第十二話 ストーカー系スキル
「あ、あの。 よろしくお願いします」
ミルという名の女性が俺に挨拶をする。
「あ、はい! 是非是非!」
俺は表情を笑顔に変え、握手しようと右手を差し出そうとする。
あ、そうだ。
俺右腕無いんだった。
俺は慌てて差し出すのを止め、苦笑いしながら左腕を差し出す。
「ちょっと、見せて下さい」
ミルは俺の握手の同意を無視して、出血した部分を見せてほしいと願う。
「あ、はい」
俺はミルに出血した部分を見せる。
「ライフヒール…」
ミルは俺の出血した部分に両手をかざし、そう唱えた。
すると、ミルの両手は白く光り、俺に魔法的なものをかける。
俺の体は徐々に癒されていき、出血した部分や、骨折した部分、ボロボロになった皮膚などが少しだけ治っていく。
「あ、ありがとう!」
俺はミルに礼をする。
「いえいえ、力になれて嬉しいです」
ミルが笑顔で返事する。
めっちゃいい子やな~。
初対面なのにこんなに優しいなんて。
ん?
ちょっと待てよ。
なんでこの子初対面なのに俺の怪我の事知ってんだ?
「お前今なんで怪我の事知ってんだって思ってるだろ」
ガイコスが突然勇樹に言う。
なんでわかるねん。
「私は『心理調査』というスキルを持っていてな…」
あ~はいはい。
名前からして相手の心を読めるスキルとかでしょ。
「相手が思っている事が分かっるスキルなんだ」
はいビンゴ。
お前マジでストーカー系スキルしか持ってねぇのかよ。
もっと回復系とか戦闘系は無いのか。
「お前それ以上言うと左腕折るぞ」
なんだこいつ。
人の心読めるからって調子に乗りやがって。
「あ、あの。 ガイコスさん、私…」
ミルが不安そうに俺達の会話に入ってくる。
「あぁ、すまない」
ガイコスはミルに謝罪の言葉を返すと、俺にミルがどういう人物なのか紹介してきた。
「彼女は人間のミルだ。 回復系の魔法が得意でな。 不死鳥の谷に行く際に同行してもらうのだ」
おぉ。
こんな美人のお姉さんと一緒に冒険するのか。
なんか急にワクワクしてきたわ。
でもここって亜人とガイコスしかいないはずだろ?
なんで人間の美人なお姉さんがいるんだ?
「それはな…ミルは一度人間に捨てられてるんだよ」
おぉ。
急に話が重たくなってきた。
「ミルは赤ん坊のころに人間に海に流され捨てられたんだ。 それを私が救い、今はここで暮らしている」
なるほど。
「えっと…。 その、ガイコスさんは私の恩人で、ガイコスさんに手伝ってほしいと言われたので今回ユウキさんについて行くことになりました。 えっと…改めてよろしくお願いします!」
ミルが改めて俺に挨拶する。
「うん。 これからよろしく!」
俺は笑顔でミルに返事をする。
すると、ミルは顔をぱぁーっと明るくし、俺に笑顔を送る。
あ~可愛いわ。
最初からこういう美少女に会いたかったな~。
それにしてもこのストーカーガイコツはよ~。
全然ダメだな。
「おい。 お前マジで折るぞ」
「すいませんでした」
きっとさっきの『心理調査』とか言うスキルで思ってることがバレたんだろう。
最悪だわ。
俺ずっとこんな奴に心を覗かれるのか。
気味が悪いわ。
「じゃあ早速不死鳥の谷に向かうぞ」
早いな。
もう少し休ませてくれよ。
こっちは腕がもげてんだぞ?
3日ぐらい休ませろよ。
「何を言ってるんだ。 王都の兵士が来るまであと4日しかないんだぞ。 のんびりしてられるか」
こいつ俺を使う事しか考えてねぇ。
まぁ仕方ない、行くか。
さっさと腕を治してミルちゃんと一緒にパラダイスしよ。
俺は出かける準備をし、ガイコスに準備は出来たと伝える。
「さぁ行こうか。 いざ不死鳥の谷へ!」
なんでこいつ地味に乗り気なんだよ。
「はい!」
ミルが返事をする。
しょうがない。
行くか。
本当は楽をして腕治したいけど行くか。
そう言うと俺達は亜人の住処を出て、北にある不死鳥の谷に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます