した。犬の亜人さんであるゴッコルさんが【犬の躾方】を読んじゃう姿勢に感心した。


「ペットは別の部屋で寝かせましょうと書いてあった。まずはこれを実践してみるんだ」


 ちょっと待って下さいよッ!

 俺は必死に叫ぶ。

 こういうのって普通は逆なんじゃないのッ!? 犬の亜人さんだろ、ゴッコルさんッ!! 犬の亜人って言うのは主人公に妙に懐いて、頭撫でられたら尻尾振ってさぁッ!! 犬みたいな愛らしさと忠犬っぷりを表す覇権ヒロインじゃないんですかッ!? 逆かよッ!! 俺が犬として犬の亜人さんに飼われるのかよッ!! 何処に需要があるんだよ、この要素ッ!! 違うだろぉーっ!!


「めッ!!」


 俺はゴッコルさんにめっと頬を打っ叩かれた。脳がぶるんぶるんと揺さぶられるプロボクサーの右フックのような、めっ、に俺は膝をついて意識を失いかけ、鼻血がボタボタと垂れる。


「遠吠え、良くないっ! 私はそういうのに怒っていくぞ、ポショポチョっ! 無駄吠えは怒らなきゃダメって本に書いてあったっ!」


 もう何を言っても無駄なんだと感じてきた。

 どう足掻いてもゴッコルさんは俺のペット扱いを辞めない。


「大丈夫だ、ポショポチョ。寂しくない。ワフゥもいるからっ!」

「えっ……?」


 俺が顔を上げると、ゴッコルさんは入口の左側を指差した。


 右側の犬小屋と、対になるように設置された犬小屋。其所には、犬小屋の中で体育座りしているワフゥが此方を悲しそうな顔で見つめていた。


「ポショポチョ氏」


 ワフゥ……


「ワフゥは良い子だっ! めっって一回したら分かってくれる賢い子なんだぞっ! ポショポチョもそういうワフゥの良いとこを見習おうっ!!」


 ワフゥにとってゴッコルさんは神である。

 自らのウンコにも劣るオンリーワンなDQNネームを改名してくれた神なのだ。


「ワフゥ……」

「ボクは自分の生き方に一ミリも後悔してない」

「ワフゥ……ッ……」


 ホロリと涙が流れる。なんて強い女だ。男の俺ですら躊躇するのに、風呂無しトイレ無しドア無しの犬小屋物件に納得してお前は住むというのか。なんて気高い女なんだ、ワフゥ。


「ボクは、ゴッコルさんが望むなら犬になる」

「ワフゥ………ッ!!」

「でも、一人は寂しいんだ……」


 すっと、犬小屋に用意された毛布を抱き締めるワフゥ。


「一緒に犬小屋で住もう」

「………ッ……」

「二人で野ざらしになって、日に日に汗臭くなろう。今日は犬臭いねって言い合いながら、一緒に笑ってほしい。周りはドン引きだろう。でも、君とボクの二人だけは分かり合えるんだ。ボク達は寮の狛犬になるんだよ」


 俺は溢れ出る涙を抑えきれなかった。

 コイツは本気で後悔してない。献身的な愛が成せる行動だ。もし、俺がシスターに犬小屋で暮らせと言われれば。絶対に有り得ないだろうが、言われたなら、俺は全てを飲み込み、自ら望む形で犬小屋で暮らす。コイツは、ワフゥは俺だ。俺の有り得たかも知れない未来だ。

