第十三話 不死鳥と右腕

「あ、あのぉ…まだ着かないんですかね…?」


歩き始めて5時間。


俺たちはあの後、亜人たちの住処を出て不死鳥の谷に来ていた。


あの後知ったのだが、どうやら不死鳥の谷の奥にある祭壇に行かないと俺の腕は治らないらしい。


そして、片腕を失っている分、体力の消耗が激しい。


歩いてるだけで精一杯だ。


当分は戦闘ができなさそうだ。


「おいユウキ、もう少し早く歩けないのか? 置いてくぞ」


だから片腕失ってるって言ってんだろうが。


お前もその骨折ったろうか。


ミルちゃんもきっと疲れてるんだろうな~。


そう思い、俺は後ろにいるミルの様子を確認する。


なんと驚くことにまったく疲れている様子がない。


しかも女子なのに。


これ片腕失ってる関係無しに俺が普通に体力無いだけ?


「ミルちゃんはこんなに歩いてる疲れないの?」


俺はミルに聞いてみる。


「はい。 小さい頃からガイコスさんに特訓させられていたのでこのくらい平気です!」


小さい頃からって…。


この骨野郎、心が鬼だな。


「あ、あのぉ。 ちょっと休みません?」


俺はガイコスに休みを提案する。


「何を言ってるんだ。 王都が攻めてくるまであと4日しかないんだぞ。 ダラダラしてられるか」


こいつ俺を使う事しか考えてねぇ…。


俺道具じゃないよ?


一応生き物だよ?


そこの所分かってね?


そんな事を言ってると。


「グルゥゥゥゥ…」


突然小型の獣が俺たちの前に現れた。


「小型の雑魚モンスターか…。 ミル、支援魔法を頼む」


ガイコスがは一番前に出てモンスターと戦う姿勢をとる。


「分かりました。 キティウス!」


そう言うと、突然ミルが持っていた杖が緑色に光始め、同時にガイコスの全身の周りが緑色の光に包まれる。


すると、ガイコスはとんでもない速さでモンスターの後ろに回り込み、火炎系の魔法を放つ。


ガイコスが放った魔法はモンスターに命中し、大ダメージを与える。


「ガルァァァァァァァ!!」


モンスターは叫び声を上げ、そのまま倒れこみ、ガイコスたちの経験値となる。


倒したモンスターが何かを落とす。


ガイコスがアイテムを拾う。


「なんだ、雑魚アイテムか。 ユウキ、これやるよ」


そういうと、ガイコスは俺に拾ったアイテムを渡す。


【アイテム:死神の魂を入手しました】


なんだこのアイテム?


俺はこのアイテムの説明を見る。


【このアイテムは低確率で相手を即死させます。 確率は3%です】


雑魚アイテムじゃん…。


なんでこんなもん渡すんだよ。


もっと良いのくれよこの骨野郎。


しかし、先程のガイコスの異常な速さは何だったのだろう?


「あの、なんでさっき急に早くなったんですか?」


俺は速さに疑問を持ち、ミルに何をしたのか聞いてみる。


「あ、あれはですね。 私がガイコスさんに一定時間スピードをものすごく上げる魔法をかけたんです」


なるほど。


だからガイコスはあんなに速く動けたのか。


ん?


待てよ。


その魔法使えばこんなに歩かなくて良くね?


「ガイコスさん、さっきの魔法使えば早く祭壇にたどり着けると思うんですけど…」


俺はガイコスに考えを提案して言ってみる。


「お前は馬鹿か。 魔法を使う時はMPを消費するんだぞ。 そんなことしたらMPの無駄だろ。 もっと頭使え」


こいつ一発ぶん殴ってやりたい。


まぁこのイライラもあともう少しだ。


あともう少し我慢したら俺の右腕も治る。


そして俺は王都を無事倒して罪滅ぼしをして、こんな所出てやるのだ。


いや待てよ…。


そうなるとせっかく会えたミルちゃんとおさらばしてしまうな…。


そんなことを思っていると。


「おい。 戦闘は終わったんだ。 ボーっとしてないでさっさと行くぞ」


ガイコスは考え事をしてた俺を急かす。


はぁ…。


いつになったらこの仕打ちは終わるんだか。


そう思いながら俺とミルはガイコスについて行った。




3時間後。




俺たちは数々の先頭を乗り越え、祭壇に到着した。


「はぁ…はぁ…。ようやく着いたぁ…」


俺は息切れしながら少しだけ座り込む。


「おい。 お前の腕を治しに来たんだろ。 座ってなんかないでさっさと治すぞ」


ちょっとは休ませてくれよマジで。


そう思いながら俺は祭壇の前に立つ。


ガイコスはどこからか俺の右腕を取り出し、祭壇に置こうとする。


すると、突然謎の物体が俺たちの前を横切る。


そして、気づいた時にはガイコスが持っていた俺の右腕が無くなっていた。


「なっ!? しまった!!」


ガイコスが少し慌てる。


「あ、あれ見てください!」


突然、ミルが上に向かって指を差す。


ミルが指を差した先にいたのは、赤くて、全身が炎に包まれていて、俺の右腕を口にくわえている大鳥だった。


「あ、あれは…。 伝説の不死鳥―フェニックスです!!」

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