 女なのに、なんでこんなに身体張って。良いさ。ワフゥ。周りがドン引きしようが、お前が俺の性癖ドストライクな女には変わりないんだ。


 俺はゆっくりと歩み、右側の空いている犬小屋にすっと入り込んだ。


「ポショポチョ氏……」

「お前と俺は一蓮托生だ……」

「ッ……ありがとうッ……!!」


 ぐっと涙を堪えるワフゥ。本当は犬小屋に住みたくないのだろう。だが、ゴッコルさんに言われてしまったのならば、ワフゥは犬小屋に住むしかない。

 大丈夫だ、ワフゥ。俺はお前の理解者だ。



「うんっ! 良い子だぞ、ワフゥっ! ポショポチョっ! ゴッコルさんは感激してるっ!!」


 ゴッコルさんは嬉しそうに俺たちを見つめて満足顔で頷いた。

 俺達は無言で涙を流す。諦めるしか道が残されていない。


「ゴッコルさん、ボク達のご飯とかは……?」


 ワフゥが恐る恐ると今後について話し始めた。この女は既に抵抗する気力すら残っていない。


「大丈夫っ! たまに缶詰をあげると良いって本に書いてあったから、私は実践していくぞっ! 今までは転移者フードだけだったからなっ!」

「やったぁ」


 ワフゥの無気力な喜びが宙に消えていく。儚い。なんて儚いんだ、ワフゥ。俺はお前のそういうスタンスが大好きだ。大丈夫、お前が犬小屋暮らしで犬臭くなっても、俺にとってお前が性癖ドストライクな女に変わりはない。ポショポチョくんは見た目で選ぶ男だ。


「うんうんっ。後はコイノボリ達を探さないとなぁ……この学園に居るはずなんだけど、見付からないんだっ。私はみんなを探しに行くから、仲良くして待っているんだぞっ!」


 ゴッコルさんはそう言い残して、まだ見ぬペットを探しに学園へと戻っていく。そうか、何だかんだ後回しにしていたが、あのクソ共も学園に居るんだったな。

 どうか、ゴッコルさんに捕縛されますように。

 俺は去っていくゴッコルさんの背中に祈りを捧げた。死ねば諸共だ。あのクソ共も犬小屋暮らしをすれば良い。



 ゴッコルさんが姿を消した後、俺達は無言のまま犬小屋の中で体育座りをしていた。なけなしのオマケのように用意されている毛布だけが俺達に与えられた防寒具。

 時刻は夕暮れから夜に差し掛かり、外の気温は下がっていく。肌寒さを感じさせる微風が吹き、身体を容赦なく冷やす。


「くしゅんっ……」


 隣のワフゥが小さくクシャミをした。

 ワフゥは小柄で肉付きがない。太股が絶妙にムチムチなくらいだ。俺はそっと、自分の犬小屋に置かれた毛布を手に取り、ワフゥの犬小屋へ持っていく。


「使うと良い……」

「ポショポチョ氏……でも……」

「ええんやで……」


 俺はワフゥに毛布を押しつけ、自分の犬小屋へと戻る。

 ワフゥはじっと毛布を見つめた後、ぎゅっと胸に抱き締めていた。

 辺りは段々と暗くなり、学園から聞こえてくる青春の声も消えていった。俺達は寮の狛犬だ。じっと座り、寮へ入ろうとする者を見つめる。


 そんな時、道の角から一人の亜人さんが此方に歩いてくる。

 赤い角におっきなおっぱい。

 オニニ氏だった。

 彼女は何故か頬に返り血を浴びていて、鼻歌交じりのご機嫌な様子で真っ直ぐと寮の入口へ歩き、途端に立ち止まって目を細める。


「…………? ……ッ!?」

 

 俺達を視界に捕らえたのだろう。

 身体をビクつかせて、まるで信じられない物を見たような反応でいきなり瞬きを繰り返した。


「………な、なに……しとるんじゃ……?」


 俺は狛犬スタイルを維持したまま言う。


「住んでるんだよ」

「は?」


 本気で訳分からないを表すのは辞めてくれ、俺の心が折れそうになる。俺はゴッコルさん手作りの小屋をバンバンと叩きながら、言う。


 俺の部屋だ。寮部屋だよ。どうだ、オニニ氏。寮母さんの手作りであり、この学園に二つしかない特別な部屋だ。良くあるだろ、魔術学園の主人公だけ変な部屋とか凄く豪華な部屋とか。そういうことだよ。これは俺達の特別な部屋だ。お前とは違う。


「部……屋……?」


 信じられないのだろう。分かる。俺は素直にそう想った。

 俺だって、学友が犬小屋を指差して俺の部屋とか言い放った日には正気を疑う。頭がおかしい奴なんじゃないかって想う。


「……この辺りの夜の気温は余裕でマイナスに行くんじゃ。冗談抜きで凍死するじゃろう……部屋っていうか、それ、犬小屋……」

「くしゅんっ……」

「………」


 ワフゥがまたクシャミをした。

 コイツは見た目の通り、病弱なところがある。直ぐに風邪をひくし、ちょっとの気温差で体調を崩す奴だった。 

 仕方ねぇ。俺はよっこいしょと犬小屋から飛び出て、犬小屋の屋根板を力任せに剝ぎ取る。そして、板を地面に放り投げ、慣れた手付きでポケットから小さな紙とライターを取り出して、ワフゥを手招きする。


「ポショポチョ氏……」


 ワフゥはとことこと此方に近付きしゃがみ込む。

 俺はライターで火元を造り、自らの犬小屋を犠牲にして焚き火を始めた。


「えぇ……」


 オニニ氏が困惑しているが、構いやしねぇ。この辺りに詳しそうなオニニ氏が余裕で凍死するというなら、俺達が生きて明日を迎えるには火が必要だ。あんまり俺を舐めるなよ。ゴッコルさんから逃亡していた時はライターすら持たずに野宿で一週間は生き延びた経験がある。まぁ、結末はゴッコルさんに見付かって、めっ、てされて死んだんですけどね。


「暖かい……」


 ワフゥはぼーっと焚き火を見つめていた。


「……いや。今日は良いとして、五年間も犬小屋で生きていくつもりなんか……? 正気か、おんし等……?」


 俺だって出来ることなら犬小屋で暮らしたくない。だが、ゴッコルさんは頭がおかしい亜人さんの癖にして、超絶エリート街道を突っ走る天才だ。恐らく、寮の部屋割りは本気で用意していない上、学園に対する裏回しは実行済みだろう。俺が学園に寮部屋が欲しいと訴えても、意味は無いのが目に見えている。


「…………ワフゥ、おんしは女じゃ。その暮らしはわっちでも本気でどうかと想うぞ」

「分かる。ボクもそう想う。でも部屋がないんだ……犬小屋しかないんだ……学園の外に家を借りるって手もあるさ。だが、外出許可をとらなきゃ、外に出られない時点でこの方法は詰んでる」

「…………ふむ」


 ゴッコルさんの事だ。その辺りも深読みしての行動だろう。俺でさえ、外に家を借りるって方法は真っ先に考えたさ。

 オニニ氏はワフゥの言葉に腕を組み、おっきなおっぱいを主張するポーズをとった。推定Hってところか。最強だな。


「わっちはの。広い部屋というのが好かんのじゃけ」

「広島弁……ッ?」


 ワフゥは唐突なオニニ氏の広島弁に驚く。此奴、ここに来て新たな属性を追加しやがった。


「わっちは実家から出たことがなくての。家族も八人の大家族じゃけ、狭い部屋でぎゃーぎゃーと騒ぐのが普通だったんじゃ。しかし、わっちは軍に捕まって学園に放り込まれてしまい、家族と離れ離れ……此処では、わっちは一人じゃ……やはり、一人は好かん」

「……オニニ氏」

「家族が恋しくなる寂しがり屋じゃ。広い部屋で一人というのは、中々に来るモノがある」


 ようは一人暮らしは寂しいってことか。

 お前が一人暮らしするハメになったのは、転移者を狙った連続殺人事件の犯人だったから逮捕されたんだろう。自業自得の極み以外なんでもねぇじゃねぇか。


「オニニ氏、まさか……」


 ワフゥは頭が頗るキレる。勘も良い。オニニ氏が言いたいことをいち早く察したのだ。


「どうじゃ、ワフゥ。わっちの部屋で一緒に暮らすというのは。ルームシェアって言うんじゃろ?」


 オニニ氏はワフゥを自分の部屋に誘った。


「でも、君は連続殺人犯……」


 転移者を狙うね。殺人犯ですよね。

 これ、アレだろ。今日のターゲットはワフゥってことだろう。嘘でしょ? こんなあからさまな殺人予告あります? 部屋に連れ込んで殺すとか計画的過ぎてドン引きするんだけど。


「安心せぇ。わっちは別に好き好んで転移者を殺しとらん。深い訳があっての……まぁ、狙うのは男の転移者であり、わっちが余裕で勝てる奴だけという条件がある。まぁ、選り好みはするが、女は襲わんと決めておる」

「………」


 ワフゥは神妙な表情で深い思考に入る。

 ワフゥの癖だ。金と保身にだけ全力を注ぐワフゥは、その二つが絡むことに関して、一切の妥協と感情を捨て去る。

 オニニ氏に嘘を付いている様子はない。だが、転移者を殺しているのは事実だろう。連続殺人事件の犯人とルームシェアで暮らすという、字にすると闇が深すぎる事態に、ワフゥは数十秒の沈黙を保ち。


「ありがとッ……」


 ホロリと涙を流した。十中八九、嘘泣きだ。しかし、嘘泣きのレベルが演技派女優を優に超える演技であるがため、オニニ氏は柔らかく微笑んで、ワフゥの涙を指でぬぐう。


「気にするでない。わっちとワフゥは今日からズッ友じゃ」

「ズッ友だょ、オニニ氏……ッ」


 なんだろう。この会話の違和感は。まさか異世界でギャル語を聞くとは想わなかったわ。

 ぎゅっとオニニ氏に抱き付くワフゥをあやしながら、オニニ氏は俺を見る。


「おんしも来るか?」


 嘘でしょ? 男の転移者であり、オニニ氏の片手で負けるっていう殺人ターゲットにピッタリと合う俺が行くと想うの? 外で凍死するか、オニニ氏に殺されるか選べって事?


「安心せぇ。一日一殺でわっちは満足じゃ」


 クソが。殺す事が確定してやがる。

 俺は叫んだ。


 ざけんじゃねぇぞッ!! 学園生活で、まだ初日なのに五回は死んでる俺にまだ死ねってのかッ!! 大体、一日一殺ってなんだよッ!! 日本語喋りやがれ亜人さんよォッ!! 毎日毎日、部屋に居るときも死に怯える生活なんざ真っ平ごめんだッ!! むしろ、誰がそんな生活受け入れるのッ!? 自分を狙う殺人犯とルームシェアとか誰が喜ぶのッ!? ストレスでハゲるはクソがァーーッ!!


 俺は焚き火にくべていた木を手に取り、ブンブンと振り回す。


「む。しかし、ワフゥとわっちと共同生活じゃ。おんし等、転移者はそういう、はーれむシュジンコウ生活っちゅうのに憧れてるんじゃろ?」


 確かに。

 オニニ氏とワフゥとの共同生活に俺の心は揺らいだ。

 一日一殺……いや、此処は許容して良いのだろうか。ゴッコルさんとの監獄暮らしと同じペースの死亡回数だ。正直、慣れていると言えば慣れている。俺はチラリとオニニ氏のおっきなおっぱいを見た。これが毎朝拝めるのか。いやまて、良く考えろ。見てくれは良くても、此奴は転移者を狙った連続殺人事件の犯人だ。いくら、不死だからとはいえ、殺し回る奴の傍に住むのはどうなんだ。

 俺は悩んだ。


「オニニ氏。ポショポチョ氏と一緒に暮らすのはダメだ」


 ダメってなんだよッ!! なにがダメなんだよッ!! 

 俺は叫ぶ。論理的に学生の男女が一つ屋根の下で暮らすという完全アウトを捨て去り、俺は前のめりにワフゥにかみつく。


「しかし、ポショポチョだけを外に置くのもわっちは気が引けるぞ?」

「ボクはポショポチョ氏と一緒に長いこと暮らしてたから分かる。オニニ氏、辞めた方が良い」


 俺とワフゥは、“最悪の転移者達”と呼ばれるクソ共、それにシスターを含めたメンバーで一緒に暮らしていた時期があるのだ。

 だが、この女は何を言っているのだろうか。俺は勢いのまま叫ぶ。

 

 ふざけんなッ!! 俺はもうオニニ氏に殺される代わりに住み着く気満々だぞッ!! お前と同棲なんか今更だろうがッ!! 何年の間、一緒に暮らしてきたと想ってやがるッ!! 俺に落ち度は無かったはずだろうがッ!! 一緒に暮らしていたとき、ちょっと楽しかったのは事実だろうッ!?


「いや、だって……ポショポチョ氏。掃除とか料理とか一切しないっていうか、出来ないし……」


 そうだな。

 素直に認めて言い切った。

 俺は掃除が出来ない。しようと想っても逆に汚すタイプの人間だし、掃除途中で見付かった漫画に夢中になる。料理も出来ない。俺のスキルである【魔薬スキル】は料理に反応して発動してしまい、毒料理を見事に作り上げるのだ。だから、俺はメンバーの中で唯一、家事を許されなかった。

 俺はそんな事実を捨て去り、勢いで叫ぶ。


 だからなんだッ!! 俺は金は稼いでいたぞ。決してヒモで収まる男ではなかった筈だッ!!


「いや、ヒモの時期もあったよ。むしろ、ポショポチョ氏が稼いできたお金より、コイノボリやボクがあげてたお小遣いの方が額が多いよ」


 そうだな。

 俺は素直に認めて言い切った。

 確かに、俺はヒモと化していた時期があった。仕事する気力がわかず、部屋でゴロゴロしながら、人の不幸大好き女ことコイノボリや、ワフゥからお小遣いを貰い、遊び回っていた時期がある。シスターに働けと言われるまで、約一年ほどは女メンバーのヒモだった。

 俺はそんな事実を捨て去り、叫ぶ。


 だが、稼ぐときは稼いでいたぞッ!! 額もそこそこだし、なにより、俺は気が利く男だッ!! お前が風邪ひいたときは頑張って看病したし、誕生日には毎回プレゼントを忘れなかったッ!! なんならパーティーもしたぞッ!! ポショポチョくんは、そういうとこは気にする良い男だッ!!


「……正直、それくらいならボクはポショポチョ氏と暮らしても良いよ。今更だし……でも……」


 なんだよッ!! 

 なんだかかんだと良い、ワフゥは俺に甘い。勢いで押し切ればオニニ氏とワフゥに囲まれたハーレム生活が待っている。一日に一回はオニニ氏に殺されるが、其所は許容範囲だ。

 ワフゥは俺を見つめ、眉をひそめたまま口を開く。


「ボクの下着とか盗むでしょ」


 盗むよ。

 俺は素直に認めて言い切った。


 いや、待て。ちょっと考えて欲しい。一つ屋根の下。男と女が暮らすのだ。ワフゥは見た目はいい女だ、オニニ氏だってそう。女として考えてくれ。一緒に住む男が、お前等みたいな美人を前にして何の反応もしない。なんなら下着すら無視する男だ。どう思う、そんな男? 有り得ないだろ。男はお前等を女として見てないって事だ。テメェには性欲すらわかねぇよブスって言っているのと同義だぜ? 性欲のない男は女のプライドをズタボロにするんだ。クソだぜ、そんな男。だが、俺は違う。俺はお前等を美人だと想ってるし、性欲の対象だと感じている。だから、お前等が付けている下着があるなら、タンスを漁ってでも貪欲に狙っていくし、隙あらばお前等の風呂とか覗く。良くあるだろ、魔術学園のラノベ主人公がよ、女と同じ寮部屋で住む奴。朝目覚めたら、同じベッドに寝てるヒロインに驚き、怒る男の主人公。あれ、どうかと想うんだよね。ヒロインが、肌着で同じベッドに寝てるんだよ? なんで怒る必要あるのって何時も想う。肌着姿のワフゥやオニニ氏が俺のベッドに寝てたら、俺は襲う。多分、性欲が抑えきれないから。分かる? 此処で最初の話に戻る訳よ。俺はお前等を性欲の対象としてみている。言い換えるなら、お前等は良い女だからだ。美人で、可愛くて、そして綺麗だからな。良い女には、ちゃんと向き合うのが男の定めなのよ。だから


「ポショポチョ氏、ポショポチョ氏」


 良いから聞けって。

 俺はね、性欲のない男はオカマかEDだと想ってる。性欲ってのは大事なんだよ。女の可愛さを感じるのも、言ってしまえば性欲だ。愛は性欲なんだよ。想像してみて? お前等は下着姿、目の前には俺が居る。そこで俺が言う台詞を想像してみて? 半笑いで「ハッ……風邪ひきたいの? さっさと服着ろよ、見苦しい」っと言う俺と、「え? これ襲って良いってサインか何か? 良いの? マジで?」って、お前等に性欲剥き出しの俺よ。どっちの俺がお前等を可愛くて綺麗な美人だと感じてると想う? そりゃ、後者だよな。だって、性欲を露わにしているんだからよ。俺はな、お前等が良い女だから、下着を盗むし、風呂を覗く。お前等が良い女じゃなかったら、俺はクソして寝るよ。だからね。


「ポショポチョ氏、キモい。キモいよ」


 え?


「うむ。最高に気持ち悪いぞ。いや、言いたいことは分からないでもない。しかして、ソレって結局、性欲に負けるクズ男の理論じゃろ」

「ポショポチョ氏。そういうとこ。ホっント、そういうとこね。それが無かったらボクは満足だよ」


 ピッチャー返しを喰らった気分だった。

 俺は久々に言われた度直球な罵倒に言葉を失う。


「……あれじゃな。わっちも、おんしは嫌いな男じゃないが、ちと我が強い。おんしはおんしで、住む部屋を探してくれ」

「ポショポチョ氏、下着とか盗まないならボクは同棲しても良いと想ってるから。ホント、そこだけは治してね」


 二人はそれだけ言い残し、何の未練もない足取りで寮の中へと入っていった。あまりの迷い無さに、俺はただただ二人の背中を見送ることしか出来なかった。



 静寂が場を包む。

 

 いや、焚き火としていた俺の犬小屋が燃えていく音だけは、無情に響いていた。




 ポツリと、頬に冷たい何かが当たる。


 雨だ。

 俺はハッと気を取り戻し、ワフゥの犬小屋から毛布を引っ張り出すと、中へ逃げ込む。


 ぽつりぽつりと降り注ぐ雨は一瞬で大雨と変わり、豪雨はワフゥの犬小屋を簡単に壊した。

 造りが甘いよ、ゴッコルさん……


 屋根がなくなり、雨の中、野晒しとなった俺はびしょぬれになった毛布に包まりながら、ぷるぷると震える。


 気分はさながら捨て犬だった。

 いや。捨て犬なのだろう。俺はワフゥとオニニ氏に捨てられた犬だ。


 くぅーん……

 俺の中の気高い犬の魂が、吠えた。




◆◆◆◆

 



・時刻:ポショポチョ氏の五回目の死亡から二日前(訂正)

・場所:サルでも入学できる魔術高等学園・第八男女共同学生寮前

・ポショポチョ犬小屋跡地





 ザーザーと降り注ぐ雨。


 降り止まぬ雨。


 俺はぷるぷると震え、凍死間近だった。寮からは美味しそうな食べ物の匂いと、賑やかな声が聞こえる。このまま寂しく凍死する捨て犬。



 そんな時だった。



「…………なにやってんだ、テメェ?」



 ふと、声をかけられる。

 顔を上げると、其所には狸耳を囃した赤髪の中性的な容姿をした亜人さんが居た。肩まで伸ばした赤髪は、一部ドレッドヘアになっていて、唇には二つのピアス。耳にもピアスしている。

 俺は一発で、狸の亜人さんが不良だと分かった。



 くぅーん……

 俺はぷるぷると震えながら気高き犬の鳴き声を上げる。


 

「………………」



 狸で不良な亜人さんは、すっと寮を見上げ、そしてポショポチョくんに視線を戻し、また寮を見る。

 数秒の沈黙のち。狸で不良な亜人さんは、自分に指していた傘を、俺の真上にそっと翳す。



 くぅーん……

 俺はぷるぷると震えながら亜人さんを見上げた。狸で不良な亜人さんは困惑した顔から一点、何かを決意した表情で、びしょぬれの俺を軽々と抱き上げて、口を開く。 



「………此処は寒いだろ。オレの部屋に来るか?」



 くぅーん……

 俺は捨て犬の鳴き声を上げて、狸で不良の亜人さんをペロペロした。



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テンプレな魔術学園ファンタジー(神様基準値) ニコウミ・ウミタ @nikoumi

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